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【ゲーム感想】気持ちぐちゃぐちゃ♪『Mouthwashing』

こんにちは、Tokaです。
今日は『Mouthwashing』のはなしをします。
ローポリの精神的ホラーゲームです。3時間くらいでクリアできると思います。あらすじまで見て気になったら、先に遊んでから読んでね。

私ホラーゲーム苦手なはずなんだけどなんで触っちゃうかな
井森〇幸たすけてくれー



苦しみを祈る


ゲームは宇宙貨物船のコクピットから始まる。軌道上に小惑星が接近しているらしく、手動操作でそれを回避…するのかと思いきや、おもいっきり面舵!


コクピットを離れ通路を歩いていくが、何やら様子がおかしくなっていき…


場面は変わり衝突事故後、船員たちの会議シーンへ。どうやら船長が心中しようと試みて、宇宙船を衝突させたようだ。
副船長ジミー(視点)、ベテランエンジニアのスウォンジー、見習いエンジニアのダイスケ、新人看護師アーニャの4人は無事。船長のカーリーも重症ながら生きてはいるらしい。

イカれた生命力

残された物資は限られており、食料もあと数カ月しか持たない。この事態を打開するために、船員たちは自分たちが輸送している物資に望みをかける。

覚悟を決めた4人は倉庫に足を踏み入れるが、そこにあったのは大量の「マウスウォッシュ」だけだった。


※以下ネタバレを含む内容のためご注意下さい












「マウスウォッシュ」という立役者

ここで登場する“期待はずれの物資”としてのマウスウォッシュがいかに適任だったかを自分なりに掘り下げてみた。

① 人生において“ちょうどどうでもいいモノ”

こんな書き方をするとマウスウォッシュに携わっているひとから怒られそうだが、マウスウォッシュは人間が生きていく上での必需品ではない。いくら口内ケアが大事だとしても、食事や体温維持、疲労回復などと比べたら、生命活動の+αの部分でしかない。

生死に関わる極限状態ですがった最後の物資。身の危険を呈し、1年近くを費やして運んでいたものがたかだかマウスウォッシュだと知らされたら、自分の人生の価値を否定されたような気持ちにもなる。

② でもギリギリ使えなくもない

とはいえこの大量のマウスウォッシュ、考えようによっては有効利用できそうな気がする。マウスウォッシュにはアルコールが入っているのでたくさん飲めば酔って酒の代わりになる(酩酊して現実逃避できる)。ケガしたとき、消毒液として役立つかもしれない。液体だから、いざとなれば喉を潤すこともできる。糖分が入っているから栄養もありそう。

素面で考えれば、そんな使い方が適切でないことくらいわかる。でも船員たちはもうこれ以外に頼れるものがないのだ。
なにせ、一生かけても使い切れないほど馬鹿げた量のマウスウォッシュがあるのだから、無下にするのも損に思えてくる。
頼った先が破滅であることは明らかなのに、煽られ乗せられるしかない。

③ 皮肉

マウスウォッシュで気分爽快!!!

イヤな後味を残しません

親切丁寧絶望描写

Mouthwashingではストーリーを効果的に見せる為に、適確なゲーム内表現が選ばれている。
まずは一人称視点であること。これは他の一人称視点作品にも言えることだが、加害者の視点で物語を見せることで、サスペンス体験が強まるというもの。ケーキを切り分けるシーンと、カーリーの足を切断するシーンをリンクさせたのには鳥肌が立った。
また、本作においては、チャプターごとに視点の主が変わるという手法をとったおかげで、実はジミーが衝突事故を起こした、というトリックを物語終盤まで隠すことができた。

次に、ストーリーが時系列バラバラで進行していくオムニバス形式を採用したこと。船員たちが狂っていく衝突後の時間軸と、事件が起こった経緯を紐解く衝突前の時間軸が折り重なることで、ゲームプレイにもメリハリがついていた。合間に平穏な日常パートが挟まるので、のちの絶望描写が際立つ。
あとホラー苦手勢の目線で言うと、しんどいシーンが連続しないので、最後まで遊ぶことが出来たのかなと思った。いやふつうにしんどい

船員たち

ジミー

身勝手な船長に代わって船員たちを導き、最後には船長の心を救ってEnd…というゲームではなく、彼の横暴を彼の視点で体験するゲームだった。

この任務に就く以前から彼の精神はボロボロで、カーリーやその他成功していく人間へ嫉妬を強めていた。アーニャを襲ったのは、その劣等感を紛らわすためだっただろうか。

自分の価値を証明するため代理の船長として邁進するが、実際にはカーリーの立ち振る舞いを模倣することしかできなかった。ジミーが度々発していた「俺たちなら何とかできる」「俺が全部何とかする」といった言葉は、カーリーのものと似ている。しかし、本当になんとかできていたカーリーに対して、力不足のジミーは船を正しく導くことが出来なかった。

