スイーツを食べるのがダサいという価値観
小学5年生の頃、隣の席で女子2人と男子1人が、「スシローに行ったら何皿食べる?」をテーマに話をしていた。
聞き耳を立てていると、「スシローでデザート食べるとかありえへんよな」という会話が聞こえてきた。え、そうなん?
わたしは寿司と同じくらい、いや、それ以上にデザートを楽しみにしていた。
炙りチーズサーモンやイクラなど、好きなネタを食べた後にデザートを選ぶ。いちごパフェや大学芋など、スシローはデザートも充実している。甘いものも含めて回転寿司の魅力じゃなかったの?
なんか急に恥ずかしくなってきた。こっちに話題を振らないでくれ。そう祈りながら机に座っていると、女子のひとりが話しかけてきた。うわ、最悪。なんて答えよう。
「ゆみちゃんは、スシローでデザート食べる?」
「え〜あんまり食べへんかなぁ。」
嘘をついた。つくしかなかった。
「食べるで。それを楽しみにスシロー行ってるくらいやもん。」
なんて本当のことを言ったら、絶対バカにされるから。ここは無難に話を合わせておこう。
その女子は他の男子にも同じことを質問していた。するとその男子は、
「食べるで。美味いもん。」
と答えていた。なんてかっこいいんだ、と今のわたしなら思えるけど、当時のわたしは「あらら、この子やってしまったな」と思った。
話題の中心にいた3人はそれを聞いて「え〜ありえない。」と、案の定バカにするように笑っていた。
小学5年生にとって、デザートを食べることってダサいことなのだろうか。
辛いものが好きと言ったなら、尊敬の眼差しで見てもらえたのだろうか。
「まだスイーツとか言ってるん、だっさ〜。」なんて思われてしまう、小学生の世界は怖すぎる。今のわたしでは、到底そこで暮らすことはできないだろう。
小学生の世界では、「バカにされる=そこで生きられなくなる」こととほぼ同義だから、そうならないように慎重に生きていくしかない。
逃げ道がない分、大人の世界よりもシビアで大変だ。世の小学生たちは良くやっていけてるなあ。
数年後には、娘をこんな厳しい場所に放り込むことになるのか。
スシローで幸せそうにみたらし団子を食べていた娘よ、強く生きるんだぞ。