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「インハウスとクライアントワークの景色からみるデザインキャリアの可能性」 に参加して、デザイナーのキャリアについて考えた

こんにちは。ミドル層デザイナーの@toi_toi_yです。
ミドルといえばキャリアですよね(???)

豪華デザイナー陣がインハウスとクライアントワークそれぞれの視点でデザイナーのキャリアについてトークするという自分にとってドンピシャなイベントがあったので行ってきました。

30代のミドル層デザイナーで、クライアントワークからインハウスへ転職した自分にとってこれは絶対に参考になるでしょ、と確信。

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プレイドオフィスの芝生エリア

登壇者

以下はイベントのページから引用

平野 友規
株式会社ユーザベース(SPEEDA事業) / デザイナー
株式会社デスケル / リサーチャー

2018年デンマークのDesign school KoldingのLab for social designで客員研究員を経て、2019年東京藝術大学大学院デザイン専攻を修了。株式会社ユーザベースのSPEEDA事業でリードデザイナーとデザインマネージャー、株式会社デスケルの社外取締役を兼務。


ミナベトモミ
株式会社DONGURI / CEO

事業/組織デザインのコンサルタントして、ミドルベンチャー/スタートアップ中心に従事。DONGURI CEO / BizReach CDO室 / Mimicry design / inquire などに現在参画。


鈴木 健一
株式会社プレイド / デザイナー
Standard Inc. / Founder, Designer

2006年からFICC Inc.にてブランドサイトのWebデザイン/ディレクション業務に従事した後、2014年にアプリやサービスのUXデザインを専門に行うStandard Inc.を設立。現在はCXプラットフォームKARTEを提供するPLAIDで、新規プロダクトの立ち上げや既存機能のUI改善をしています。元ケーキ職人。

モデレーター

竹田 哲也
株式会社アトラエ / デザイナー

オプト、グッドパッチを経て、2018年11月にPeople Techのアトラエにジョイン。これまでのPMやUXデザインや組織デザインの経験を活かし、組織改善プラットフォーム「wevox」のオンライン・オフライン問わずのUXデザインを中心に従事しています。

LT1: インハウスとクライアントワークの景色

平野 友規
株式会社ユーザベース(SPEEDA事業) / デザイナー

クラインアントワークとインハウスの仕事をそれぞれこなす平野さんによる、実践と気づきのお話。

まずはキャリアについて。クライアントワークの会社に就職後、会社を立ち上げ、その後大学院で学び直し、2019年から株式会社ユーザーベースでインハウスに。

今回の登壇者の方に共通しているのですが、キャリアがユニークですよね。日本っぽくないというか一直線ではないというか。これもちゃんとそれぞれのタイミングで自らのキャリアを俯瞰して考えているからなのかもしれません。

なぜインハウスに「も」参画したのか?

- どうしても超えられない事業会社側の「意思決定」の深い溝にぶつかった。
- デザイナーはどのように「カルチャー」をつくるのかが問われる世界になるので、インハウスで当事者として体験したかった。

超えられない意思決定の壁...! 元々クライアントワークをやっていた(今も副業でやってるけど)自分にとってものすごく納得できる理由でした。
自分の仕事が平野さんのようなレベルの高い話ではないのは自覚しているのですが、もっと深く関わりたい!と願った時にどうしても越えられない壁があるのはその通りな気がします。

マネジメントとプレイヤーを分けるのか?

プレイングマネージャーとして頑張る!