この体験はジミーのメンタルにトドメを刺したようで、その後の彼の行動は支離滅裂である。

報復めいたことをしたかと思えば、
後悔と謝罪
感謝、自身の正当化、容赦、決起、からの自サツ

まるで何の責任も果たせていない。

ジミーは間違いなく悪人で、諸悪の根源なのだが…。

カーリー

たぶん一番の被害者。
ジミーとは古くからの仲で、苦楽を共にしてきた。時の流れとともに、出世街道に乗ったカーリーとそうでないジミーとの差はどんどん開いていき、愛憎とも言える嫉妬が向けられるようになった。しかし、ジミーから向けられた感情とは裏腹に、彼もまた自身の人生の展望に不安を抱えていた。

何処にも繋がっていない梯子

彼の人格と言動について悪い描写はあまりなく、周りから優秀な評価を受けていたのも頷ける。だだ、強いていうなら、彼の鈍感さと八方美人さはこの事件を招いたきっかけの一つともいえる。
彼が口にしていた「俺たちなら何とかできる」はポジティブなことばである一方、具体的な方針は示せておらず、聞き手によっては無責任さを感じるだろう。
また、カーリーとジミーが持つお互いへの想いにはかなりのギャップがある。ジミーが自分に対して執着していたこともまるで気づいていなかったようだ。ジミーが拳銃を手にしたときに、彼は呆れたような笑い声を発する。それは、自分の人生を突然破壊してくれたジミーに向けられたものか。それとも、これほどの大きな歪みに気が付かなかった自分の愚かさへか。

結果、船員たち(特にジミー)と真に信頼を築くことが出来ず、解雇通告をきっかけに一人の感情が爆発してしまった。彼が責任ある船長の立場であるならば、もっと周りに目を配り、船員たちの心を支え、この悲惨な事件を未然に防がなければならなかった。
…と彼を責めるのは結果論が過ぎるし、あまりにも酷な話である。やっぱり劣悪な労働環境を提示したポニー運送が悪いよ。後はそれぞれの境遇とか諸々のかみ合わせが悪かった。最終的には一人だけ冷凍ポットに入れられて。仮に救助が来て生還したとしても、この状況をどう説明すればよいのか。こんな仕打ちねえだろ!可哀想に!

アーニャ

紅一点。そこまで不器用な人間でもなさそうだが、自分の本職(医療)に関しては、致命的なほどセンスがない。若さのわりに冷静な言動がとれて、精神のキャパシティも案外狭くなさそう。だがそれにも限度があるし、飽和すると爆発して大変なことになる(なった)タイプ。

というかこんな閉鎖空間で一年間女がひとりってなんか危なくない?と下品なことを考えてしまいましたが、ほらやっぱりそうなるじゃん!

やっぱり

これでよくジミーと平気で喋れてたね…。しかも自ら打ち明けるまで、誰にも気づいてもらえていなかった。打ち明けた相手のカーリーからも当たり障りのない中立な返答をされるだけで、より気持ちも追い込まれたはず。それに彼女もジミー同様、解雇後の進退に不安があった。そもそもポニー運送の仕事に就けたのも、結構ギリギリだったようだし。最初から最期まで彼女は孤独だった。
条件が違えばジミーより先に事を起こしていたかもしれない。

ダイスケ

本作唯一の清涼剤。
彼はいかにもな若者キャラという感じ。世間知らずで、対して仕事も出来ない。でも、悪意は微塵もないし、熱意と愛嬌を持ち合わせている、清らかな人間である。

彼の快男児っぷりに、ゲームプレイで擦り減った精神を助けてもらいました。作中の船員たちもまた、過酷な輸送任務で病みそうになるたび、軽佻で浅はかな彼の姿に救われたはず。

ダイスケはこの作品における“未来”や“希望”のアイコンだ。こんな八方塞がりの状況でも、彼が生きているだけで、まだ光が差しているような気さえしてくる。これは作中の船員にとっても、プレイヤーにとっても。
だからこそ彼の死は、我々を絶望の淵へ叩き落とした。バッドエンド確定演出。介錯したのが、ダイスケのことを一番よくわかっているスウォンジーなので、受け入れざるをえないのが余計に苦しい。

最初から希望なんてないとわかっていたはずなのに…。

みんなから愛されていた

スウォンジー

ダイスケと相反する、如何にもな中年キャラ。何かにつけて辛辣で、愚かな若者にほとほと呆れているが、面倒見が良いし、若者の未来を信じている。ツンデレおじさん。
誕生日ケーキの調理を催促してきたり、酔っ払って踊り出したり、ダイスケに劣らない愛嬌の持ち主。

