顧客と営業のパラダイムシフト リテール金融における顧客の態度変容、金融の民主化について
私は日々、多くの保険会社、保険代理店、プランナーさんと面談をしているのですが、その中で感じている変化を書いていきます。
コロナを機に、顧客と営業のライフスタイルは大きく変化しました。
それまでの営業といえば、電話して、訪問するという対面営業全盛期の最終期。強い営業力を持つ営業マンが群雄闊歩する世界でした。俺の足のヒラメ筋をみてくれ!みたいな感じでした。
そこにコロナがやってきます。リアルで人と会えない、会いづらい時代の到来です。前職の外資系生保で、毎年5位くらいにいた、訪問力の凄まじい大先輩の成績は、ランキング表上位から消えました…
訪問氷河期が訪れ、ティラノサウルスも絶滅です。
そんな中、TikTokやInstagram、YoutubeなどSNSを活用して、インフルエンサーになる営業も出てきました。
SNSの集客だけで、保険プランナーでTOT、外資系生保で3位まで上り詰める若手が登場しました。
営業マンのインフルエンサー化です。
SNSの力を駆使して、当人は制約の多い外資系生保から卒業し、保険代理店を起業し、SNSだけで優秀な保険プランナーを大量採用し、SNS経由で顧客からの保険相談も山のようにあり、オンラインサロンや様々な事業を展開しています。
こういった状況もあり、訪問力とオンライン力、どちらに将来性があるかは言わずもがなになってきました。
従来の外資系生保の世界は、ベテランの大先輩陣(TOTやCOT、MDRT終身会員)が、毎年上位ランクを寡占しており、時折、わずかな若手がそのグループに加わっていく仕組みでした。上位TOP50は、TOP1ページ目クラブと言われていました。
保険営業のベテランはマーケットを持っています。優良クライアント、会計事務所、コンサルタント、キーマン、経営者会合、人脈のある方などの縄張りをもっていて、そこに若手が入っていくのは参入障壁があります。先にタッチした人が優位となる、既得権益の世界です。
先輩の縄張りに近づこうものなら、@@@されてしまったりします。若手は、寡占市場の限られたマーケットのパイの隙間を開拓する、隙間産業です。アプローチすると、貴社の○○さんとお付き合いしていると言われるのが大半です。
そんなベテラン陣もテリトリー意識を持っていなかったのが、オンラインの世界です。そこに若手で情報発信力のある方々が参入していきました。
まるでトランプの大富豪(というゲーム)の革命のように、若手の彼らは上位ランカーになっていきました。下剋上の世界です。
そんな状況をみていて、保険営業の世界はもはや変わったと私は感じ、金融リテール業界を本気でDXすべく、オンラインマッチングプラットフォーム事業に参画しました。
転職をしてから、前職のお客さまから連絡を頂きました。
後任の人が、電話をしてきて、訪問しようとしてきて困ると言われました。
コロナをきっかけに、顧客のライフスタイルは、金融機関などの営業サイドが想定する以上に劇的に変化しています。金融機関よりも顧客の変化のスピードの方が圧倒的に速く、金融機関は追いつけていません。
顧客は電話や訪問といったアナログコミュニケーションを望んでいません。
それなのに、それをやり続けようとする営業サイドが未だに多いと感じます。いまだに紙ものも多く、変更手続書や控除証明書も紙です。
コロナを機に、保険会社や保険代理店は、オンライン面談システムやオンライン契約の導入をすすめましたが、それはセールスプロセスの過程の一部のIT化にすぎず、DXレベルのものはなかなかまだありません。
プランナーの方々との面談では、最近では新規の見込顧客との接点がなくなった。人と会えなくなったので営業ができず困っているという課題を日々聴いています。
面談や契約をオンライン化できても、初動の見込顧客の発見やその顧客とのコミュニケーションから面談に至るまでのプロセスをDX化できなければ、今の時代の変化に対応できているとはいえないと考えます。
