小説 2051
2045年のシンギュラリティ騒動に隠れて某国が再度、日本の領地占領をもくろむが、帰化人勢力に阻まれる。
国連の決議と某国と帰化人勢力の提言により、京都に首都を移し、東京から南を某国日本、以北を帰化日本として再編成。
2051年某月某日 今日も東京は静かだ。
通勤者と出会うことなどほぼ無い、街の上空をエアモービルで飛ばす。
下を見ると、公園ではベーシックインカムで保証された人々が、けだるそうに、たむろしている。
相変わらず、彼らに表情は無い。
上からでも分かるぐらいだ。
仕事先の、大規模地震での爪痕を残したビルに入ると、見慣れたおびただしい数のチューブ その間をアンドロイドがせわしなく動いている。
壁面を覆い尽くすモニタは、オールグリーン どうやら問題は起きていないようだ。
俺は兼ねてから計画していた事を実行しようと、妻のチューブを探した。
メタバース内では、一緒に暮らしてきた妻だけど、本当の姿を見たことが無い。
ようやく妻のチューブを見つけ、してはいけない、チューブクリアボタンを押した。
チューブが透明になり、女性が姿を現す。
綺麗だ、思った以上の妻の姿に満足した俺は、もう一度氏名を確認した。
あれ、違う名だ。 左隣を見ると今度は間違いなく妻の名が。
しまった、間違えたと思いながら、妻側のクリアボタンを押すと、見たことも無いオヤジが横たわっていた。
思考能力を失ったおれは、蠢くオヤジの口元を見た。
唇の動きを、反芻すると、「あなた、おかえりなさい」と…
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