イギリスで作業療法士"アシスタント"、はじめました。(8)市役所で働くということ
さて、一日一日、一ケースごとに経験値を上げられるのがこの仕事の良いところ。作業療法士"アシスタント"と言えど、毎日単独でしかも新患ばかりを受け持つのでとにかく広く浅く多くのことを学びます。
それに加えて、市役所勤務というのは意外に面白いことも分かってきました。
地方自治体という組織は、ハード面では、基本的に社会福祉、学校、住宅、計画、廃棄物収集などのサービスを提供する公的機関であります。
そしてそのソフト面では、私なりの解釈ではありますが、全市民を平等に扱い、サービスの安全性を保証している(べき)組織であると言えると思います。
そして、「職員も市民の一人である」と私達は主張し、その業務においても安全性と平等性が保証されることを強く求めています。イギリスには憲法はありませんが、特に医療福祉サービスや教育施設においては、規制や法によりこういった基準が強く支持、または監視されています。
ちなみに市役所職員は、サービス利用者を「Citizen」と呼ぶことがあります。この職についた始めの頃、私は友達に「私はこれからあんたをシチズンと呼ぶよ」とかいって面白がっていましたが。
具体的にどのようにこの基準を保てるよう運営しているかと言うと、勤務時間内に、作業療法専門外の内容の一般的な社会人としてのトレーニングが多く取り入れられています。オンラインで一人でやるコースも多いのですが、ちょくちょくオフィスに集まって講義形式のトレーニングも提供されます。
その様子を記録した日記があったので、今日はそれを紹介したいと思います。
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昨日、仕事場でトレーニングがあった。
メインテーマは EDI: Equality 平等, Diversity 多様性 and Inclusion 包括。これはイギリスでは基本中の基本のトレーニングなんだけど、これを30人くらいの参加者(作業療法士たち)でやるととても面白かった。
私の住むバーミンガムという市は移民が多くて多様性が進んでいる。数字で見ても白人のイギリス人はもはや半数を切っている。
性、人種、文化、言語、国籍、経済状況。私たちは毎日誰かの家に入っていって色々な人と色々な生活様式に関わっているので、それはもうちょっと話題にしたいような経験がごろごろ出てくる。
聞くところによると、バーミンガム市役所は、ヨーロッパで最大の規模らしい。それはカウンシラーと呼ばれる市会議員の数が多いということらしいのだが。どおりで、とにかくサービスは幅広く、送られてくるケース件数は半端ない。一日あたりのOTサービス待機者は800~1000人程いる。ここで仕事をしたことがあればどこの役場でもやっていける、と太鼓判を押してくれた仲間もいた。
対利用者にしてもそうだが、その会議室にあっても、マイノリティーでアシスタントでペーペー英語のアジア人をOTの中に快く入れてくれるイギリスの人々は本当に懐が深い、というか、多様性が進んでいる。イギリスというよりはバーミンガムがそういう都市なのかも知れないけれど。
EDIのトレーニングの内容もすごく良かったけれど、その議論の中でも私をinclusion して、他国で作業療法士教育を受け、他文化、他医療福祉制度の中でOTをしたことがある一人の人がイギリスのOTの中に入ってきたことをとても価値づけてくれたことがとても嬉しかったし、有り難かった。私はよくちょっと飛んだ意見をいうので、後でまたちょっと悔しい思いもしたんだけど。
いつもはリモートワークで同僚に会えなくて、気楽な面もありつつ、とても辛かったこともあった。
でも、ここまで来て、こんなチャンスを与えられて、やっぱりOTはいいなーと思えた昨日でした。
…と、実は私の立場 (派遣OTアシスタント) では本当は必要のないトレーニングだったことがあとから判明して、マネージャーにチクリとやられたオチつきだったけど、そんなことも吹き飛ばすくらいいい経験でした。スーパーラッキーミステイク!
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日記はここで終わりですが、この話はまだ続いていて、この研修が終わったあとに市役所全体で EDI チームが立ち上げられて、なんとあの時ヘンチクリンな発言をしたアジア人の私を一人のリーダーとしてチームに入れてくれたのです。
まあ、その総リーダーのカッコいいこと。若い女性だけれど、惚れ惚れするほど意見をまとめる力があります。
この EID チームの目指すところは、多様化の進んでいるバーミンガムという都市の特徴を武器に、イギリスまたは、世界の先を行く多様化社会のモデルになろう、といったところ。
現在は定期的にミーティングを持ち、EIDを組織として実行、サポートできる方法を探っています。これがどういうふうに立ち上げられていくのか、とても楽しみです。私は以前少し研究をかじったこともあり、こういうのに関わるとワクワクします。
以上、イギリスの市役所で働く醍醐味を紹介してみました。ご興味あれば幸いです。
つづく…
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