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イギリスで作業療法士"アシスタント"、はじめました。 (7) OT業務紹介


さて、遅まきながらここでイギリスの某市役所勤務の作業療法士(OT)業務についておさらいしておこうかと思います。


市役所勤務のOTはイギリスの医療機関であるNHS勤務の作業療法とは雰囲気がかなり違うという噂です。ここでは出来るだけ正確な情報を紹介しようと思いますが、間違っていたらごめんなさい。


まずは教育課程から。

イギリスでOTとして働くには、大学の作業療法学科(3年)または修士課程(2年)を履修します。日本やその他の数カ国と違い、国家資格(国家試験)は不要。必要科目履修と学士号(Bachelor of Science/honors degree)により作業療法士としての専門的知識と技術を満たしていると認められます。


履修科目にはおよそ1000時間の実習も含まれます。実習はそれぞれの学年で実施されます。何人か学生を見ましたが、日本の実習生に比べるとみんなかなり余裕そうです…
ちなみにOTの需要は大きく就職率は100%だと言っていました。



- 就労について

イギリス(及び他国)において作業療法学科を修了した後、作業療法士として働くにはまずHCPCと呼ばれる医療技術者を総括している機関に登録しなくてはいけません。年間登録料金は£117.74(約21,300円)、2年ごとの監査があります。

外国で作業療法学科を履修した場合には国際登録ができますが、結果が出るまでに6-12ヶ月かかると言われています。 £539.65(約98,000円)の申込み料金と履修科目証明、英語試験などが必要です。



- 市役所OTについて

市役所勤務のOTには、SOT (シニア作業療法士)、OT、SOTA (シニア作業療法アシスタント)、OTA (作業療法アシスタント) がいます。

担当別OTチーム: 

- 小児
- 地域(訪問サービス)
- ブルーバッジ(障害者用駐車許可証/駐車スペース
- ハウジング(市営住宅用移動能力評価)
- クリニック(予約なしdrop-inサービス)
- セカンドリスポンス(電話サービス)
- マニュアルハンドリング(移乗器具)
- ビジュアルインペアメントチーム (視覚障害)
- EAB  (中間施設における評価)
- EICT (NHS職員による6週間の退院パック: 訪問リハビリ、看護、介護サービス)


サービス内容(基本無料提供):

- 作業療法評価および記録(電話、クリニック、自宅訪問、全てコンピュータ入力)

- 福祉用具の注文/提供(equipment)

- 手すりや簡単な住宅設備の注文/提供(minor adaptation)

- 住宅改造の推薦/会議/提供(major adaptation)


日本の作業療法士さんはもうお気づきでしょうが、イギリスの市役所勤務の作業療法士の介入は環境アプローチに徹底しています。
利用者に手技的なアプローチをすることはありません。
手技的介入をしたい場合は理学療法士に許可を取らなくてはいけないと言われています。
しかし病院勤務の作業療法士はROM訓練をしたりするそうですから、もう少し理学療法士と重複している部分もあるようです。


NHS (国営医療機関) 勤務のOTは、入院患者の評価を病院内および家庭訪問により行い、家に帰れるかの判断と、家に帰れるような介護サービスと福祉器具 (equipment) の手配を主に請け負っていると聞きました。Minor および Major adaptation は市役所が予算を負っているのか、紹介状がNHSのOTから市役所OTに送られてきます。


NHSのベッド数はいつでも全く余裕がないために何もかもフルスピードだそうで、市役所のOTとはかなり雰囲気が違うそうです。

中間施設(EAB)とリハビリテーション施設も少なからずありますが、病院OT業務とそれ程変わりはないようです。


就職先として、急性期のOTを希望する人は病院勤務を選び、地域で働きたい人は市役所勤務を選ぶようです。


私の住む市はイギリスで2番目に大きな都市で、人口は約1,144,900人。イギリスは日本の半分の人口なので、大都市と言っても日本でいうと山形県の人口に近い。ロンドンでも954万人程度。東京は3700万人もいるのかー、4倍じゃん、すごいなあ。

ちょうど今日の市役所研修で「ここはイギリスの中でも有望な若い都市なのよ」と言っていたので今ちょっと調べてみたところ、65歳以上は全体の13.2%(英国18.6%、日本29.8%)、年齢の中央値は34.3(英国40.5、日本48.4)でした。


その都市で去年は年間33,000件の作業療法サービスを提供したとの報告がありました。単純に割ると市民の2/100人の利用率です。この数字はあまりピンときませんが、一日単位で市役所の作業療法サービスを待っている人は800〜1000人位います。それをアシスタントを含めた現在90人のOTで対応しています。

訪問OTサービスは大体3ヶ月待ちです。日本では医師が作業療法処方を出しますが、イギリスでは本人でも誰でもOTサービスに申し込めます。


ちなみに理学療法サービスは1年から2年待ちはザラです。脳卒中や中枢神経系の疾患を持った人でリハビリセンターでの3か月から6ヶ月間のリハビリ後、自宅に帰され、理学療法難民になっている人を何人見たことか…(涙)そしてNHS(無料)から受けられる理学療法は良くて2週に一回ペース…(涙)

もちろんイギリスにも私営の病院があります。そこでは子供の理学療法訪問評価に1時間£180払ったという話を聞きました。相場では初回1時間料金で£80-140だそうです。


ちなみにちなみに、イギリスの税金も収入により異なりますが、例えば新人作業療法士初任給が3万ポンドとすると、税金(源泉徴収: Income tax, National Insurance)は給料の18%くらいです。日本では10%(源泉徴収: 所得税と住民税)。あ、でも日本でもその他の保険料と年金を加えると20%という数字になりました。


さて、イギリスの作業療法士、どんな印象でしょうか。


つづく…

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