澤田瞳子『能楽ものがたり稚児桜』感想文
羽田椿です。
『能楽ものがたり稚児桜』の感想文を書きます。
この本は短編集で、以下の八編からなります。
・やま巡り
・小狐の剣
・稚児桜
・鮎
・猟師とその妻
・大臣の娘
・秋の扇
・照日の鏡
「能の名曲からインスパイアされた8編のものがたり。」
と帯にはあります。
ちょっと迷いました。
これを前提として原典も調べつつ読むべきか、単純に小説として読むべきか。
気持ち的には原典に当たってから読みたいけど、調べはじめるときりがなくなるので、今回は小説として読むことにしました。直木賞の選考委員の方はどうしてるんだろう?(選評が楽しみです。)
いつだったか、古市なんとかさんが芥川賞の候補になったとき、選考委員の方々が参考文献の小説までちゃんと読んでてすごいなあと思ったけど、あれは特殊な例かな。
能っていうと、幽霊が出てきて生前のうらみつらみとか、悔いの残っていることなんかを話すようなイメージです。それを文章でしっかり書いてしまうとけっこう重たくなりそうだけど、と思いながら読書をスタートしました。
よく、時代物に現代的な価値観を持ち込まれるのが嫌だという意見を聞きますが(わたしも少なからずそう思うことがあります。それにまつわる手続きがめんどくさく感じるのです)、この作品にはそういう要素はあまりないです。
人間の醜いところや美しいところをあぶり出す、みたいな感じのお話が多いですかね。短編集なので、好きな作品はなにかしら見つけられるのではないでしょうか。
あまり感想が出てこないんですよね。短編だからか、全体的に小粒な感じ。短編小説として終わってる作品もありますが、長編の第一章じゃないかというものもけっこうありました。
登場人物がそれぞれ特徴的で、深く掘り下げられているので、短編だと浅瀬で遊んで終わっている感じがするんですかね。だから、「うーん、つまらなくはないんだけど…」となってしまう。もっと深いとこ、どうせなら海の底まで連れてってくれ、と思ってしまう。
この作家さんは長編の方がおもしろいかもしれない。見かけたら読んでみようと思いました。
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