【ビジネス書を読む時間がない若手金融会社員・就活生向け!】ファイナンスの基本4
前回から、ファイナンスの基本について記載しています
今回は、企業価値について記載したいと思います
自社や他社の企業価値を算定する際に必要な知識となるため、ファイナンス業務が専門外の方にとっても知っていて損はないと思います
実務上は、投資ファンドや投資銀行のM&Aチーム、ファイナンシャルアドバイザー(FAS)が専門的な知見を保有しています
私自身も、投資ファンド在籍時は案件ごとに企業価値算定を実施していました
1. 企業価値
会社全体の経済的価値を企業価値といいます
これは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値のことです
企業価値は、株価算定、M&A、リストラなどを判断するときの基準となります
ファイナンス理論における経営の目的は、企業価値の最大化です
1-1. 企業価値の考え方
B/Sを使って表現すると、企業価値とは「企業が保有する資産の市場価値」になります
資産は、事業資産と非事業資産に分割できます。事業資産は、事業が生み出すキャッシュフローからその経済的価値(NPV)を算定することが可能です。非事業資産は事業を運営するうえで必ずしも必要ではないので、時価評価を行うことで、その経済的価値を算定します。上記により求めた企業の保有する資産の経済的価値が、企業価値となります
具体的な手順は、以下となります
①会社の事業が生み出すFCFを予測する
②会社の目標資本構成を設定する
③βをアンレバーした後に目標資本構成に合わせてWACCを算出する
④残存価値を決定する(永続価値/マルチプル)
⑤FCFをWACCで割り引いてNPVを求める。これが事業資産の経済的価値となる
⑥非事業資産を特定し、それについて時価評価する
⑦事業資産と非事業資産の価値を合計する
1-2. 株価の理論値
企業価値を算出したら、株価の理論値を計算することができます
企業価値は、資産の市場価値で、負債と株主資本の市場価値を等しくなります
従って、企業価値から負債を引いたものが株主資本の市場価値となります。これを発行済み株式数で割ったものが株価の理論値となります
具体的には以下のような算出となります
A社は毎年100億円のFCFを創出し、それが永続とします。負債は300億円、割引率は10%、発行済み株式数は2億株とすると、A社の企業価値と理論株価は次のようになります
①A社の企業価値=FCF/割引率=100/0.1=1,000億円
②A社の株主資本の市場価値=企業価値-負債=1,000-300=700億円
③A社の理論株価=株主資本の市場価値÷発行済み株式数=700÷2=350円
仮に、A社の現時点の株価が300円であれば、適正株価350円より割安であるため、”買い”と判断することが可能です
株価を上げるためには、企業価値向上が必要であり、そのためにはFCFを増大する必要があり、そのためには企業競争優位を確立する必要があります
3. M&A(企業の合併・買収)
企業価値算定は、M&Aを行う際に欠かせません
本日は前提として、M&Aにおいて価値の源泉とされているものをご紹介します
①シナジー効果
M&Aにおけるシナジー効果とは、2つの会社の経営資源を組み合わせることで、それぞれが単独で活動するよりも大きな経済的価値が生じることです
代表的なものが規模の経済(売上増加による固定費の負担軽減、間接部門の共有による合理化、原材料の大量仕入れによるコストダウン)です
また、お互いの足りないものをカバーする補完関係を構築することで、キャッシュフローの増加が期待できます
例えば、東日本+西日本のような地理的カバレッジを拡大する、何らかのワンストップサービスを提供する、等が挙げられます
②節税効果
M&Aは負債を用いて行われることが多いです。そのため、負債活用による節税効果が期待できます
一方で、節税効果は本質的にはM&Aと関係ない点には注意が必要です
③イナーシャの打破
一定の環境のなかに安住してしまい組織が不活性化することを「イナーシャ」と呼びます
M&Aを契機に不採算事業から撤退するなど、イナーシャを打破し、組織の価値創造を促進できる可能性があると考えられています
経営陣の刷新、テコ入れもその一事例です
いかがでしたでしょうか。本日は、「企業価値」について記載しました
次回以降もお楽しみに!