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BUMP OF CHICKENという"カルチャー"

おはようございます、こんにちは、こんばんは。おやすみなさい。
現役音大生でしがない音楽ライターをしております、とくと申します。

今回は今年結成28年目に突入したロックバンド・BUMP OF CHICKENの楽曲についてフォーカスします。古い順に基本1アルバムあたり1曲をピックアップしながら、"バンプ"の魅力について私が伝えられるだけの最大限の語彙を駆使しながら迫っていきたいと思います。

早速本題に入ろうとする前に、BUMP OF CHICKENの簡単な経歴を紹介します。

BUMP OF CHICKENは1994年結成の四人組ロックバンド。
藤原基央(Vo. , Gt. 以下藤くん)、増川弘明(Gt. 以下ひろ君)、直井由文(Ba. 以下チャマ)、升秀夫(Dr. 以下ひで君)の四名で編成。メンバー全員が幼稚園からの幼馴染という関係で、今も変わらず仲良し四人組。
代表曲に天体観測(2001)、ロストマン(2003)、魔法の手紙 ~君から君へ~(2010)、なないろ(2021)などがあります。


BUMPの原点 −ガラスのブルース−

さあ一曲目。1999年リリースの1stアルバム「FLAME VEIN」より「ガラスのブルース」です。

この曲はVo.の藤くんが初めて日本語詞で書いた楽曲で、今も変わらずファンに愛されている楽曲でもあります。

藤くんにとってもこの曲はとても大事な曲だそうで、

一番最初に書いた曲が"ガラスのブルース"で、本当に僕はラッキーだったと思います。

雑誌「bridge」2013年 06月号より

と、やはり日本語で紡がれるバンプの世界観の、いわば原点にして頂点のような曲であるように思えます。


緻密な表現が随所に詰め込まれた一曲  −K−

続いて、2ndアルバム「THE LIVING DEAD」から選曲したのは「K」。
楽器一つとっても、歌詞をとっても、ひとつひとつに緻密な表現が込められています。
歌詞で広がるのは、貧しい若者の絵描きと色を理由に嫌われ者になってしまった黒猫が織りなす物語。それらを楽器が音で聴くストーリーかのように仕立て上げ、藤くんの歌声が力強く響き渡ります。

この曲にロックバンド・緑黄色社会のGt.小林壱誓さんはこんな表現をしていました。

「これはバンドでしか出来ない上に楽曲にストーリーを乗せることができるんだ(と思った)。」
「そこにその言葉があるから、そういうフレーズが鳴ってるみたいな、本当に物語を豊かにするための飾りになっているという構成がすごい美しい」

THE FIRST TIMES/緑黄色社会を深堀り-SIDE B
(https://youtu.be/Bz_q-025G4k)より


メジャー1stアルバムの先陣を切る一曲  −Stage of the ground−

2002年、ついにTOY'S FACTORYからメジャーデビューを果たします。
その記念すべきデビューアルバムとなったのが「jupiter」。その一曲目にこの曲はあります。

昨今ではサブスクの影響などによりすぐにメロディーラインが出てくる曲を若者が好むため、あまり良しと思われていない(私は大好きなのですが…)長尺のイントロから曲がスタートします。

ギターのアルペジオがとても印象的でかつ力強い全体のバンドサウンド。
ベースにジャズ要素を取り入れた部分やジャングルビートを感じるドラムなど、今でもライブで多く演奏されるこの曲がたくさんのファンに愛されている理由が曲の至る所に秘められています。

何年先にも残っていて欲しい名盤「ユグドラシル」

「jupiter」リリースから2年、誰もが認める名盤「ユグドラシル」が生まれます。
私の中でもこのアルバムを超えるものは後にも先にもは無い、とずっと感じています。
どこを切り取っても名曲、名曲、名曲。
その中でも是非お聴きいただきたい曲を2曲選びました。

まず1曲目は「embrace」。
シングルとしてリリースされたことが無いアルバム曲です。
"embrace"は日本語で"抱擁、抱きしめる"という意味。
歌詞からメロディーから伝わるように、とても温かみのある曲になっています。

腕の中へおいで 抱えた孤独のその輪郭を撫でてやるよ
明かりのない部屋で 言葉もくたびれて
確かなものは温もりだけ

embrace/BUMP OF CHICKEN 歌詞より

大切なものを温かみから感じる、なんとも素敵な歌詞だと思います。


さて、もう1曲は「ロストマン」です。

歌詞を完成させるまでに、実に9ヶ月を要した大作。
タイトルも「ロストマン」に決定するまでに30曲ものタイトル案がボツとなり、如何にこの曲を制作することに苦悩を重ねたのかが分かります。