保険営業の世界はフルコミッション営業という、基本給ゼロ(最低賃金法を除く)の完全歩合の世界が主で、マーケティングや見込顧客の発見などは個々のプランナーに託しているため、会社として見込顧客を確保することはしない仕組みです。営業に担当エリアや担当業界はありません。
リアルで人と会えない、会いづらいとなると、オンラインということになりますが、オンラインでの営業活動は、保険会社においては厳しい規制が敷かれています。(オンライン、SNSやメールなどでは営業NG)そのため、オンライン営業をしたい優秀な若手が、保険会社から保険代理店に流出するという現象が起きています。
昔は外資系生保には、業界トップクラスの優秀な人材が結集していましたが、昨今では優秀な若手人材が、保険代理店を設立したり、保険代理店に移ったり、多角的な事業展開や、保険に限らず別領域で起業をしたり、スタートアップなどにジョインするなどの動きが出てきています。外資系生保では、若手トップランカーの多くが会社を卒業しています。チャンピオンや数番手、数十番手台の方々です。営業のトップランカー陣は会社の生産性の8割をたたき出したり、1人で数十人分ほどの成績を出している貴重な存在です。そんな人材が流出しているのです。
優秀な若手人材は外部でも引く手あまたですが、そうでない人材は、動くことができずに会社に留まっているように思います。ある程度以上の年齢の方は、莫大な退職金やリニューアルコミッション(次年度以降コミッション)の帯があるので、辞めるにやめられないという方もいます。外資系生保のトップクラスの方は、あらゆる職業の中で最もハードな部類の環境で、長年結果を出し続けているので、別の新しいことをされても圧倒的な結果がだせると思いますので、そのまま残り続けるのはある意味でもったいないなと思っています。
保険会社はそのような状況を敏感に察知し、時代の変化に対応する必要に迫られていますが、既得権益の寡占市場をもっている大企業であることから、とある本社幹部の中は、新しいことはやりたくない、このまま事なかれで、退職金をもらって引退したいと言われている方もいました。何か新しいことにチャレンジして、失敗して責任をとらされたくないから、穏便にいきたいということなのでしょう。大企業病です。そういった空気を払拭できる強力なリーダーが現れると良いなと願っています。時代の急速な変化に生き残れるのは、既存の強者ではなく、変化に対応できる者です。はるか昔、地球に隕石が衝突した際に、恐竜がどうなったかを考えるフェーズにきています。
顧客は、もはや電話や訪問を受け入れず、オンラインコミュニケーションを望んでおり、マッチングプラットフォームなどでのチャットやメッセージによるコネクトと、その先のZoom面談が常識化しつつあります。
保険業界は今までも大きな変化がありました。1社直販の訪問営業を保険営業1.0とすると、保険代理店による複数の保険会社から商品選択ができたり、保険ショップに立ち寄り、気軽に相談できる世界が2.0、これからはオンライン上で保険プランナーを選ぶという3.0の世界になりつつあります。
保険営業3.0の世界では、プランナーがオンライン上でマッチングプラットフォーム上で見込顧客にアプローチやコミュニケーションをし、情報発信をし、オンラインセミナーを展開したり、ブランディングページを持ち、顧客からの評価点やコメントを開示していく時代になりつつあります。
我々がAmazonでモノを買う、Tabelogでレストランを選ぶ際には、評価点や口コミを重視するようになっています。Tabelogのランキングが落ちたことで、飲食店の業績が落ち、裁判まで起こっている昨今です。これからのプランナーは、オンラインでのスコアリングも重視されるようになっていくでしょう。
今までの世界では、プランナーの外部評価はなかなかわかりませんでした。せいぜい紹介者のリコメンドがあるくらいで、その評価もバイアスがかかっているかもしれません。例えば税理士からの紹介であれば、それは税理士がコミッションを得るためのビジネスであったりする可能性もあります。
顧客がプランナーの、多くの第三者評価をみることができれば、それは信用スコアです。顧客にはそういった情報を知る権利があると考えます。金融の民主化です。
