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ナレッジワーク専門役員の江良さん
ナレッジワークの人事部門で共に働く江良(えら)さんが今月、タレントマネジメント 専門役員 Principalに就任した。
江良さんは、営業・事業における実績が豊富な人だ。
■江良 亮人 プロフィール
大学卒業後、丸井グループに入社。2007年サイバーエージェントに入社し、営業マネージャーとして子会社の立ち上げに参画。2011年スタートアップの創業に参画し、事業責任者、営業責任者、執行役員を務める。2020年以降、フォースタートアップスにて事業部門の執行役員、HRBrainにて執行役員兼人事本部長を経て、2023年、株式会社ナレッジワーク入社。
ナレッジワークは執行役員と専門役員という肩書を設けている。大雑把にいえば、執行役員が組織マネジメント、専門役員は技術エキスパートとしての期待を受ける。ナレッジワークのHRとしては、僕が執行役員で、江良さんが専門役員を担う。
ただ、同じHRといっても江良さんの役割は、一般的に認識される人事役員と比較すると、あまりにも異質だ。そして、その異質であること、異能を持つことが、ここまでのナレッジワークの成長を間違いなく支えてくれている。
スタートアップの成長にはこういう存在が必要なのかといつも江良さんが気づかせてくれる。江良さんの存在は、ナレッジワークの組織づくりにおいてとても戦略的だ。
江良さんという存在が、今後のスタートアップ成長の一つのモデルケースになりうると考えている。ぜひご紹介したい。
■ナレッジワークにおける専門役員とは何か
ナレッジワークは以下のようにスタイル(人材行動)とポリシー(組織様式)を定めている。
■スタイル
Act for people(人のために)
Be true(誠実に)
Craftsmanship(こだわりをもって)
■ポリシー
Achieve the mission(ミッションを実現する)
Build your company(会社は皆で作る作品である)
Collective Genius(集合天才を生み出す)
ナレッジワークでは、CraftsmanshipやCollective Geniusの体現者であり象徴として、異能才能を持つ専門家や専門役員が重宝され、活躍していることが特徴的だ。エキスパートとしての個人成果に特化するのではなく、戦略と実行が深くつながっていることが共通認識されており、その専門性をもって経営や戦略にも貢献することも強く期待されている。
大雑把にまとめると、執行役員が組織を通じて、専門役員が技術を通じて経営に寄与することが期待されている。
<執行役員 VP>
■期待役割
組織にレバレッジをかけて経営に貢献する
■期待能力
組織貢献・・・組織指導を通じて組織成長を実現する
情報活用・・・組織結節を通じて経営情報を連携する
成果創出・・・組織統率を通じて戦略方針を指揮する
<専門役員 Principal>
■期待役割
技術にレバレッジをかけて経営に貢献する
■期待能力
組織貢献・・・技術体現を通じて技術経営を実現する
情報活用・・・技術学習を通じて経営示唆を提供する
成果創出・・・技術活用を通じて事業成果を創出する
ナレッジワークではエンタープライズセールスのきりさん、フロントエンドエンジニアのyoshikoが専門役員で、CTOのmayahさんも同様の役割を担っている。ナレッジワークの競争力の源泉のど真ん中に、彼らがいる。
そして、江良さんは「タレントマネジメント」というナレッジワークの競争力の根幹を専門役員として担っていく。
■ナレッジワークにおけるタレントマネジメントとは何か
入社時点でCEOの麻野さんから江良さんには「一人でエゴンゼンダーをやってください」とオーダーされていた。エゴンゼンダーとは、経営人材の採用や育成などで著名なグローバルトップクラスのエグゼクティブサーチファームだ。今思い返しても、極めて的確なミッション定義に思う。
そのオーダーに対して江良さんが一個一個打ち返してきた軌跡に対して、結果として「タレントマネジメント」という職種名を後付けで決めていった。一般的にいう人材管理機構としてのタレントマネジメントではなく、「タレント人材を採用・支援・育成していく」という仕事だ。
役割1.人材を採用で口説く
ナレッジワークは組織に業界最高レベルの「基準」をもたらしてくれるプロフェッショナル達を一生懸命集めようとしている。そして彼らが看板倒れすることなく、実を伴って素晴らしい活躍をしている。当人達の覚悟と努力の賜物だが、その裏側には必ず江良さんがいる。あの人も、この人も、江良さんが伴走してきた。
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江良さんの採用活動は狂気的だ。転職意欲があろうがなかろうが関係なく、その人がナレッジワークに来るべきと思ったら全力を尽くす。会食に行って「転職可能性は0%です」と言われても、「俺は100%ナレッジワークに来て欲しいんですよ」と言って、また食事に誘う。入社した幹部がみんな笑顔で「江良さんがしつこかったです」と言って入社してくれる。
江良さんが一緒に働きたいと思った方には、毎月・毎週・毎日でも時間をもらう。実際に、要職で入社するメンバーの多くは、意思決定に至るまで毎日のように江良さんが会う。そして、社内で起きているやり取りや問題をすべてオープンにありのままにお伝えする。ときにはその候補者と日次の定例ミーティング時間を設けてしまうほどだ。
現職で経営・要職を担って多忙を極める候補者から毎日時間をもらうことは、一般的な採用人事には出来ない。
