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「原因→結果」ではない。「目的→結果」である。【嫌われる勇気】

【ローマ人の読書 vol.001】本:嫌われる勇気 著者:岸見一郎 古賀史健


 悩み多き青年とアドラー心理学の哲学者による話し合いを描いたこの本は、対人関係に悩む全ての人が読むべきものである。

哲学者が説く“教え”を実践するのはかんたんではないと思うが、対人関係での悩みを突き詰めて考えたとき、その全ての答え、考え方はここに存在する。


アドラー心理学の特徴的な考え方に「目的論」がある。あらゆる結果は、過去に起きた「原因」ではなく、今の「目的」によって起きているという考えだ。

例えば、引きこもりをしている男がいるとしよう。その場合、フロイト的なトラウマの考え、つまり「原因論」だと、過去に学校でいじめられたといった原因があるから、外に出るのが怖く、引きこもりという結果になった、と考える。しかしアドラーの「目的論」は逆で、「外に出たくないという目的があるから、不安という感情をつくり出して、引きこもっている」と考える。要するにその男にとって、外に出ず、家にいて親が生活を保証してくれた方が、何かと都合が良いので、その目的を満たすために、引きこもっているのだ。

もちろんいじめられた経験や災害といった出来事が、人格形成に及ぼす影響がゼロとは言えない。しかし重要なことは、それによって何かが決定されるわけでない、ということだ。アドラーはこう語る。「自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである」。つまり、人生とは自ら選択するもので、誰かに与えられるものではない。


 最後に、この本が本質的に伝えたい事である「自由」について。

アドラー心理学では「全ての悩みは対人関係の悩みである」としている。悩みを解決したいわれわれは、対人関係から解放されることを求めて生きており、その解放こそが「自由」であると考える。

ただこの世界で、一人で生きていくことは不可能だ。様々な人がいる中で、一緒に生活をしたり仕事をしたりする必要があるためだ。しかし、全ての人に好かれる、または嫌われずに生きようとしては「自由」を得ることはできない。なぜなら、人の考え方、感じ方、好き嫌いにはそれぞれあり、他者の期待を満たすように生きることや、自分の人生を他人任せにすることは、自分に嘘をつくことになるからだ。ではどうしたらいいのか。

人から嫌われること、嫌われることを恐れないことだ。つまり「自由」とは、他者から嫌われることであり、「自由」に生きるためには、嫌われる勇気が必要なのだ。

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