彼には序盤から不穏に見えるような伏線が張られていたが、実際には周りを思えるただの善良な人格者だったというオチ。
作業室を立ち入り禁止にしたのは、冷凍ポットを適した人間に使わせるためだったし、ダクトを封鎖したのも、本当に危険だったから。途中から常に斧を携帯しているのをみて、「こいつ絶対終盤で襲い掛かってくるだろ…」とは予感していたが、それも正当な抵抗によるものだった。

彼が殺害される直前、思いのすべてをジミーにぶつける場面は、このゲームで最も重要なシーンと言っていい。
結婚して、守るものができて、そのためにこれまで自分をすり減らし生きてきた。泥のような日々の末、ようやく掴んだゴールは、しかし想像したほど大したものでもなくって。それでもスウォンジーは、自分の人生なんてこんなもんだと受け入れた。そして、バカで愚かな若者に、自分の手には届かなかった未来を託そうとした。

そんな自分の希望を、下らないエゴで滅茶苦茶にしてくれた、憶病で自己中なクソ野郎のことが許せなかった。

スウォンジーは「人生の価値と意味」を問うたこのゲームに対して、一つの回答を見せてくれる。
プレイヤー目線からジミーに言いたいこととかも、大体この人が代弁してくれている。


きっと君もそうなるだろう

本作の戦犯キャラ、ジミー。だが私はどうも彼のことを責めきることが出来ない。彼が内に秘めた苦悩は、外部から見た者の物差しで測れるものだろうか。
彼が発狂する皮切りとなったのは、カーリーからの解雇通告だが、彼が気を病んだそもそもの原因とその過程は、本編で詳細には扱われていない。過去によほど酷い仕打ちを受けたのかもしれないし、作中では善人に見えたカーリーに闇の部分を見た可能性だって考えられる。
もちろん彼が作中で見せた諸悪の数々は到底擁護できるものではない。自分がぐちゃぐちゃになったからと言って、他人をぐちゃぐちゃにしていいなんて道理は通らない。ただ私が言いたいのは、もし、彼と同じような状況に陥った時、誰しもが彼と同じ末路を辿るかもしれないということ。

私がこのゲームをプレイした後、有名配信者によるこのゲームの実況切り抜きを偶々目にした。動画自体はよかったのだけれど、気になったのは動画についたコメントたち。ジミーに対する罵詈雑言がそこそこな数あって、グッドも多く集めていることに胸が締め付けられた。
別にコンテンツの楽しみ方なんて人それぞれだし、フィクションなら尚更だとは思う。でも、架空の人物とはいえ、悪人とみなした相手に対し、強い言葉を浴びせることに抵抗がないこと。そして、受け取った作品に私怨を投げつける行為が、案外ポピュラーなこと。その事実を改めて突きつけられると、やはり悲しい気持ちになった。これは自論だけど、こういう他人事で無責任な暴力こそが、ジミーのような狂人を生み出す原因の一つだと思っている。
わたしたちはいつだって、ジミーにも、ポニー運送にもなれるのだ。





【オマケ】責任を果たせ≒約束を思い出して(?)

てかこのゲーム、いろんな部分が『SIGNALIS』と似てませんかぁ~!??

技術者レプリカのエルスターは、まどろみから目覚め、現実ではないようなレトロSFの世界で、失われたパートナーと失われた夢を探す。コズミックホラーとクラシックサバイバルホラーが混じり合う緊張感と残酷で悲しい体験の中で、恐ろしい秘密を発見し、幾つもの謎を解き、悪夢のようなクリーチャーの襲撃を振り切れ。

SIGNALIS | PLAYISM公式サイト

ねえ宇宙船が舞台のとことか発狂描写とかさ~無機質空間に有機的グロテスクを融合させたビジュとかぁ~??

そもそも私がMouthwashingを知ったのは、SIGNALIS開発者のプレイ報告を目にしたからだし、

Mouthwashing開発者の一人も、「SIGNALISには影響受けたよ!」と反応しているので、そらそうというハナシ。

なので、『Mouthwashing』刺さったひとは『SIGNALIS』もやれ~!!
決断的に買え~!!オータムセールで買え~!!!(たぶん安くなるよね?)いいゲームなんだたのむ~しんじてくれよたのむ~たのむよ~!ほんとうなんだたすけてくれよ~なあ。



さいごまで読んでくれてありがとう!!
またね~





オマケのオマケ

これなんかディ〇ニーランドとかのアトラクション入口みたいでワロタ。


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