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うたふるよる 第一夜閑漢さん

スペースのための打ち合わせメモ

常盤みどりが選んだ閑漢さんの短歌

*記入スペースの兼ね合いで改行し一行表記にさせて頂きました。

ラーメンも パスタ ウドンも元小麦 そんな感じで平和でいたい

23年2月14日Twitterより

麺類を列挙してゆく中で元々は同じものなのだから平和でいたいと作中主体は述べていてたしかにその通りだな、ゆるやかに違いを認め合えるのが良いなと思えるコミカルだけれど素敵な一首だと感じました。
ですがちょうど晩御飯を考えている時に思い浮かんだ素麺がそこにはおらず
読み終わった最後のハッシュタグの「実はそばが好き」で笑ってしまいました。ですがですが、笑った後でふと「平和って目の届く範囲でしか、共通認識のもとでしか成立しないのかな」と思いつつ再度読み直すとアイロニカルな感じがして、自分が見ているものは自分がみたいだけのものではないか、疑心暗鬼のような感覚に陥る。ハッシュタグまで読むと意味が変わってくるSNSならではの短歌だなぁと思います。素敵だなぁと。

闇の中震えるキミが口ずさむフレーズはやがて光になる

23年3月28日/RIUMさん「歌」より

最初にこの一首を拝見した際は、作中主体から「キミ」に対する励ましの一首だと感じました。しかし闇の中で震える姿はおそらく他者から見ることはできません、だとすると内省の一首なのかなと読み直してみました。暗闇の中で震える作中の「キミ」が口ずさむのは歌なのか、詩なのか、俳句かもしれません。もしかすると私たちと同じように短歌を考えているのかもしれません。

人が「震える」理由は色々ありますよね、寒さや出血。
発熱といった肉体的なダメージ、恐怖・悲しみ・怒り。調べてみたのですが、震えって人体が過度なストレスに対して無意識に発生していつでも体を動かせる状態にするための反応なんだそうです。

主体の内省は自身が知ってか知らずか生き延びるための反応なんだろうなと思うと、この一首は他人事ではないと感じるようになりました。その震えを重ねていけば重ねていくほどに光にたどり着くように前に向かって進んでいけるのではないかと感じ前向きになれる一首でとても好きです。短歌を作る理由は人それだと思うのですが、誰かを・自分を励ますために短歌を作ったことって皆さんはないでしょうか。

あの人が好きだといったジャンルの棚今でもつい見ているのはなぜ

23年4月18日/RIUMさん「恋」より

先ほど紹介した短歌と同様に主体が「誰」を見ているのか悩みました。主体がお付き合いをしている方が元彼/元彼女の話を何かの折に主体に対してしたことがありそれを主体がずっと心の中に引っかかりを覚えていた状態で「どうしてあなたは私と付き合っているのに未だにその棚に向かうのですか」と読めますし、先ほど同様内省的にこの一首を読むと未練を引きずっている歌だと思います。どちらにしても切なくて未練を感じますし、悔しい思いにも繋がるのかなと。覚えていなくて申し訳がないのですが、以前どなたかがスペースかツイートで仰っていたのですが「好きだった・付き合っていた人」が聞いていた音楽が聞けなくなるかどうか、という話題を思い出しました。私は「くるり」が聞けないです。

あの人も残り香だけをおいていくそろそろ鼻が利がないものか…

23年4月11日/RIUMさん「あの人も」

これも一つ前のお話と重複する部分がありますが主体が誰が誰かを見送った際の残り香を介して、過去の別の誰かをリフレインさせている様子を想像しました。きkaないものかではなく、きgaないものかとしている部分がコミカルで好きなのですが鼻詰まりではなくもしかして泣いてたら切ないなぁと。生活を共にしている・していた人の香りって結構残りませんか。嫌いな方も多いかもしれないのですがタバコとか私は好きで。
亡くなった祖父がヘビースモーカーだったのですが今でもタバコの香りがまざった部屋の香りを嗅ぐと懐かしくなります。文字通り香りとして残ることも多々ありますし、連想される記憶として残ることも。

そしてこれも個人的な感覚ですが、嬉しい記憶が香りとリンクすることが私はあまりなくて。悲しい記憶が香りと強く結びつく気がします。そう考えると鼻詰まりだけでなく、やっぱり少し泣いてるのかなぁなんて感じてしまいます。

いつかまた川の辺りに咲く花で風に揺れたらそれが僕です

23年4月21日/RIIUMさん「別れ」

ド直球の愛情を感じてとても好きです。私は思考が捻くれ気味なのでなかなか使えないのですが「いつか・きっと」ということばを使って優しく主体が愛する誰かに気持ちを伝えている情景が浮かびます。

川のあたり・風に揺れる花と場所も品種も明確に特定をしていないことから相手がそう願えばそう思える余地を残していると言えば良いのでしょうか「思う・思わない選択の自由は主体の相手にあるけれど、そう思ってくれるのであれば私はあなたの近くにいつまでも居ます」といった静かな情熱を感じてすごく素敵だなと思います。

考えすぎ、読み違いと笑われてしまうかもしれないのですけど閑漢さんの短歌は初見のコミカルさで笑わせて頂いたあとにゆっくり読むと内省を促されることが多くてどの短歌も哲学的というか、思考をさせていただけるというか、すこし落ち着いた楽しい時間を過ごすきっかけを与えていただきました。