製作する時間を確保するために出社しない日を設けているというのがユニークでした。マネージャーは打ち合わせで予定が埋まり切っているイメージがありますが、プレイングマネージャーとしてやっていくのは時間の使い方にも相応の工夫がいるようです。

インハウスとクライアントワークの景色
クライアントワークでも「インハウス」のように実践できるし、インハウスでも「クライアントワーク」のように実践できるとのこと。

それぞれの特性を意識して仕事をすると上手くいきやすい

どちらも経験した方が生存戦略の幅が広がるそうです。

クラアントワークをやってきた平野さんがインハウスでつまづいた落とし穴

「で、平野さんはどう思うの? どうしたいの?」
"クライアントワークに慣れていると選んでもらう癖がついてしまう"

この点もクライアントワークからインハウスに移った自分にとって、共感できるポイントでした。無意識に発注側、受託側のように分けてしまって、選んでもらうつもりになってしまうんですよね。当事者意識を持てるかどうかはどれだけその事業に共感できて、情熱を持っているかというところも関わっているかもしれません。

LT2: 事業会社とクライアントワーク会社の「組織デザイン」

ミナベトモミ
株式会社DONGURI / CEO

ご自身の専門である組織デザインとデザイナーのキャリアとの関係についてのお話です。

組織構造とデザイナーの成長の関係が完全に整理されていて、これ500円で聞けるのかお得すぎる、という気持ちになりました。

組織デザインとは?
ミナベさんのキャリアもユニークで波乱万丈なものでした。家電メーカーに入り何でも屋として頑張ったものの、組織の色々によって1年ぐらいで辞めフリーに開発屋に。そこで色んなベンチャーに入りこむ中で、次第に組織の課題をWHYから解決するうちに組織コンサルになっていたそうです。

組織成長の壁はコミュニケーションパス
人数に比例してコミュニケーションパスは「掛け算」で増え続ける
パスがワークしなければ、透明性と裁量権が失われ、どんな組織も崩壊する
組織デザインとは下記2点の設計を行うこと
分業の設計(コミュニケーションパスの負荷軽減)と
調整の設計(コミュニケーションパスの質向上)

分業の設計
まず基本となる分業の考え方があり、これは管理的な垂直(階層)分業とセクションごとに最適化される水平(並行)分業があるそうです。

こうした分業の形態は基本的な4種類の組織構造に分けられ、それぞれの組織構造によって身につきやすいスキルが変わってくるのだそう。

機能別組織
多くのクライアントワークはこの形。縦の力学が強い。
管理が楽で専業デザインスキルが身につきやすい
事業部制組織
ミドル規模の事業会社はこの形が多い。横の力学が強い。
チーム開発をリードする力が身につきやすい
マトリクス型組織
1000人越える組織。全社最適視点が必要になる。
UX/ブランド/人事など。全社最適で横断組織をつくる。
縦横両方の力学が働くので難しい。
デザインを越境して事業を牽引する力が身につきやすい。
ホラクラシー組織
自己裁量が基本。100人未満の企業に多い。
常に形態変化するので高い構造化能力がいる
圧倒的Willとコミュ力。巻き込む力が既にあるデザイナーに向く。

デザイナーのスキルと組織構造の関係に目から鱗が落ちる気持ちでした。
最初の平野さんにLTに「インハウス、クライアントワークどちらも経験していると生存戦略が広がる」という言葉がありましたが、デザイナーが縦横の組織の力学を理解できるからなのかもしれません。

調整の設計
調整のパス設計も組織の形により変わってくるそうです。
どう行ったコミュニケーションパスが発生するのかはスライドの内容を見ていただくとして、ざっくりと以下のような感じです。

機能別組織のクライアントワーク企業
業務を提供できれば粗利が産まれるので
レビューやスキル育成の特化したパス内容になる
事業別組織の事業会社
チーム協働が必要になる
業務だけではなくてチーム資産形成視点のパスが増える
マトリクス組織の事業会社
全方位と接合パスが必要になり横断マネジメントする力がデザイナーに求められる

組織形態別にデザインキャリアに特徴があるので、組織の形をみてJOINする先を選ぶと良い、というお話でした。

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自分にとっては組織の変化と求められるスキルが整理できたLTでした。
いま自分が働いている組織は徐々に1000人規模の組織に近づいていて、2と3の間にいる印象です。プロダクト以外のところに目を向けて横断を考えた時に、急に難易度が高く感じることが多かったのですが、今回こうやって整理されたお話を聞いて腑に落ちるところがありました。

