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一浮かび、一沈む。

ずっとタイミングを見計らっているような、そうでもないようなことがある。

イギリスで作業療法士アシスタントをやり始めて三年目に入った。しかしまだアシスタントのままだ。その気になればいつでも英語の試験を受けて、書類を出して、7,8万円くらいポーンとくれてやってHCPCというイギリスの医療技術者を管轄している機関に申し込むことができる。誰かの力を借りずには入手できなかった日本の養成校からの必要書類も、実はもう手取り寄せて手元に揃っている。そこで承認されれば作業療法士として働くことができる。時給は5ポンド上がる。トレーニングを受けてCDPとかいうポイント制度にも加担できる。のだが…

先週、職場で担当した40代半ばのややゴリ押しタイプの実習生にも言われた。ほとんど同じ業務をこなしているのに、なんでOT にならんのか、と。そうんだよな〜と言われるたびに毎回思う。そういう彼女は20年もNHS(英国の国民保険サービス)でOTアシスタントとして働いたところで、アプレンティスシップという見習い契約を見つけて、今は勤務を続けながら大学に4年間通っているんだそうだ。まあね、そういうお前さんだって20年じゃないですか。と、今頃になってちょっと言い返してみたりして。

明確な理由の一つは、やっぱり自分で自分の実力に有資格者としてゴーサインが出せないと言うことだと思っている。例えば実際に、緊急時にかけた電話越しの救急隊員の質問が一発でわからなかった、とか、日本語ではすぐわかる医学用語が英語ではかなりわからない状態なこととか。日本なら外部と電話ですぐやり取りするはずのところ、ガチのコミュニケーションを避けてメールにしてしまうとか。今日もオンライントレーニングをやっていて、やっぱり覚えていない言葉が多くてわずかにしぼんだ。

しかしそうかと思えば、数日前でいうと、職場のチームマネージャー(私より10歳くらい年下)から、私のうちから車で10分くらいの場所にある大学に作業療法学科が新設されて、その入学試験の面接に一日たずさわっていたという話を聞いて、ちゃんとOTになれば私にも可能性は広がるやないか、と意気揚々となることもある。学生に教えている自分を想像してみる。例えばトイレのレバーを引けなくて困っている高齢女性を目の前にして、何をどう評価する、とか、トイレのレバーの種類別に運動分析をするとか、そのためにどういう評価器具を使う、とか。ああ、脳が覚めるわ。
まあ、基本的に10年もブランクがあるのだから自分は彼女とは同じポジションにはいないというのは事実だけれども、でも、もし面接員をやれと言われたらできそうな気もするのだ。圧倒的に経験が少ないし、人に教えられる知識や技術も圧倒的に少ないのだけれども。ああ、このジレンマ。

そうこう、結局巡りめぐって眼の前に現れるのはやっぱり言語の壁なわけで。スローペースながらも幾度となく超えてきた一枚いちまいの壁。今またこうしてあらたな壁に近づいて…ああ、そうか。近づいたのか。前よりも近づいたからどう乗り越えようか考えているのか。まあ、またいろいろ乗り越えるための理由を積み上げながら、またしばらくは日常の鍛錬に励むんだろうけども。

ま、とりあえず、メガネをちゃんと合うのにしようかな。老眼のほう。

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