初めての街頭インタビュー
社会人一年目のとき、プレミアムフライデーというものが流行しかけた。月末の金曜日には15時に仕事を切り上げ、買い物や旅行を楽しんでね、という消費を促すための取り組みだ。
テレビなどで話題にはなったけど、わたしが勤めていた会社では実施されず、周りでもそういった話は聞かなかった。
さっき調べてみたら、2023年で公式サイトが閉鎖されたそうだ。通称「プレ金」と書かれていたが、その言葉を2024年の10月の今、初めて知った。もしくは記憶から消えていた。
プレミアムフライデーが始まる頃、わたしは街頭インタビューを受けた。
通勤途中、明らかにテレビ局のものであろう大きなカメラがあった。何かの撮影かな?と思いながら横を通ると、声をかけられた。
「プレミアムフライデーについてのインタビューをしておりまして。よろしければご協力願えますか?」
おぉ、これがかの有名な街頭インタビューか。本当に声かけられることあるんだな。断る理由はないし、なんだったらちょっと嬉しいし。二つ返事で引き受けた。
「プレミアムフライデーが始まりますが、金曜の夜に早く仕事が終わったら何がしたいですか?」
私「そうですね、友人と食事をしたり、旅行に行ったりしたいです。楽しみです。」
求められてそうな内容を答えた。
実際は、15時に勤務を終えても家に直行するか、出かけるとしても一人でカラオケに行くか本屋さんに行くか。
でもそんな本当のことを言っても面白くないから、"世間の声代表"として答えた。プレ金を考えて作った人たちの思惑通り、「一般人はちゃんと消費に回りますよ。」を、一般人代表として答えた。一般人を演じた。
ニュースでよく「世間の声は…」と街頭インタビューの映像が流れる。
実際にインタビューされて思ったことだが、答える人の多くは本心を話していないのではないか?求められてる答えを考え、一般人代表を全うしているのではないか?だとしたら本当の世間の声はどこにあって、一般人はどこにいるのだろう。
一般人を演じたその映像は無事採用され、テレビで放送された。
姉は「華々しく芸能界デビューやな」と笑い、しばらくの間、格好のネタにされていた。
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