みさきゆうが選んだ閑漢さんの短歌

今日までの
恩は一生忘れない
ハズです たぶん きっと俺なら

2022年12月24日RIUMさん初句「今日までの」

ずっと〜する・絶対〜する のような言葉を、私はなかなか使えません。ずっと〜だったらいいねと言うことはあります。何か大きな恩義を感じることがあれば、絶対忘れない、ずっと忘れたくないとは思うのですが、でもなかなか言いきれない…笑
誠実さなのか自分を信じられない…いえ、よく分かっているからかもしれません。
ですから、主体「俺」の正直さ、不器用さのようなものに共感しました。追加で言い足していく感じが愛嬌にも思えて可愛らしいです。スペースを空けているのが、口頭で話してるリアルなリズムに感じられて好きです。

ひび割れの
指を猫背で
見てるから
羽が生えても上手く飛べない

2023年1月25日Twitter

主体はどなたを見ているのでしょうか。ひび割れの指…ということは少しご年配の方、ご両親…お母さまかなと想像しました。ふと、ああ…こんなに小さくなったんだと、冬にひび割れてしまう指を撫でて眺めてる猫背の母親を愛おしく少し寂しく感じたのかなと。
でも最後のニ句から、これは主体自身のことなのかもしれないと思い直しました。私は人の目を意識していない気の緩んだ時の自分の姿勢に気付いた時にショックを受けることがあります。指先を眺めてすっかり猫背になってるのに気付き、ああ…なんてやつれてしまってるんだろう…若さはどこに行ったんだろう(年齢的には中年?)、こんなんじゃあ羽が生えても上手く飛べない、やりたい事があってもなかなか進まないはずだ…と思ったのではないでしょうか。
一緒に背伸びして深呼吸してみましょと声をかけたくなりました。ふとした瞬間に思ったことを歌にするのが素敵だと思いました。

好きだとも
厭とも言えない
時間帯
木の葉を鳴らす風の感情

#短歌 #倦怠期 2023年2月24日Twitter

#倦怠期とあるように、嫌ではなくて厭ということは、長い間連れ合ってきてなんだか飽きてしまったように感じる気持ちが湧いてきてしまっているのかもしれません。好きとも厭とも「言わない」ではなく「言えない」。好きだよなんて照れてしまう…いや、照れることさえなくなったけど今更言えないし、厭な気持ちもなんとなくあると言えばあるけどそんな事言う訳にもいかないし、言ったところで好転しない。
時間帯はどのくらいでしょうか。過去にはムードのあった夜のふたりの時間ではなく、休日の15時から夕方くらい?ふたりで出かける予定もなくなんとなく暇で手持ち無沙汰な時間帯かもしれません。それとも人生を一日に置き換えているのでしょうか。子育ても落ち着いてまたふたりの時間が出来た頃、とも思いました。
「木の葉を揺らす風の感情」も面白い表現ですね。強くもなく冷たくもなく、だけど柔らかい風だったらいいなと思いました。春になったらお散歩にでも出かけて、気持ちの良い風の通るお互いの良い距離間で歩いて欲しいなと思います。
ご夫婦でもパートナー、恋人、いろんな関係に訪れる時間帯ですよね。わかる。と、優しい気持ちにさせてくれるお歌でした。

人混みで
時で光で
温度差で
僕らは"距離"を感じる羊

#距離をなにに例えよう 2023年4月16日Twitter

ハッシュタグから推測してばかりですみません。
#距離をなにに例えようと書かれていました。
距離と言ってもいろいろありますよね。物理的な距離、心の距離、時間の距離。
「人混み」ではぐれてしまった時の不安な距離、もしかしたらすぐ近くにいるかもしれないけれど、ものすごく遠くに感じてしまいます。
「時間」ではなく「時と光」ということは、もっと大きなサイズ感、タイムスリップするくらい?、宇宙から届く光なのかな?と想像しました。
「温度差」違うと辛い時ありますよね。共同で進めたい物事がなかなか進まなくてもどかしいし、恋人同士の好きの温度差が違うと、もうダメかもしれない…と気持ちが落ち込んでしまう人もいると思います。果てしなく遠い…辛い…笑
いろんな種類からこの選択をされたのが面白いと思いました。
最後の「僕らは"距離"を感じる羊」。羊はやわらかくて可愛いイメージが浮かびます。西洋(キリスト教)でも山羊と対比して善いイメージで扱われますよね。うーん。それとも眠れない時に数える羊でしょうか。夜の長さ、朝までの距離を感じながら、いろんなことを考えすぎる迷える子羊?そんな想像も広がって楽しく読みました。

ぎゅうっと握りしめたキミの拳(こぶし)
その内側の"白"は憧れ

※手のひらは白いよ 2023年6月2日Twitter

このお歌を拝読してすぐ手を握りしめてみました。うん。白い。握りしめなくても想像はできたのですが、実際にやってみて「ぎゅうっと」と力を込めないと白くはならないなと気付きました。このお歌を声に出して読むなら、四音じゃなくて、五音で「ぎゅうぅっと!」くらいです。
そのくらい強く拳を作るほどのことがキミに起きて、その様子を主体はすぐ近くで見ていたんですよね。その意志の強さ、堪える力に自分にはまだ持てていないものを感じて憧れたのではないでしょうか。意志の力強さの血色→白のイメージの流れがとてもお上手だなと思いました。

あと、空手などの好敵手への憧れと取れるかな、とも思いました。父が空手をずっと続けているので浮かんだんです。空手の会のロゴ?も拳なので笑

*引用元TweetやURLに関しては上記「うたふるよる」アカウントのツイート欄をご参照ください。

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