「変わる組織」はどこが違うのか? 50
大企業は適応力を磨け!
ある大企業で、10年後の会社を支える新規事業を開発せよ、とトップから指令が下りた。本社研究所では、いろいろな分野の専門家が新規事業が企画され、200件もの新規事業開発が始まった。
10年後、まだ実らない200のテーマへの投資は続いたが、20年後、これらの投資すべてが失敗であることが判明する。いや、正確には1つか2つ、小さな事業にはなったが、とても屋台骨を支えるようなものではない。
30年後、会社を支えているのは依然として祖業でした。M&Aを通じて海外に進出し、はじめは失敗続きだった事業統合の成功率も上がり、それなりの成長を遂げていました。しかし業界の淘汰は進み、勝ち組として生き残ったものの成長率は鈍化。株価は世界のGDPと共に伸びる程度になってしまいました。
振り返ってみると80年代にはじまった日本の大企業の新規事業開発は、概ねこんな姿だったのではないでしょうか。
アメリカではどうだったか。日本からの輸出攻勢に圧倒され悲観的になっていた80年代。創業10年にも満たない2つのテック企業がしっかりと成長軌道を描いていました。アップルとマイクロソフトです。90年代になるとグーグル、アマゾン、エヌビディア、ネットフリックスなどが登場。そして21世紀に入るとフェイスブック(現在のメタ)、スペースX、テスラが現れます。後に続くユニコーンも数多あります。
しかしそのアメリカでも、大企業はパッとしません。一世を風靡したインテルは政府の援助が必要なほどガタガタになりました。80年代からもてはやされたGEは、カリスマ経営者のウェルチが去ったあとは迷走し、3つの会社に分割されました(それぞれ好業績ですが)。P&Gは着実に成長を続けていますが、その程度なら日本にも引けを取らない企業はあります。
どうやら日米ともに、大企業が新たな大事業を生み出す力は弱く、ゼロから始める起業家にアドバンテージがあるようです。この傾向は、中国や欧州をみても大同小異。世界中同じです。
一方、日本には寿命の長い企業がたくさんあります。富士フィルムや大手商社、トヨタ自動車のように、大きなイノベーションの波に適応し続ける企業も少なくありません。
大企業が磨くべきは適応力。企業の歴史を振り返っていると、そんな気がしてきました。