この曲はあの名音楽家、桜井和寿さん(Mr.Children,ウカスカジー,Bank Band,Reborn-Art Session)も

「(BUMP OF CHICKENは)人生で最も好きになったバンド」
「2000年代の自らを最も象徴する曲はロストマン」

MUSICA 2009年12月号より

と話しています。
ちなみに、桜井さん率いるBank BandによるロストマンカバーはYouTubeでも聴くことができます。
もしよければ検索してみてください。

藤くんだからこそ書けた歌詞 –supernova−

さて、アルバムもちょうど真ん中、5枚目に入ります。
「カルマ」や「花の名」、「涙のふるさと」など、さまざまな名曲が生まれたアルバム「orbital period」から紹介するのは、「supernova」です。

曲調としてはゴスペルを意識したバラードソング。
そもそも"supernova"って何なのかというと、日本語では"超新星爆発"という意味になります。超新星爆発とは、大きな恒星などが最期を迎えるにあたって大規模な爆発を起こすことです。
地球からこの超新星爆発を見ようとすると距離としては何万光年と離れているので、私たちが爆発を見る頃にはもうとっくの遠くに消えてしまっている、という悲しい現象です。

さて、歌詞を見てみましょう。

君の存在だって何度も確かめはするけど
本当の大事さは居なくなってから知るんだ

supernova/BUMP OF CHICKEN 歌詞より

君の存在だっていつでも思い出せるけど
本当に欲しいのは思い出じゃない  今なんだ
君を忘れた後で思い出すんだ 君との歴史を持っていた事
君を失くした後で見つけ出すんだ 君との出会いがあった事

supernova/BUMP OF CHICKEN 歌詞より

超新星爆発という悲しい現象を基に、大切な方へのメッセージソングを書いた藤くんはきっと優しい方なんだろうなと思います。
私自身も「本当に欲しいのは思い出じゃない 今なんだ」という歌詞には何度も救われてきた気がします。

この曲こそ大切な人に届いて欲しいと思うし、大切な人をずっと大切と思えるままでいたい、あって欲しいとも思います。
今伝えないと、伝えられなくなった時には遅いですからね。


刻まれた文字だけでは全ては伝わらない  − R.I.P. –

自身6作目となったアルバム「COSMONAUT」では、名声を得た後も地道な鍛錬を積み、確実にメンバーの技術力が上がっていると評価されました。

その中で先行シングルとしてリリースされたのが「R.I.P.」です。
歌詞を見てみると、藤くんが幼少期に遊んだ思い出などが浮かびます。

伝えたいことは「刻まれた文字だけでは全ては伝わらない」ということ。
R.I.P.と墓石に刻まれた文字だけを見てもその人の生涯を理解することはできないし、人柄すらわからない。
そんなことを感じた藤くんは「自分の記憶も言葉だけでは相手に伝え切ることができない」と考え、今まで共有することができなかった思い出を"死"に例えた、というストーリーがあります。

余談になりますが、
これを小学校低学年の頃に聴いた私は衝撃を受けていました。
難しいことなんて一つもわかりません。それでも、

自転車置き場 会いに通った 尻尾の生えた内緒の友達

R.I.P./BUMP OF CHICKEN 歌詞より

この歌詞が衝撃的すぎて、今でも頭から離れません。
当時の私からすると「友達」というのは人間に対して使うという認識でおり「尻尾が生えた友達」に「人間では無い、人間に近い何か奇妙な生き物」を想像して、異常な恐怖を感じていました。
このことは紆余曲折を経て大学生になった今でも鮮明に覚えています。
表現って面白いですよね。我ながら人間の感性にも面白みを感じました。


藤原基央からのび太へ  ~映画ドラえもん主題歌~  −友達の唄−

4年ぶりの新たなアルバム「RAY」では、タイトルトラックの「ray」や「虹を待つ人」などエレクトリックな音楽も次第に増えてきて、まさに"新しいバンプ"を感じさせる円盤となりました。

しかし、ここでは敢えて紹介せず、「友達の唄」という曲をご紹介します。

2011年、「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」という映画が公開されました。
「ドラえもん新シリーズ」の第1弾として制作されたこの映画は、1986年に公開された原作をリメイクしたものとして大人気を博しました。

その映画の主題歌としてバンプが書き下ろしたのがこの曲。
藤くんが幼少期から感じていた思いをドラえもんとの思い出に重ね合わせながら楽曲制作をしたと言います。

「あの頃のダメだった俺、うまくいかない自分とか。
そういう時も、のび太はずっと近くにいて友達でいてくれたっていう気が勝手にしてて。なんかこう、のび太への気持ちが炸裂していって」

