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【朝の物語、後編🍚】病院で助けを求めたらラジオ体操を処方された女の44日目
私は静かに席に座っていた。ここは揚げ物の店、松のや。通常の定食屋では、朝から揚げ物を出すところは少ない。そのせいか、過去には揚げが甘く、中途半端な状態で出てきた揚げ物にがっかりしたこともあった。しかし、ここは違う。もう一度言う、ここは揚げ物の店だ。
そんな期待とともに、私は待っていた。やがて店員さんが白飯、豚汁、そしてアツアツのアジフライを運んできた。添えられたキャベツの千切りとポテトサラダがさりげなく朝定食の完成度を引き立てる。私はたまらずに、豚汁とアジフライを選んだ自分の判断に満足して心の中で微笑む。「アジフライ、これはタンパク質だ!豚汁、これは野菜だ!」と、自分を説得する。
空腹で何かにかき立てられるような衝動を押さえつつも、最初の一口だけはじっくり味わいたい。私は、アツアツのアジフライをそのまま一口かじった。
サクッ!
口に広がる熱々の魚の風味、そして衣のカリッとした食感。私は、思わず「はふっ!」と声を漏らしそうになる。そう、これこそ私が求めていたものだ。アジフライの美味しさが私の疲れた体に染み渡っていく。
次に豚汁をひとすすり。ズズズッ。豚汁の熱さが、疲れた体にじんわりとしみていく。具材がたっぷり入っているこの豚汁は、ただの味噌汁ではない。そこには野菜、肉、そしてダシが渾然一体となったオーケストラが存在していた。口の中で具材が奏でるハーモニーは、まさに大合奏と言えるだろう。
気がつけば、私は夢中で食べていた。アジフライと豚汁、そして時折つまむキャベツのシャキシャキ感や、ポテトサラダのほのかな甘みが良いアクセントとなって、絶妙なバランスを生んでいる。旅の終わりに、こんな素晴らしい経験ができるとは思わなかった。
夜行バスでの帰り道、多少の疲労感はあったが、それすらもどこか心地よく思える。こうしてアツアツの朝定食を食べながら、「夜行バスも悪くないな」と心から思った。とはいえ、朝定食はいつでも食べに来られるのだけど…(笑)。
こうして、私の旅はこのアジフライ定食を最後に、本当の完結を迎えたのだ。