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鉱物ジオラマからアッサンブラージュアートへ

今日は「鉱物ジオラマ作家『時計荘』としての活動と、美術作家「島津さゆり」としての2つのラインで活動していく」という昨日のお話からさらにお話を進め、新しく活動を始めた「美術作家・島津さゆり」のアッサンブラージュアートとはどういうものなのかについてお話ししたいと思います。


以前お話ししたかもしれませんが、私は旧い農家に生まれ、昔ながらの日本人の価値観、山川草木森羅万象の自然を崇拝し、祖霊を崇敬する宗教観を持つ神仏習合文化の中に育ちました。

成長し自我を確立する中で時には育った環境やそれに付随する信仰に反発しながらも理解を深め、「自然と祖霊」という自分を超越する存在を崇敬することでよりよく生き、次世代につなげていくという思想は私の中にしっかりと根付いています。

ですが1977年生まれ、団塊ジュニアの私の世代にはすでに廃れつつあった神道と仏教の歳時記を実践して生きることは、異なる背景を持つ同世代との学校生活を送る中にあっては様々な面で違和感を持つ要因でもありました。

思春期に感じたその違和感は、あくまでひとそれぞれ世界のとらえ方は違うのだという発見であり、感覚や思想の違いはあっても世界は等しくそこにあり、感覚の違う者同士もその世界の中で共存していくものだという理念となっていきました。

こうした違和感から得た理念から、私は自分のルーツや信念をしっかりと確立した上でこそ、世界や他人への理解を深めたいと考えるようになり、大学卒業後は神社に本職巫女として奉職し、雅楽や神楽舞などの神前奉仕をする生活を4年間送り、巫女長を経験しました。

その経験の中では、自然や祖霊(=自身のルーツ)への崇敬を頭の中でだけではなく、神楽舞や雅楽によって表現することがどれほどの力を持つのかを実感として得ました。

そうしたアニミズム的な経験は決して野蛮なものや超常的神秘体験ではなく、他者や自然との距離がSNSやネットの情報によって希薄になりがちな現代社会においてこそ現実的であり必要なものだとも感じます。

私が望むことは、この他者や世界との距離感が今までになく変化するこの大変な時代の中で、自然を崇敬し愛し、自分や他者のルーツを尊び、人間という存在を理解し愛したいということに尽きます。

その中で、今、私が自然への崇敬を表すものとして、幼少期から愛してやまない鉱物をモチーフとして使用し、現実にはない光景、夢という無意識の領域をテーマにすることで人間の深層を理解し共有したいと考えています。

いうまでもなく、潜在意識の存在を自動筆記的に表すことで人間の本質や真実を表現しようという動きは、アンドレ・ブルトンやフロイトの提唱したシュルレアリズムの目指すところと合致しますが、それは神道の最初期にあった巫(かんなぎ)とも共通するところがあると考えます。

私は前述した通り現代の神社での巫女長としての任を経験しましたが、この職掌にはそうした古代での役割は完全に消失し神楽舞や雅楽、神前奉仕などの社務に特化されており、現代の巫女はかんなぎとしての機能はありません。

古代における「巫(かんなぎ)」の存在しないこの現代において、潜在意識の動きをアッサンブラージュ(立体的コラージュ)として一見無軌道にみえる不可思議な景色として表すこと。
ひいては自然への崇拝、祖霊=人間のルーツへの崇敬を夢の景色として表すこと。
夢という、他者とは共有できない無意識の現象をなぜか身近に感じたり、どこか懐かしいと感じられたなら、私の中にある自然崇拝、祖霊崇敬の思想を伝えられると考えています。

そしてその実践こそが、今の私の「アッサンブラージュアート」の表現です。


今までの雑貨としての「気軽に暮らしの中で鉱物を楽しむ」ための鉱物ジオラマから一歩踏み込んで、自分の思想をアッサンブラージュという表現でかたちにすること。
それを私は「美術作家・島津さゆり」としてこれから目指してゆきます。
そのために時間や素材、技法にもこだわって作ってゆくつもりです。

気軽な存在としての「鉱物ジオラマ」のブランドの「時計荘」。
思想の表現、アートを発表する美術作家「島津さゆり」。

長々と語っておりますが、どちらもこれまで通り気軽に楽しんでいただけたらとてもうれしいです。


と、いうわけで明日は個展の詳細情報を掲載します!どうぞよろしくお願いします~!!

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島津さゆり個展
「こんな夢を見た」


鉱物ジオラマ作家「時計荘」として活動9年目を迎える本年、
新たな表現を目指し美術作家「島津さゆり」としての個展を開催することになりました。
暮らしの中で鉱物を美しく飾るための鉱物ジオラマから、
「明け方に見た気のするような夢」をテーマとするアッサンブラージュアートとしての表現へ。
新たな手法を探る初の試みの個展です。


■会期
2022年5月17日(火)~5月22日(日)
11:00-19:00 ※月曜休館、最終日17:00まで

■会場
The Artcomplex Center of Tokyo (ACT)
〒160-0015 東京都新宿区大京町12-9,2F ACT2
TEL 03-3341-3253
E-mail info@gallerycomplex.com

■入場料 無料

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時計荘
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