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「MtGライターって何考えながら記事書いてるの?」が気になる

■はじめに(最近の活動報告)

 本noteにて細々と「パイオニア環境分析のつもり」を書いているわけですが、おかげさまで定期的にお読みいただいている読者の方も増え、ぽつぽつと反響もいただいている今日この頃です。気が向いたときに(月1回ぐらい?)最寄り店舗で大会に出たりすると「note読んでます!」とお声掛けいただく機会も増えました。

 加えて、年初ごろから、MtG会の重鎮フィクサーこと添削さん(@kakikukeko2131)にお誘いいただいてMagic; the Gathering(以下MtG)の記事を書かせていただくこと数度。

 特に先日寄稿させていただいた「境界線上のミドルスクール - Middle School MTG of the middle of nowhere」という記事への反響は非常に大きく、概ね身に余るほどのご評価をいただきました。

 添削杯ではカバレッジも(他のライターさんよりは少ないですが)数本書かせていただいています。評判がよかったのは下記の記事でしょうか。

 徒手空拳でライターまがいのことをやってきたわけですが、いつの間にかそれっぽい活動ができていることに気がつきました。

■気になること

 で、ここまでやって思うんですが、

 みんな……どうやって……記事書いてるんですか……???

 当たり前ながらライターの方ってたくさんいるわけですよね。MtGライターという職業があるかどうかは別にして、役割としては確かにあるわけです。

 他のライターの方はどうか分かりませんが、少なくとも自分は「誰かに書き方を習った」とか「こう書けばいいと教えてもらった」とか、そんな素敵な経験は残念ながらありません。

 しかも今や大配信時代。テキストの代替手段として動画配信が発達しているので、ぶっちゃけ動画見ればよくね、わざわざテキスト記事読まなくてもよくね、という時代になっており、記事を読む人は減少傾向にあります。

 だってあの言語化能力の化身・原根健太プロでさえ動画でプレゼンする時代ですよ!!!! (動画に使われている「原稿」そのもののクオリティが高い点は見逃せないポイントですが)

 その一方で、MTGAの影響か、noteやブログに記事を投稿する人は増えている気がします。概ね、大会レポートや自身の使ったデッキ紹介カードレビューなどなどが多いように見受けられます。

(最近のMtG記事に思うところがないではないですが、本稿の本筋に沿わないので言及しません。)

 そんな背景があっても、「どうやってMtGの記事を書いたらいいか」ということに言及した記事が―― 見当たりません!!!! どこにも!!!! 誰か!!!! あったら教えて!!!! 

 文句を言っていても仕方がないので、自分はこんな方法で、こんなことを考えながら書いていますよ、ということをメモ程度に書き綴ってみました。

■カバレッジってどう書いてるの?

 対戦を記録するカバレッジ。最近は動画配信に完全に取って代わられたため、そもそもカバレッジ自体が添削杯ぐらいでしか見られません。
(添削杯は令和のカバレッジパイオニアだと思うので、ぜひ皆さん隅から隅まで読んでください。全部面白いぞ、本当に)

 それでも「カバレッジ」という文化自体は面白い、と思います。新聞のスポーツ欄やスポーツ新聞が生きているのは、(いろいろな経済的背景こそあれ)テキストで読みたいニーズが一定数あるから、だと思っています。

 とはいえ、MtGに限れば「今、カバレッジを書いている人」を見つけるのは至難の業です。困った。誰に聞けばいいんだ。というわけで自分で書き方をさらすことから始めます。

 自分の場合ですが、こんな手順で書いています。

  1. 試合を正確に記録する

  2. 試合のハイライトを特定する

  3. 読者に何を伝えたいか決める

  4. テーマを決めて記事を書く

 以下順番に解説していきます。

1.試合を正確に記録する

 動画取ればオッケーじゃねぇか、だと本末転倒なのですが、実際のカバレッジは鮮度が重要なので、のんびり動画を見返している時間はあまりないと感じるのが正直なところです。なのでインプレッションベースで記事を書いています。
 とはいえ記事を書き始めると、「あそこ、どうして〇〇を唱えたんだっけ……」とか「手札に〇〇あったのかな……」とか気になることが増えていきます。

 なので、自分の場合はスタートラインとして「試合を正確に記録する」ことを最初の作業と位置付けています。

 

 具体的にはこんな感じです。自分はExcel(Googleスプレッドシート)を使っていますが、WordなりOnenoteなり自分の使いやすいソフトでいいと思います。いいソフトがあったら教えてください。

