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トルコ旅行 Day4 その2 スルタンハンキャラバンサライでの思いがけない出会い

かつてシルクロードを往来する隊商たちの安息の地として栄えた「スルタンハンキャラバンサライ」。カッパドキアから次の目的地であるコンヤへ向かう途中、この歴史的建造物に立ち寄りました。

美しいトルコ国旗がかかるスルタンハンキャラバンサライ正面玄関

13世紀に建てられたこの建物は、単なる宿泊施設以上の存在でした。ヨーロッパとアジアを結ぶ交易路の要所として、多くの商人たちが行き交い、文化が交差する場所だったのです。
城塞のような堅牢な外観からは、セルジューク朝時代の卓越した建築技術を今に伝えています。

内部中庭部分

「キャラバン」とは砂漠を隊列を組んで進む商人たちの一団を指し、「サライ」はトルコ語で「宮殿」や「大邸宅」を意味するそうです。
この建物内に一歩足を踏み入れると、まるで時間が止まったかのような空間が広がっています。

展示されているカーペット

現在は博物館として整備され、館内ではトルコの伝統工芸であるカーペットが展示され、建物をそのまま活かしたコーヒーショップも営業しています。歴史的建造物のなかでまったりできるのはいいですね。

コーヒーショップ

建物の正面入口で、掲げられたエルドアン大統領と建国の父ムスタファ・ケマル・アタテュルクの写真を撮影していたときのことです。

正面入口の左にムスタファ・ケマル像、右にはエルドアン大統領像

二十歳にも満たないであろう現地の女性が、好奇心いっぱいの表情で近づいてきました。

「何を撮っているの?」

私が「ムスタファ」と言ったその時、彼女は目を輝かせ「ケマール!」と声を弾ませながら、茶目っ気のある笑顔でハイタッチを求めてきました。

その表情には「へぇ、このおじさん分かってるじゃん」という愉快な驚きと、自国の歴史を知る旅行者との出会いを楽しむような若々しい屈託のなさが混ざっていました。

ムスタファ・ケマル

古代からの交易路に建つこの歴史的建造物の前で、世代も国籍も超えた心の交流が自然に生まれる―それは私にとって思いがけない喜びでした。

思い切って「エルドアン大統領とムスタファ・ケマル、どちらが好きなの?」と尋ねてみると、彼女は迷うことなく「ムスタファ・ケマル!」と答えました。その瞬間の彼女の表情には、若さゆえの率直さと、母国の歴史への確かな誇りが垣間見えました。

土産物屋さんにもムスタファ・ケマルの肖像画

振り返ってみれば、街のあちこちのレストランや商店で、ムスタファ・ケマルの肖像画を目にしました。しかし、この偶然の出会いは、その光景の意味を深く理解させてくれました。建国の父への敬愛の念は、世代を超えて、こんなにも自然な形でトルコの人々の心に息づいているのだと。

シルクロードの面影が残るこの場所で、私は建物の歴史に加えて、現代に生きるトルコの若者の熱い心にも触れることができました。

時を超えて、人と人との出会いが紡ぎ出す物語は、これからもここで続いていくのでしょう。

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