28歳、ボルトと過ごす日々 2
正直なところ、何年も前のことだから詳しい流れは覚えていない。
ただ、コルセットの型取りをする日の、生暖かい石灰やサランラップをお腹回りに巻かれる際の何とも言えないこしょばさは、今でもハッキリと覚えている。
「力抜いてくださいねぇ~。」という装具技師さんの言葉を遠くに聞きながら、こしょばさを我慢するのに必死だったのだ。結果、腹筋に力が入り、少し細身の型が採られたみたいだが、仕方ない、、。
数週間経ち、受け取りに行ったコルセットとご対面。
オペラ座の怪人のマスクみたいな穴があちらこちらにあいていて、くびれ部分には詰め物、胸元は金属製のストッパー。カチカチと、外側から押してキツさを調節するのだとか。
初めは、詰め物が身体のラインに馴染むまで擦れや圧迫感が続いた。ただ、コルセットをつけていると、別人になったように背中がシャキッ!とするのが最高だった。
今で言うアイアンスーツかな?
このコルセットとは。中高時代を共に過ごすことになる。制服の採寸時もボルトを装着しての採寸。
体育の時間やちょっとした運動会とかの着替えの際は、目立たないよう机の下に隠すように置いていた。暑い夏でもコルセットはできるだけ装着しなければならず、夏場はあせもや擦れ感に悩まされ、冬場はネイビーの制服やセーターの肩甲骨部分がすぐに高級感あふれる光沢を放つようになっていた。
好奇心丸出しの同級生からジロジロ見られることもあったが、みんな優しい人で、馬鹿にしてくる子が皆無だったのが救いだった。
家でも確か、入浴時を除き、寝る時も食べる時も付けていたように記憶している。
ほんと、生活の一部。青春時代の6年半ほどを共に過ごした、背骨を支えてくれる存在。
ただ、デメリットも無きにしもあらずで。今だからこそ言えることがある。それはいったい何か。
次回にぜひ一度。