これはコミットメントの問題だけではない。トップ人材と持続的な関係を構築し、時間をもらい続けることが、普通はできない。だから、「採用は経営の仕事」と言われるのだと思う。それを江良さんはなんの肩書もなく「人事担当の江良といいます」の自己紹介から実現してしまう。
役割2.人材の未来を描く
江良さんはよく「キャリアプロデュース」という言葉を口にする。
一定の職位や役割を持つようになると高い仕事の密度が要求され、当然自律的な振る舞いが求められる。「社長、私のキャリアはどう描いてくれるんですか」と文句を言う幹部は滅多にいないだろう。
だが、どれだけ優秀な人材でも、他人の問題を解くのは簡単でも自分の問題を考えるのは意外と難しい。人の脳は、自分自身に立てた問いを自分で解くことにはまだ最適化されていない。だから、実は自身のキャリアに苦しむエグゼクティブやシニアは意外と多い。
江良さん自身も、大きな職責を担った先のキャリアの描き方に悩み、不安を抱いてきた一人だ。だからこそ、ときには問いを立てて伴走し、ときにはあるべきキャリアを強く提案してくれる。
僕自身も救われている一人だ。ある日組織編成の議論をしていたときに江良さんが「とくちゃんはCEOにだってなれる器だと思うんだよね」と言ってくれた。豚もおだてりゃ木に登ろうとするもので、少しその気になっていたりする。
役割3.人材の関係を繋ぐ
スタートアップの成長は不自然だ。自然でなりゆきな成長をしていたら偉大な成長は遂げられず、ゆるやかな死を迎える。常に成長の過程で組織に軋轢や歪みが生まれ、それは指数関数的に膨らんでいく。
江良さんは、なぜか、その歪みを見つけてくる。そして人と人の間の問題に対して、当人達以上に真剣に、工数を度外視した時間を費やす。
何度も「時間を掛けすぎるのはやめてください」と伝えようとして、その言葉を飲み込んできた。僕以上に江良さんには未来が見えていると信じている。江良さんはスタートアップの組織が傷んでいく姿や、その先の事業の停滞を身を持って経験してきている。
もし江良さんの関わり方に心当たりがある社内のメンバーには是非知ってほしい。江良さんがそこに時間を使っているとき、あなた以上に真剣にあなたの人生やキャリアと向き合っていること、そして、そこで解消すべき問題について、あなたが思っている以上に経営に対して大きなインパクトがあるという覚悟で臨んでいること。
ジェンガを積み上げていくかのようにアンバランスなスタートアップの組織成長において、江良さんが神経を使ってその積み木の力学を調整しながら組織が成長していっている。
役割4.人材の孤独を支える
リーダーが孤独を感じやすいことは間違いない。周囲には自由闊達になんでも言って欲しいと鷹揚な姿勢を示しつつも、自身は決して不安や怯えは見せられない。喉まで出掛かった愚痴や悪態や弱音を、喉の奥へと手で押し込んででも飲み込む。深く信頼していた人が、一夜置けば手のひらを返して離れていく不安に苛まれる。あらゆるステークホルダーに対して覚悟をもって接していてもその覚悟のすべてを伝える術がない。きっとそんな孤独があるのではないかと想像する。
CEOの麻野さんは、驚くほど弱音を吐かない人だ。心配して声を掛けても「ありがとう」とは言うけれど、ちょっと鬱陶しそうにするので(苦笑)、人事責任者の身としてはそっとしておくようにしている。それでも江良さんはいつも麻野さんのことを気にしている。一人の仲間として「麻野さんも大変だよなぁ。。大丈夫かな。」と気にかけている。
江良さんは、経営者や幹部のメンタル体力が重要な経営資源であることを理解しているのだと思う。幸い、ナレッジワークの幹部たちは結構屈強なのでガタガタしていることをあまり見たことはないが、気になることがあれば江良さんが声を掛け、幹部チームを支えてくれている。
■江良さんはスタートアップ経営における宝である
江良さんは不器用なところもある。
ITツールが苦手だ。Slackではあまりコミュニケーションが取れない。というか、Slackを送ると電話で返ってくるタイプだ。また、僕との1on1を、僕を入れずにスケジュール設定していたことも一度や二度ではない。「僕との1on1に僕を入れてください」とオーダーすると、今度はなぜか江良さんの作業ブロック時間に僕をスケジューリングしてくる。残酷だが、AIには江良さんが10人束になっても敵わない時代になってしまったかもしれない。
ただ、論理のレンズを通しては見えない世界が江良さんには見えている。これがとても尊い。
組織戦略を議論すると、江良さんは必ずバイネームで人の名前を口にする。それこそが江良さんだ。江良さんの頭の中では、経営だ戦略だと言葉を着飾っても、絶対にその先に人の顔が見えている。そして、実はそれが経営と同じ景色だからこそ、経営者や幹部から信頼される。
江良さんの根底には、怒りがあり、信念がある。スタートアップ業界に長くいるがゆえに様々見てきた、組織を疎かにしたがゆえの人の痛み、経営の停滞、それらに対するもどかしさと憤りがある。だから、真剣だ。与えられた仕事ではなく、自ら生み出した仕事をしている。
江良さんを専門役員とするにあたって「江良さんは何の仕事の専門役員なのか」という議論が白熱した。HRでもなく、HRBPでもなく、組織開発でもなく。最終的には対外的にはタレントマネジメントと銘打ったが、これからも変わらず「江良さん」という仕事をするのだと思う。
いつか、一兆ドルコーチのビル・キャンベルのような存在になってほしいと思う。僕から江良さんには「10年後に、経営を支える幹部たち全員に『あのときの江良さんとの出会いがあって今の自分がある』って言わせましょう」と伝えた。江良さんはちょっと嬉しそうに「それは、いいかもね」と微笑んでいた。
江良さん、これからも長い旅路を一緒によろしくお願いします。
おわり。