 プレイヤー名やデッキタイプ、ゲームの初期条件(先手後手、キープ枚数)をヘッダにおいて、ターンごとにとった行動を記録していきます。
 MtGはドローゴーも多いので、時間の余裕はまったくありません。誤字を気にせずガリガリ記録。特に相手ターンの行動やスタック上のやり取りが非常に多く複雑なため、一部ターンの記述がごちゃごちゃになります。時間をかけずに正確に記録できる方法があったら誰か教えて。

 まぁ自分があとで思い出せればいいか、ぐらいで書いていますが、逆に自分が思い出せないような書き方はNG。忘れそうな細かいところが後から気になるので。上記だと《嘘か誠か》の分け方なんかは「しっかり記録しておいてよかった」点でした。

2.試合のハイライトを特定する

 試合の観戦を終えたら(2本先勝形式なので最大3試合を見てからですが、サイドボード中に思い返すこともあります)、どこが試合のハイライトだったのかを考えます。いわゆる「ヤマ場」です。ここをカバレッジの盛り上がるポイントに設定しよう、という点を先に決めてしまうわけです。

 試合のハイライトは、「その場面に向かう途中で何があったか」「ハイライトにおける最大の決断や結果は何か」「その後、どのような展開に変わったのか」といったことを総合的に考えながら決めていきます――というと格好いいですが、要は「一番印象に残ったところ」を設定するようにしています。

3.読者に何を伝えたいかを決める/4.テーマを決めて記事を書く

 1,2までで決めたことはあくまで「個人の感想」でしかないので、これを他人が読んだときにどう思うかを想像しながら、興味を引くような記事体系に整えていきます。要するに「読んだときに面白く思ってもらえるように」、自分の感想を客観的な構成に変化させていく、という作業です。 

https://note.com/coverage2020/n/nbb570c4fe2d0

 上記の記事の時は本当にいろんなことが起こったんですが、G1については1T《セラの天使》が印象的で、そのまま試合が決まってしまったし、その観点でG2を見返してみると、後半にキャストされた《セラの天使》で流れが変わっている、ということも発見できました。
 人気の高いクリーチャーであることから、《セラの天使》に寄せた記事にしよう、とここで決めた、という形です。

 あとはどう書くかですが、とにかく《セラの天使》が主役なんだ!ということを自分に言い聞かせて試合の流れを書けば、それっぽくなりました。



 こんな感じです。カバレッジについてはいろんな書き方があると思うので(カードに寄せる、プレイヤー(人物)に寄せる、プレイヤーの思考(判断)に寄せる、など)、ぜひいろいろな方の「書き方」を聞きたいです。

■特集記事ってどうやって書いてるの?

 というタイトルですが、実際は下記記事を書いたときの裏話です。

1.対象をどこに向けるか(MtGの対象/Targetではない)

 上記記事についてはすごく悩んだのがここです。具体的には、最近多いであろう「MTGAから始めたプレイヤーをどこまで意識するか」です。

 オールドスクールやミドルスクールがどういう背景を持つかについては周知かと思いますが、Eternal Centralなどの設立趣旨には「昔活躍したカードを使う」「古き良きデッキをもう一度使う」などという表現が散見されます。

 なので、この環境で遊んでほしい対象は、その時現役だった世代だ、というメッセージを言外に感じました。それでも、いずれのコミュニティもそこに具体的に言及していないのは、新規プレイヤーへの門戸を閉じていないことの裏返しでもあります。

 そして記事を寄稿する先である名作杯は、オールドスクール「旧作杯」でも最近のプレイヤーが参加していることからも明らかなように、最近MtGを始めたプレイヤーも広く受け入れています。仏か。

 というわけで、記事化の際はあくまで「当時のエクステンデッドやスタンダードを遊んでいた方を意識して」冒頭の導入などを書いています。一方で、「新規プレイヤーへの門戸が開かれている」ことを記事内に明記する、という形で仕上げています。

2.ノスタルジーを強調するか

 1.とも絡む問題ですが、昔こんなデッキありましたよね、という表現をあまり使用してしまうと、最近MtGを始めた読者が記事中に冷めてしまう、ということを危惧していました。また、どうしても思い入れのあるアーキタイプがあったり、一方で対戦経験がないアーキタイプも正直ありました。

