【小説】倶記4-3
そして今。
「ううーん。」
「やっぱなんもないよねー。」
あれから3時間ほど森を探索していた俺たち。
「もう半分くらいは見たけど、あの敵も出てこないし。」
「木しかないねっ。」
既に辺りは朱色を通り越して暗く染まり始めている頃。
森の入り口に帰ってきた自分たちが第一に言った台詞が上である。
まあ、あの敵にはできればでてきて欲しくなかったからよかったけれども。
体感にしておよそ半分近く探索はしたから、十分とも思うけれど。
残りの半分にヒントがあるとしたら見逃す訳にもいかない。
「もし他に行くとこがなかったら、明日もここきてみようか。」
「いいよー。私は倶のボディーガードだからねっ♪」
「ボディガードではなかったけども。」
南津とのこのやり取り、今後もやるのか…?
「はいはい、さんせーい!」
「…あのー。」
「ん?」
しかし控えめに挙手する女の子が1人。
「私明日、買い物に行ってきてもいいでしょうか?」
あっ、もちろんお昼には合流しますよ!
と続けるのは菜々子。
買い物、買い物って…。
「あ、食材かー。」
美月のつぶやきでようやく理解した。
確かに会った時は準備してたけれど、それから買い出しとかはしてなかったもんな。
「むしろお願いするよ。そういうの疎いし。」
自分としては外食でもいけるが、彼女にとっては想定外だろうし。
料理なんて滅多にしないから、買い物ならプロに預けたほうがいいだろうし。
「こっちは任せてね♪」
「はい!了解しました!」
当然のことながら、その日の夕食も美味しかったのであった。