営業1.0時代には、顧客と金融機関に情報非対称性があり、金融機関優位の時代でした。顧客は必ずしもベストではない保険に加入せざるを得なかったのです。1社の保険会社の限られた商品から選ぶことしかできませんでした。それが2.0になり、顧客はベストな保険商品を選べるようになりました。そして3.0で、顧客は自分にとってベストマッチなプランナーを選ぶことができるようになったのです。保険商品は直販であろうが、代理店であろうが、webダイレクトであろうが、全てが定価販売のみです。どこで買っても、定価なのですから、優秀で相性が良い担当者(プランナー)が付いていた方が価値があります。
今までの1.0・2.0の世界では、顧客はプランナーを選ぶことができませんでした。たまたま紹介された人、直接知り合った人、保険ショップのカウンターにいた人、オンラインダイレクトなら担当者なしであったわけです。人間には相性がありますので、今までの世界では相性が合わなければお互い時間の無駄(成約に至らない)になっていました。それが、3.0の世界では顧客が優位に立ち、プランナーの選択権を得られるようになりました。現状では、顧客の引継ぎも、金融機関が後任を決めており、そこに顧客の意向はない状況です。
他業界に目を向けてみると、銀行などの金融リテール店舗は、昔は駅前のビルの1階にありましたが、今やビルの数階に移りつつあります。ドコモショップは2025年までの700店舗の閉鎖を決めています。顧客のオンライン化を察知して、リテール店舗ビジネスは縮小の一途です。
保険以外の大きな買い物というと、不動産や自動車があげられます。不動産業界はVR内覧や新築マンションもオンライン説明会、クルマ業界はテスラなどはオンライン注文です。家や車というモノがあるものでさえ、オンライン化しているのに、いまだにリアルにこだわる無形財の金融業界。むしろ金融商品の方がオンラインに向いているわけです。
リアルで会った保険プランナーがカバンから、「この金融商品、観て触れて感じてください。どうですかこのフォルム、輝き、カッコイイですよね!おひとついかがでしょう。ご友人から、○○さんの保険って、すごくカッコイイねって褒められますよ。」なーんてならないわけです。せいぜい出てくるのは設計書です。(ちなみにモノの営業でもこのトークはいただけませんが、わかりやすくするために、あえて書きました。)
男女の恋愛だって、昔はお世話好きマダムが、男女をお見合いでリアルマッチングさせていましたが、昨今ではマッチングアプリでお付き合いや結婚する人が増えていて、当たり前の世界になっているようです。
転職の世界も、ビズリーチなどが登場し、転職を考えている人が自分の情報をアップすると、プラットフォーム上にヘッドハンターなどからアドバイスやおすすめの転職先情報が送られてくる時代です。
今はであらゆる業界でマッチングプラットフォームが誕生しています。ここでポイントになるのは、完全な自動システムではなく、テクノロジーが人と人の最適な出会いを支援していることです。人が無機質なシステムにつながれるわけではないのです。
人間は何かを選ぶ、決断する時に、やはりプロからのアドバイスや背中を押してほしいのです。自身で情報を調べても膨大な検索結果から何を信じれば良いかわからない。インフルエンサーの考えも自身に合っているとは限らない、特に金融領域は自分ではなかなか決められない、そもそも自身の潜在的な課題や問題に気付いていない、そんな時に、お金の相談ができるオンラインマッチングプラットフォーム上に、ニックネームで自身の年収や貯蓄や悩みなどの詳細を開示し、プロからのアドバイスで自身の問題に気付くことができ、複数のプランナーからフィットする方を選ぶ事ができ、その解決先が提示されるプラットフォームが、今求められていると考えます。
ユーザーやプランナーにとって、より良い世界が今、始まりつつあります。
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