初日の出に、願う2

~幼馴染みのボクらの話 シリーズ 外伝~

「似合うじゃん」
待ち合わせ場所についての第一声。
いつもの口調で、でもちょっと照れたように嬉しそうに口元を上げ、そう褒められて都はすごく嬉しかった。
神社に着くとまず目に付いたのは、溢れかえりそうな人の波。
それを見ただけで疲れが出そうだ。
「っし!! 行くか!!」
同じ事を思ったのか、幸弥は頬を自ら叩き、これからの戦闘に備えて気合を入れる。
そんな幸弥を横目で見て、心配そうに都が言った。
「ねぇ。大丈夫なの? 人込み大変だよ?ただでさえ、幸弥。ライブでクタクタなのに……。それに。次の仕事までに間に合うかどうかも……」
「心配すんなよ。体力には自信がある。なんつったて、こんなのよりもずっとハードスケジュールを送ってる俺だぜ? 甘く見んなって! バイトとレコーディングでぶっ通し15時間勤務生活に比べりゃチョロイって!!」
心配する都の声を遮って言う幸弥は、軽くストレッチをしながら不敵に笑い、都の頭にポンと手を置く。
「でもぉ……」
「んな顔すんなよ。大丈夫だって」
見上げてくるその瞳は心配が拭えない様子だ。
幸弥は眉を寄せて困ったように息をつくと、一度視線を泳がせて自らの唇を吸い、頭ひとつ分小さい都に目線を戻す。
そしてすっと屈み、都と目線を合わせるとぽつりと言った。
「オレは、ここの神様に、強力な、お願い事があるんです。ここじゃなきゃ駄目なんです」
ひたと目を合わせたまま、言葉を区切ってはっきりとそう言うと、幸弥は垂らした前髪をかきあげながら立ち上がる。
「お願い事?」
「そうです」
幸弥の言葉に一拍置くと都が目を瞬かせて小首を傾げる。
「何?」
「さあ?」
肩をすくめた幸弥の表情はとぼけたものだったが、その瞳には強い決意の色が浮かんでいた。
こうなったら、幸弥は意地でも折れない。何を言ってもこちらの意見は聞いてくれないのだ。
以前、ライブを控えていた時に体調を崩し、万全でないままに本番を迎えた事があった。
本番の二日前の電話で、様子を聞いた時も『大丈夫、俺が抜けたら演奏成立しなくなるし、そんな迷惑掛けらんねーから』とだけ答え続け、『そんな体調で臨んだら逆にメンバーに迷惑掛かる事になるのよ!?』と心配のしすぎで、幾分声を荒げた都の意見を全く聞いてくれなかった。
本番を迎えてステージにいる彼の真っ白な顔を目にする度に、はらはらさせられたのを思い出した都は諦めて溜息を吐いた。
「……分かった。行こう」
「そうこなくっちゃ!」
幸弥は満足そうに笑いながら、階段を上り始める。
都は不満ながらも、たった今向けられた子供のような笑顔に、思わずニヤけてしまう自分が、ほんのちょっぴり悔しかった。

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