人生にコスパを求めない。
出産までラストスパートなので、今後なかなか読めなくなるであろう本を駆けこむように読んでいます。
どのくらい読めなくなっちゃうのかなあ……。本好きとしてはそこが結構心配の種です。
その危機感?もあってか、かなりざくざくと本を読んでいるんですがこの本が面白かったです。
NHK出版 学びのきほん 落語はこころの処方箋
立川談慶氏がお書きになった本。落語の歴史からなりたち、どのように楽しむべきかなどが書かれています。
この本を読むまで知らなかったのですが、立川談慶氏はたくさん書籍を出版されているんですね。だからか、この本も要点を凝縮している上にとても読みやすく、落語の入門書としてはとても良書だなと思いました。
そのなかでこころに残った一言がありました。
著者の立川談慶氏は、9年半も前座を務め三十代半ばまで下積み時代だったそうです。これは、他の落語家に比べても長く、知り合いからも「もう諦めたら?」とバカにされることもあったんだそう。
ですが、師匠の立川談志を尊敬していたこともあって続けてこられたんだとか。
効率よく、将来性を考えて、計画的に……
未来のことを考えるときに「これを行うことはコスパがいいか?」ということをつい考えてしまいます。
ですが、そもそも今現在「失敗」だとか「効率が悪い」と思っていることが、本当に失敗なのか。それは分からない。失敗の中からも次につながるものを見つけられればそれも成功と言えるのではないか。そう本書では語られています。
『塞翁が馬』という言葉もありますが、その出来事がどのような意味を持つかは、案外ずいぶん後になってからわかったりします。
人生にコスパを求めず、自分の心が熱中できるものや本当に大切だと思えるものに時間を費やす。当たり前のことのようですが、そういう積み重ねが人生を豊かにしていくはず。そう思ってしまいます。
でも案外、そういうのを選択するのって勇気がいるんですよね。自分にとって大切なものってきわめて個人的なものだからこそ、他者と共有したり分かってもらったりすることって難しい。ある意味、マイノリティになる可能性だってあります。
けど、そこから逃げないできちんと自分の人生を選択していきたいものです。
落語には現代社会にはない、コスパを求めない世界観が描かれていると著者は言います。「なんとかなるさ」と暮らしている人が居て、「しょうがねえな」と許し合う世界がある。
そんな世界観に触れていると心が和み、「いろいろあるけど、まあなんとかなるか」そんな気持ちにさせてくれます。
コロナ禍で避けていた落語の寄席にも久しぶりに行きたくなりました。