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ブロンズ、だけどダイアモンド級。


この写真のブロンズメダル、これまでにとった資格やもらった賞の中で一番嬉しかったかもしれない。

今日は、英国の教会音楽の話を少し。

これは、Royal School of Church Music という英国を拠点として国際的に活動している団体主催の教育プログラムで、ゴールド、シルバー、ブロンズ、と三段階あるうちの一番下のアワードだ。



ブロンズはそこまで難しい課題ではない。試験も、歌唱試験と口頭試験、試験官と一対一30分間で行われる。準備さえすれば10歳でも合格可能なレベルだ (しかしゴールドとなるとなんと一対一で90分)。

先月半ば、私たちをビビらせてくれたその日の試験管は、泣く子も黙りそうな、というほど強面ではないにしろ、世界を駆け回るRSCMのチーフエキザミナー、60歳くらいの落ち着きと品のあるおじさんだった。


(少し興味のある方に…。試験は大きく分けて4モジュールから成る: 歌唱、テクニカルコンテンツ、クワイヤーコンテンツ、聖書や教会について。
例えばテクニックとして視唱sight readingと呼ばれる試験では、四節の楽譜が渡され、試験管が最初にコードをピアノで弾いてくれる。15秒間の間にそれを読み、三度、四度と離れている音を正確に歌う。これが素人にはなかなか難しい。
他にも、試験管が弾いたメロディーを再現して歌う、というのもあるが、さすがベテランチーフだけあって、微妙に間違えそうな半音を随所に入れてきた。)


夏休み前から、クワイヤーの指導者から3ヶ月間特訓を得た後の試験だった。
私は歌唱課題はほぼ練習通りにできたものの、口頭試験では試験中に準備不足が随所発覚、最後の聖書や教会、信仰生活に関する質問では考えているうちに質問の内容を半分忘れ、喋っているうちに自分の回答も半ば忘れ、あとはもう情熱だけの押し相撲。試験後家に帰った私は、やりきった感半分、布団に潜ってしばらく気配を消し去っていたい気分半分だった。


4、5日後には試験結果が届いた。私は心底ビビっていた。今回うちの教会から試験を受けたのは子供含めて6人。自分だけパスしなかったらどうしよう、自分だけギリギリパスで他の人が高得点の評価だったらどうしよう、と思った。高得点の場合は、表彰の際にそれが会衆に向けてアナウンスされるのだ。一人だけ、残念っぽくなるじゃないか…(涙)。

電話をかけて結果を報告をしようとする私のクワイヤーの指導者に、ちょっと待って! 電話で今それを聞く気はないですよ!! と私は珍しくいい切った(メールでだが)。しかしどうにか騙されて聞いてみれば、6人そろってHighly Commendedという一番いい評価をもらえていた。あああああー、よかった。。。

送られてきた採点レポートを見てみると、あの、優しいのか堅物なのか分からなかったチーフエキザミナー、一問4点の中で一音だけミスしたところには、合っていた残りの音のための3点をくれているではないか。低音の不安定さや母音やth音の不明瞭さを指摘されていたのも含めて、なんてサポーティブな評点、と感動した。私の情熱的な信仰の語りについてもコメントをくれていた。大人の受験者を分かっている。試験は厳しかったけど、いい教育者だった、ありがとう。

試験から一ヶ月ほど経ち、市の中心にある大聖堂で、メダルの授与を兼ねた礼拝が持たれた。とにかく嬉しかった。別に対して難しい試験ではなかったのだが、私にとってとても意味のあることだったのだ。
一つは英語を読むのも苦手な私が、音符と文字をなんとか追々ここまで進歩したこと。もう一つは、私がクワイヤーとして歌っていることを教会や天に認めてもらえたような気がしたこと。
そしてメダルの下の部分に書かれているように、 Psallam spiritu et mente ー 霊と理解をもって歌う ー、という意味がどんなに大きくて、それが私たちにどんなに喜びや慈しみを与えてくれるか、このごろ分かってきたからだろう。本当に嬉しかった。


St. Phillip 大聖堂にて。
こんな格好で歌っている。
真ん中はビショップさん。


ということで、このブロンズメダルは私にとってはダイアモンドに匹敵する喜びだった、という話でした。

日本ではちょっと馴染みのない話でしたが、読んでくれてありがとう。皆さんにもたくさんの喜びが訪れますように。

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