老いらくの恋 第14話
日本国憲法に恋しています。
ロシア・ウクライナ戦争以降、改憲論が勢いを増しています。
こんな時こそ、じっくり憲法を考えて見ましょう。
本を2冊紹介します。
1冊目は「憲法主義 条文には書かれていない本質」
2冊目は「憲法という希望」
この2冊とも点訳しました。
まず「憲法主義」2014年7月29日 初版
南野教授が内山さんに対面して、憲法を解き明かすスタイルで本書は構成されている。
内山さん可愛いですね。彼女は、翌年慶応大学に現役入学をはたしている。
詳細に入る前に、感想を述べよう。
私(土岐)は大学で法律を専攻しました。講義は退屈で、くそ面白くなかった。
当然、得られた知識は薄っぺらなものでした。しかし、この本は違う。
南野教授が時々内山さんに質問しながら進めるが、その質問に対する内山さんの反応が素晴らしい。
各講のあとに内山さんがまとめるが、その内容が的確で素晴らしい。
こんな講義をうけられたら、これほど勉強嫌いにはならなっかたと思う。
本書は
第1講 憲法とはなにか
第2講 人権と立憲主義
第3講 国民主義と選挙
第4講 内閣と違憲審査制
第5講 憲法の変化と未来
で構成れている。すべて紹介するのは無理なので、私が憲法の肝だと思ったところを紹介する。
南野 「内山さんは『憲法とは何か?』と聞かれたら、同答えますか?」
内山 「最高法規 法律とか国会が一番最初に縛られるものが憲法です」
南野 「模範的な回答です。日本国憲法の条文にも書かれている。」
内山 「96条です。『96条① この憲法は、国の最高法規であって・・』
南野 「法律はどうやってつくるのか?」
内山 「内閣か国会議員が国会に法律案を提出して、可決されたら法律になります」
南野 「すごく正確に知っていますね。憲法のどこに書いてありますか?」
内山 「第41条です。 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」
南野 「国会がどうやって法律をつくるのか、それも憲法にかいてある。56条じゃなくて・・」
内山 「59条です」
南野 「ありがとう。憲法は『最高法規』であって、その条文に反する法律・命令は『その効力を許しない』 “憲法はつねに法律に勝つ”
日本には法律が約2000本ほどある。これだけあると法律間に矛盾が生じる事がある。この時はどうなるのでしょう。
内山 「・・・?」
南野 「法律間で矛盾があれば後で出来た法律が優先される。『後法は前法を破る』が原則です」
南野 「法律間では後法が優先される。では憲法と法律に矛盾がある場合は?
内山 「つねに憲法が優先される」
南野 「憲法と法律が矛盾する場合、最高裁判所で違憲審査される。最高裁の裁判官は何人いるか?」
内山 「16人?」
南野 「おしい。15人です。8人が違憲だといえば、選挙で選ばれた役700人の国会議員が作った法が無効になる。なかなか恐ろしい制度ですね」
☆☆ 硬い憲法
南野 「法律を改正するにはどうしたら良いか?」
内山 「もう一回国会に提出する」
南野 「そうです。では憲法はどうすれば改正できるか?」
内山 「もっとたくさんの議員の賛成が必要です。憲法96条 この憲法の改正は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会に提案し承認を得なければならない。さらに 国民投票で過半数の賛成を必要とする」
南野 「これは普通の法律に比べてかなり厳しい。こう言う憲法をなんと呼ぶか?」
内山 「なんだろう」
南野 「硬性憲法という。法律に比べて改正の手続きが難しい。どうしてでしょう?」
内山 「すぐに変わってしまったら大変だから」
南野 「そうです。『立憲主義』の真髄です。すぐに変わったら困るのが憲法です。」
☆☆ 第2講 人権と立憲主義
南野 「内山さん、人権とはなにですか?」
内山 「人権は、人が生まれながらにして与えられている様々な権利です」
南野 「人権ではない権利とはどんなものがありますか」
内山 「被選挙権」
南野 「被選挙権の前に選挙権を言ってほしかったな。これらは、年齢とか国籍などで制限される。だから人権ではない。参政権は人権ではないことになる。」
南野 「人が生まれながらにして持つ権利にはどんなものがあるか?」
