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イギリスで作業療法士"アシスタント"、はじめました。 (4) 滝(イングリッシュ)修行


さて、荒修行のはじまりです。
いよいよここからイングリッシュという滝水が私の頭を打ち続けるのです。

留学経験もなく英文科でもなく旦那にくっついてウキウキと30代で英国に来たことが言い訳になるかどうかは知らないけれど、それでもこの荒行をしのげばなんとか英語で仕事ができるようになるなんて…。というか、もう多様性を受け入れるイギリスの懐の大きさに感謝しかない。


話は前回からの続きに戻って、
あのナゾすぎた初日の午前中は去り、次に私を待ち構えていたのは、容赦ないどとうのメール着信でありました。


ジェマという人が私の担当ラインマネージャーにあてられたらしい。ジェマはGemmaと書き、女性の名前。リモートワークでその当時はTeam (Microsoft)もカメラオフでやっていたので、 顔も人種も年齢も不明。勝手に中肉中背の西欧人ということにしておいた。ラインマネージャーという言葉も初めてだったが、すぐにジェマも作業療法士であることを知った。


そのジェマが、あの空っぽの不気味なオフィスを出てからそれ程時間は経っていないうちに、メールを23件も送ってきやがった。しかもファイル付重要内容がほとんど。

これを紙媒体でオフィスでやられたらどうよ。私のデスクは書類の山でとっくに雪崩を起こしとるわ、と中肉中背のこざっぱりした仕事のできる女ジェマ(仮)に腹を立てつつ、一個一個開けてやった。


三十分という時間は私の脳をオーバーヒートさせるのに十分だっただろう。

慣れないアルファベットがだんだんただの数字の羅列のように見えてくる。

しかも私の目はどうやら光が良く見えるようで、集中しようと目を開くと一瞬でカピカピに乾いてしまう。これはアトピー体質に良くあるらしいけれども、この日から私は(対策設備を整えるまで)時間単位でシワが増えていくのを感じるのであった。

かつては「スポンジのように吸収する」と評された飲み込みの速い私も、ラップトップの光線、メールで初めての業務内容を学ぶ、そしてアルファベットの羅列という無味乾燥地帯に一日一日水分を吸い取られ続けた。

読むのも書くのも、ただただ時間がかかる。

それでも最初の週はとりあえず目は乾きながらも送られてくるメールと、あとはシャドーイングというOTにくっついて評価訪問に行っていただけなので、就業時間に終われたし、夜は気晴らしに韓ドラを見るほど余裕があった。いや〜働いたあとのドラマは最高、とか思いながら。

それが2週間目から単独で評価に行くようになり、やってみると、こりゃ知らないことばかり。しかもそのうちに一日2件の訪問評価と記録、福祉用具、手すりの注文、住宅改造の申請などなど、とにかく初めての仕事内容に圧倒された。

こうなると、作業療法がどうのこうのという100キロ手前に英語をネイティブペースで読み書きするという課題に対し、英検準ニ級の私のオンボロスクーターが場違いの高速道に乗ってしまったかのような状態である。もう焦りに焦る。

そしてじわじわ気付く。アシスタントと言うが、どうやらこれは作業療法士業務と基本同じ業務をするようだ。後にまた説明するが、市役所勤務のOTアシスタントはマニュアル・ハンドリングと呼ばれる移乗機能評価とその器具を扱うことは出来ないが、その他は同じ業務とノルマが与えられるのだ。

こうしてこの日から、私の脳に、市役所業務のプレッシャーとイングリッシュの滝水がひたすら打ち続けるという荒修行が始まったのである。

つづく…


★ここで英国作業療法士のお給料の話を少し。

今年、2023年度の派遣OTA (OTアシスタント) の時給は標準 £15.5ポンド/hour (約2,700円/時給)で、SOTA (シニアアシスタント) はそれに少し上乗せ。OTだと£20~£40/hourくらいもらえるらしい。

正規採用の職員の給料はバンド制で、Bandは1から9までのランクがあり、ポジションによって給料が決められている。給料を上げたければ、上のポジションの就職試験を受けるのだが、経験年数と昇進に適した資格やコースを受けたことを証明しなければいけない。加えて職場にそのポジションの空きがなければそこには上がれないんだとか。

NHS (英国の国民保健サービスはNational Health Service) で働く作業療法士の給料はバンド5からスタートする。
Band 5 で年俸が約3万ポンド (523万円くらい)
Band 6 のスペシャリスト OT になると 約3万2千ポンド (550万円くらい)。
Band 7の更に上のスペシャリストになると4万から4万5千ポンドもらえる (700万円くらい)。

日本の作業療法士の平均初任給は約330万円という報告があるが、イギリスの物価の高さからするとそれ程差はないように思える。

スタバのTallアメリカーノの値段で比較すると少し分かる。

日本 ¥445
英国 ¥653 (£3.75)

イギリスのコーヒー高っ!!

お付き合いありがとうございました。

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