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「変わる組織」はどこが違うのか? 48
伴走支援
先日、元中小企業庁長官の角野然生さんにお目にかかる機会がありました。きっかけは、ご著書の「経営の力と伴走支援~『対話と傾聴』が組織を変える」でした。
官の方としては珍しく(失礼)、福島に住民票を移してまでして被災地に寄り添い、復興に尽力された話に感銘を受けたので、お忙しい中時間を取っていただきました。
3年間で5,000以上の地元事業者に個別訪問されたそうです(累計3万回)。原発事故の被災地に赴くわけです。おそらく官の人であるがゆえに、「あなたたちのためにこうなった」と非難の嵐に合われたでしょう。それを受けとめてじっくりと傾聴し、対話の糸口を開いて、伴走型支援にこぎつけたご経験は、非常に貴重だと感じました。
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伴走支援というのは、これまでに何度かこのブログでも触れてきたプロセス・コンサルテーションのことです。この機会に、これまであまり説明せずに使ってきたこの概念について、少し解説しておきましょう。
まず、本家本元。プロセス・コンサルテーションという言葉を発明したエドガー・H・シャイン先生の定義を見ておきましょう。
「プロセス・コンサルテーションとは、クライアントとの関係を築くことである。それによって、クライアントは自身の内部や外部環境において生じている出来事のプロセスに気づき、理解し、それに従った行動ができるようになる」(E.H.シャイン著、稲葉元吉・尾川丈一訳「プロセス・コンサルテーション 援助関係を築くこと」P.27)。
これ、わかりにくいですよね。私も初めてこれを読んだとき、なんじゃこりゃ? こんなことでコンサルティングになるのか、と思いましたが、その後いろいろな経験を積んで理解できるようになりました。ということで私なりに解説してみましょう。
すべからくコンサルタントは、専門家の立場からクライアントにアドバイスをします。シャイン先生は、そのアドバイスがクライアントの問題を本当に解決するものだろうかと疑問を呈します。コンサルタントがクライアントの問題を間違って解釈しているかもしれないし、単に自分のソリューションを売り込んでいるだけかもしれないと。
角野さんの著書の中にもこんな一節がありました。「企業経営者の中には、過去の経験からコンサルティングに不信感を持っているケースが少なくありません」。シャイン先生が疑問を呈したようなコンサルタントが多いということですね。「このままでは経営者が第三者から支援を受け入れて経営を高度化させていこうという動きが広まらない可能性があります」と角野さんは懸念を表明しています。
シャイン先生がいう「クライアントとの関係を築く」は、クライアントの話を、予断を挟まずにしっかり傾聴し、対話が成り立つような関係性を築くという意味です。
その対話を通じて、クライアントもコンサルタントも、いまおこっていること(問題)を、プロセスとして正しく理解することができる。そうやって初めて適切なアドバイスとは何かがわかるというわけです。
プロセス・コンサルタントは、クライアントが必要としている財務や戦略やマーケティングなどの専門知識を持っているとは限りません。彼(女)らは。傾聴と対話を通じて真の問題が浮かび上がったところで、それに対するソリューションをもつ信頼できる専門家を紹介できればいいわけです。もちろん、プロセス・コンサルタントがその専門家であることもあります。
そういえば、心理学者のアブラハム・H・マズローの言葉に、「ハンマーしか持たないものにはすべてが釘に見える」 というのがありましたね。問題が釘なのか、鉄筋コンクリートなのか、それとも全く違う何かなのか。それを見据えて、最適な専門家をつれてくる。角野さんたちは、まさにそういうチームをつくり、全国にそのネットワークを拡げようとされてきました。この活動は継続させないといけません。