 なので、記事ではあくまで事実を淡々と述べていくことにしました。正直に言えばRec-SurやReanimatorは非常に好きなアーキタイプなので、下書きは相当なボリュームがあったのですが、事実のみに留めるため、相当な文章を削っています。

 おそらく、個人の感想や思い出を書けば、「そうだよね~」という共感を誘うこともできたと思いますが、あえてそれはせず、皆さんの想像に委ねています。その代わり、数をたくさん載せて、読者一人一人にどこかひとつでも引っかかってほしい、という願いを込めることにしました。

 掲載リスト数が多くなってしまい、私も添削さんも懸念するところではあったんですが、最終的に原案通りの数を掲載させていただきました。ありがたい限りです。後のデッキリスト打ち込みで地獄を見るわけですが。(詳しくは次項へ)

3.どこまで記事内容を実戦的にするか

 前提として、弱いリストは載せない、ということは決めていました。それをコピーしていざミドルスクールを開始、としたときに、他のデッキにボコボコにされないようなデッキを載せたかったのです。大会実績のあるデッキを掲載することで、それを解消しようとしました。

 しかし記事化が進むにつれ、「これが〇〇の優勝デッキです!」という紹介も避けたい、と思うようになりました。MTGAなどでは顕著ですが、「〇〇の記事で紹介されたデッキをコピーして優勝できました!」みたいな流れは、上記のミドルスクール設立の趣旨と対立すると感じたからです。

 そこで、「一から自分でデッキリストを組む」ことを、記事化の際の自らの制約にしました。大会実績はないけれど、元になっているのは大会実績のあるデッキです。そこからアーキタイプの特徴的な部分を抜き出し、強調できるようなデッキリストを作成しています。(晴れる屋さんの「デッキ作成」機能を使わせていただきました。ありがとうございます!)

 ミドルスクールにおいては、複数コンボのハイブリッドデッキや、特定の戦略を意識したカード選択が非常に多いフォーマット、というのが実情です。(例えば、スタイフルノートと青黒コントロール(サイカトグ)を合わせてみたり、リアニメイトとベリードアライブのハイブリッドだったり……)

 そうした情報はテキストで軽く触れるにとどめ、デッキリスト自体はシンプルな構築にしました。こうすることで、皆さんがデッキを考える余地を少しでも残したかったのです。

 ミドルスクールは「勝つ」ことも当然目的になりますが、「デッキを考える」「デッキ構築を工夫する」楽しさのウェイトは他フォーマットよりも大きいと感じています。その余白を残せたことは、記事としてよかったかな、と振り返っています。

 ちなみに、デッキリストを多く載せたかった(前述)ため、自分でこれを全部打ち込むこと作業が発生することに気付いた際は《絶望招来》しました。

4.こんなに文章長くていいのか

 気付いたら27,000字弱のボリュームになっていました。こんな長い記事だれが読むんだ。最盛期のROCK IN JAPANだって「2万字インタビュー」だぞ。あれだって病院の待ち時間に読み切れないことが何回もあったぞ。

 ――と思っていたんですが、「ヴィンテージの地平線」という名記事の分量を見て、不安がすべて吹き飛びました。

 やはりテキストは情報量だ、情報量が正義なんだ……! とよくわからない方向で感動した読者がここに一人いました。そしてその感動は他の人も感じているところだと(勝手に)思ったので、校正の際にテキストを削るのをやめました。(いつもは結構削っています。「パイオニア環境分析のつもり」の時とか)

 この文章量にめげもせず、何度も校正にお付き合いいただいた添削さんには頭が上がりません。全体の話から細かいところの誤字脱字まで、何度もチェックしてくれました。神か。現人神か。

■終わりに

 というわけで所感や雑感を交えながら、「こんなふうに書きました」という一連のレポートになります。ご笑納ください。

 ライター同士のコミュニティってないですよね。みんなポリシーも違うだろうし、そもそもライターって一匹狼なんだから当然なんですけど。ただ、たまにはこんなふうに「こんなことを考えながら書いてますよ」的な記事があってもいいのかな、と思って、認めてみました。

 ライターの皆さん、「自分はこんなことを考えて書いてますよ」というのがあれば、ぜひ情報交換しましょう! すべてはより良いテキスト文化のために。お暇があれば、よろしくお願いします。

 最後に:添削さんには様々な機会をいただき大変感謝しております、ありがとうございます。本稿を借りて日頃のお礼を申し上げます。


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とけいまわり
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