TOKYO FM系「SCHOOL OF LOCK」内「BUMP LOCKS!」 2011/2/21 放送分より

ドラえもんに支えられ、のび太の心情に同情し、のび太が寄り添ってくれていたという藤くんが書く歌詞は、とてもありふれた言葉が並んでいて分かりやすいものばかりです。
誰にでも届くように容易く理解できる言葉を綴ったことに流石だなと感じます。


一緒に居たという絶対的な証拠  −You were here–

2023年5月28日現在で発表されているアルバムは残り2枚となりました。
こちらは「Butterflies」というアルバムに収録された「You were here」という曲です。

「あなたはここに居た」という意味のこの曲は、大切な人(藤くんはおそらくファンの人へ向けて)へのメッセージソングとして書いたと考えられます。

信じられないくらいにすぐ過ぎた
魔法の時間はすぐ過ぎた
頭の中は片付かないままで
枕まで帰る

You were here/BUMP OF CHICKEN 歌詞より

きっと大切な人に会えたことに対する余韻というのは誰しもあるもので、
それは藤くんにとってのファンであり、もしかすると、いちファンにとってのアーティストの存在なのかもしれないし、
今日もどこかで愛し合っている恋人同士なのかもしれないし、
片思いをしている人なのかもしれないものです。

と、そんな想像をするだけできっと一人一人にそんな存在がいるのかもしれないなとわくわくしたり、自分はどう思われているのか不安になって寂しくなったり。

また会いたい 会いたいよ
もう会いたい 会いたいよ
君がいるのに 居ないよ
君の昨日と明日に 僕も居たい
もう消えない 消えないよ
そこから伸びた時間の上を歩くよ
全て超えて会いに行くよ

You were here/BUMP OF CHICKEN 歌詞より

「会いたい」と思える人が居るって、すごく幸せなことだと私は思います。
「まだ」「もう」この副詞たちも良い仕事を果たしています。
ずっと一緒に居たけど、まだ居たい。
さっきまで一緒に居たのに、もう会いたい。
私たちが今を生きている中で、心が揺さぶられるような瞬間をもっと大事にしないといけないと痛感させられます。

「supernova」でご紹介した通り、終わってからではもう遅くて、後悔しても時間は元に戻らないというのが儚くも現実な訳です。

だからこそ大切にしたい人には想いを伝えるべきだと思うし、
できる限り後悔しない人生にしたいでしょう、とそう教えてくれているような一曲でした。

私もそう在りたい、と改めて感じました。


生活感溢れるミディアムナンバー  −話がしたいよ–

いよいよ最後のアルバムとなりました。
「aurora ark」に収録されている曲から私が選んだのは「話がしたいよ」です。

この曲は佐藤健主演・高橋一生助演の映画「億男」の主題歌として制作されました。
映画自体は演技力がものすごく高い作品で、特に高橋一生さん演じる吃音の男性は本当に吃音の方かと思うくらい(実は高校時代、部活の先輩に吃音の方がいらっしゃったのですが、後輩の私を可愛がってくださり毎日会話をしていたので、映画を見てこれは本当に演技なのかと疑ってしまう位のものだったことを鮮明に覚えています)でした。

この曲を作る当時の藤くんは多忙に多忙を重ねた過密スケジュールに疲弊し、ツアー終了後束の間の休息もなくこの曲を作ることになります。

街が立てる生活の音に一人にされた
ガムと二人になろう 君の苦手だった味

話がしたいよ/BUMP OF CHICKEN 歌詞より

忙しすぎる日々に対し、一人になる時間を探していたことがこの歌詞からも読み取れます。

また、実はこの曲にはデモテープの音源がそのまま正式な音源としても採用されている珍しい曲です。(ボーカル全編・2番以降ギターリフ、他には「イノセント」のInter・シンセサイザーや「飴玉の唄」のInter・ギターリフなど)
藤くんの心身ともに疲弊した状況がそのまま曲に反映されていると過去の雑誌でも明らかにされています。
是非そういった部分にも注目しながら聴いてみてください。


終わりに

さあ、ここまで10曲紹介させていただきました。
BUMP OF CHICKENがここまで紡いできた歴史を、「アルバム」といういわばひとつの集大成ごとに掘り下げてみました。

メッセージ性のある歌詞と現実的な表現が所狭しと詰まっている一曲一曲をみなさんも是非楽しんでみてください。

もっと知りたい!という方はいつでも話してくださると嬉しいです。

ではまた次回もお会いしましょう。
しがない音楽ライター・とくがお送りしました。
失礼します。

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