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その「投資」、ちょっと待った!
「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられてから20年ほどが経ちました。
NISA非課税枠の拡大や金融教育の義務化など、国民の投資を促す政策が進められています。
私はこれに安易に飛びつくのは危険であると考えます。
マネーを通じた互恵関係から疎外されていく可能性が高いからです。
金融庁が「老後30年間で約2,000万年が不足する」と報告した通り、個人の資産形成が貯金だけでは難しくなったことが背景です。
そもそも、なぜかつては貯蓄だけで十分だったのでしょうか?
以下のように国内でのマネーの循環が間接金融で十分に賄われていたからです。
①国民が銀行口座に貯金をする
②銀行が企業に融資をする
③企業が借入れた資金を元手に利益をあげる
④企業からの給与・ボーナス、預金利息が国民に支給される
⑤①に戻る、以下無限ループ
バブル以前の日本では、私たちは貯蓄を通して日本という共同体内でマネーを拡大再生産する仕組みに自然と組み入れられていたのです。
投資を始めた目的は、老後資金(=自身や日本の将来)への不安が最多となっています。次点で貯蓄に対する利回りの高さです。(三菱UFJ銀行調べ)
思うに、出来るだけ損をしたくない、リスクを取らず得したい、自分だけでも助かりたいといった心理が潜んでいるのではないでしょうか?
「経済」は「経世済民」の略語であり、economyの語源はオイコノミア(家政)であるように、マネーは社会の中の互恵関係のためのツールです。(→過去記事)
自分の得だけを考えるテイカー的な発想では、自分の首を締めてしまいます。
例えば手っ取り早く儲けたいと「S&P500が正解」「オルカンが正解」といったインフルエンサーの情報を鵜呑みにした結果、資金を国外に流出させ、自分たちの身の回りで流通するマネーの総量が減ってしまうといったことが起こるのです。
じゃあ、どうすればいいのかって?
近しい人間関係や地域のお店にお金と時間を使いましょう。
日本や世界の経済状況を変えることはできませんが、自分の手の届く範囲の共同体でマネーとエネルギーを循環させるのです。
長い目であなたを助けてくれる最高の「投資」となるはずです。