内山 「最低限度の生活を営む権利」
南野 「生存権ですね。25条に規定されています。
第25条① すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有る。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公州衛生の向上および増進に努めなければならない。」
南野 「『人権』と言う日本語が出来たのはいつごろだと思いますか?」
内山 「戦後?」
南野 「もう少し昔です。『人権』もそうだが、日本には『権利』という言葉もなかった。権利とか「人権という考え方は、ヨーロッパが発明したものです。だいたい中世から、「人には権利があるだという考え方が広まった。ところが、日本は江戸時代に鎖国をしていた。ペリーが浦賀に来たのは何年?」
内山 「1853年です」
南野 「話しはそれますが、福沢諭吉は本当に偉いひとでね、24歳くらいの時・・」
内山 「オランダ語を勉強したあとに英語を勉強しなおした」
南野 「え?」
内山 「『福翁自伝』読みました。私、慶応大学に進学するので」
南野 「日本語の『人権』と言う言葉が出来たのはまさにその時代の話しです。英語の“human rights”という言葉を日本人は知った」
内山 「“human rights” 複数形ですね」
南野 「そう、複数形です。“human rights”という言葉を江戸時代まで日本人は知らなかった。要するに日本では人権と言う概念は100年ちょっとの歴史しかないのです。西洋でも“human rights”の歴史はあまり古くない。
1789年のフランス革命のときに『人権宣言』出されました。そこに『人には生まれながらにして譲り渡す事の出来ない権利がある』という人権思想がかかれています」
南野 「内山さんは『社会契約論』って聞いたことありますか」
内山 「あります」
南野 「社会契約とは?」
内山 「国民と政治を行う人が契約を結んで、政治をおこなう・・」
南野 「自然状態ではみんな権利をもっていて、権利を行使しようとする。権利がぶつかり合えば力の行使になる。『万人の万人にたいする闘争』常態でこれではこころが休まることがない。そこで『自分たちが持っている権利をリーダー〔代表者〕にゆだね、争いは代表者に裁いてもらおう』という約束をした。この約束が『社会契約』です」
南野 「社会契約論は、現にある国家、国家権力の正当性を与える理屈です。同時に国家権力を制約する理屈にもなっている。社旗契約論は、国家権力(例。王様)のやってよい事、やってよい事が、われわれの自然権をよりよく保証する事に限られる、という理論でもある。憲法の目的は人権を保障することである。」
☆☆ 憲法の名宛人
南野 「憲法の名宛人、って何でしょう?
内山 「対象者ですか?」
南野 「憲法は誰を対象にしているのでしょう?」
内山 「国民」
南野 「ではないのです。」
内山 「えっ?」
南野「憲法は国家権力を対象としている。法律はそこにいる人々(国民、外国人)を対象として様々な義務を課すし、権利を制約する。憲法は国家権力(内閣総理大臣、国会議員、公務員)を対象にする。」
☆☆ 国民は憲法をまもらなくていい
南野 「変な感じがしますか?」
内山 「します。守らなくていいのですか?」
南野 「守らなくていいのです、守らなければいけないのは国家権力です。国民は法律を守れば良い。
『国民は憲法によって守られる存在であって、憲法に縛られる存在ではない』
どうです、皆さん、ここまでは本書のほんの一部にすぎません。しかし憲法の本質を突いています。そしてその本質が何所から来たかを解き明かしています。
それにしても、内山さんの応対の見事な事。感心します。しかも、歌えて踊れて、すごいですね。そう思いませんか?
内山さんのまとめです。
憲法の価値は、「その憲法がその国に根付いているか」「安定しているか」「運用されて来たか」ということが、その憲法の価値を決めているのだ。そういった観点から見て、日本国憲法は素晴らしい憲法であると私は思う。
最近やかましくなってきた、憲法改正について、老いらくの恋 第15話で取り上げたい。
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