マトリクス組織への移行は分業・調整のどちらの設計においても難易度が高そうです。ただ非常に難しいけど、乗り越えた時のメリットも大きいのだとミナベさんはおっしゃっていました。
難しいけれどチャレンジして行きたいという気持ちも高まったので、このLTを聞けてよかったです。

LT3: 視座と対象から紐解くデザインキャリア

鈴木 健一
株式会社プレイド / デザイナー
Standard Inc. / Founder, Designer

プレイドの鈴木さんによる、デザインキャリアを視座と対象で整理するお話。

視座と対象でマトリクスで整理する

視座 = 自分の置かれている立場、クライアントワークとインハウス
対象 = デザインする対象 マーケティング、プロダクト、組織

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こうしてマトリクスで整理することで、自分のデザインキャリアを見える化できるそう。
経験の多い領域や少ない領域を可視化したり、自分が今いる領域から目指したい領域に向けて順番を考えて見たり、ビジュアルでわかり安く整理できそうです。

さらにマトリクスの切り口を変えればいろんな視点で自分のデザインキャリアを考える助けになりそうでした。

色々経験したけどこれからどうしよう、というミドル層のデザイナーにはもちろん、キャリアの浅いデザイナーにとっても自分行きたい領域や方向を整理してキャリアプランを描くのに役立つかもしれないなーと感じました。

ところでどの登壇者の方もそうなのですが、自身の考え方や志向性に対する抽象化や構造化が本当に上手くて、これが出来るデザイナーのメタスキル...!という感じです。

パネルディスカッション

質問と回答については同じnote枠で参加されたデザインメモのスズキアユミさんのnoteにバッチリまとめられているのでそちらをご参照ください(すみません)

代わりに印象に残った話と感想を書きます。

飲み会スキル超大事!

- クライアントワークは相手の組織構造に引っ張られちゃうのでは? 
という質問で盛り上がった一言。

これだけ見ると昭和か!となりそうなんですけど(本人たちもネタにしていたw)、要は合意形成のためのコミュニケーションはめっちゃ大事だぞ、という話でした。

これってクライアントワークに限らない話だなぁ、と自分は聞いていました。事業会社でも組織がある程度大きくなると合意形成のプロセスは複雑になるので、社内でもこうした相手の懐に飛び込むコミュニケーションが必要になってくる気がします。
ちなみに自分はお酒がダメなのでランチに行こうと思います。

MPが切れているからまず休んだ方がいい

- 明日から出来る行動は?
という質問に対するミナベさんの回答で出てきたものです。
「自分にこれは向いていないかもしれない...」と悩む若者に対して「スキルと特性は別、なんどもやったら出来るようになるものはスキル。それはスキルか特性なのか切り分けよう」とアドバイスした上で、「出来ないのは単にMPが切れているだけかもしれないから、まずは休もう」と。

個人的な感想なのですが、デザイナーみたいなスキルを売りにしてる仕事って気づくとMP切れがちなんですよね。日々「将来食い詰めるかもしれない...」とか「このままで大丈夫なんだろうか...」みたいな不安を漠然を抱えていて、気づくとチャレンジする元気が失われている、みたいな。

これは自分もMPが切れているだけなのかもしれない、という自覚を促してくれると同時に、後輩やチームメンバーもMPが切れているだけなのかもしれないぞ、という気付きを与えてくれます。そういう時に「この人には向いてないのかも...」と無下に判断するのでなく「まずは休もう!」と言えるのは大事なことである気がしました。

まとめ

クライアントワーク、インハウス、それぞれの視点でデザイナーのキャリアというものを俯瞰することができる最高に勉強になる会でした。

登壇者全員に共通するのは、自分のキャリアについてきちんと構造化して分析をしているということ。
自分のキャリアを考えていくにはきちんと分析して俯瞰する視点が重要なのだと気付かされる会でした。
この会で得た視点を元に自分のいる組織とデザイナーキャリアについてじっくり考えを巡らせてみたいと思います。

登壇者の方々、企画運営してくださった方々、素晴らしい機会をありがとうございました!

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