
8月の受賞者一覧と選者の講評
選者:水源純(@ju_min) 以下、敬称略
今回の応募作品一覧はこちら

グランプリ受賞者
・FumiFumi (@katakatahage)

選者の評
線香花火の火玉が浮かぶ。
「じゅっ」は、バケツに張った水に、火玉があえなく落下したときのような音。冷熱が逆(熱したフライパンに水滴が落ちるときなど)でも似た音がするが、「しずむ」からも前者で読みたい。女の冷たいからだに湎(しず)む男の音である。
一読、惹きつけられる歌だった。読み返せば、俳句と同じたった十七音の歌である。こんなに少ない言葉から、こんなにも大きな歌ができる。何度も読みたい、読み返したくなる歌だった。
佳作 受賞者
・泊木空(@tomarigi_sora)

選者の評
「あなた」を思い、五行歌を書こうとしている。足りないとも言える。冗長とも言える。多分どちらも正解である。そう思って読み進めると、新たな正解を四、五行目で明示する。これが鮮やかだった。「~ようで」の繰り返しは技巧的であるものの、技巧に落ちれば読み手は飽きる。技巧に頼り過ぎない仕上がりになっているのは、作者の思いが歌の芯になっているから。
五行使って結局、既に告げた言葉、たった一言に立ち返る。恋する人のあるある、でもある。
・彩風(@AYAKAZE14)

選者の評
「君」は、はずさずに決めたいのだ。それが格好いいと思っている。しかし、ちょっと失敗したときのほうが案外、その人らしさが出て良かったりする。さらには失敗しないように頑張っている姿に、魅力を存分に感じるものだ。と、私の平たい言葉で説明しては勿体ないほど、やわらかで自然な言葉で詠われた秀歌である。
・ねこた(@nyaachuk61)

選者の評
子育てのなかで、子の成長こそが喜びの瞬間である。反するが、成長に一抹のさびしさをおぼえるのも親心である。誕生日前夜、「1歳」という二度と来ない日を大事に抱きしめる。覚えたての言葉のこだまごと。やわらかい母性を感じる歌だ。
母性は女性特有のものではない。父親のなかの母性もこうして自然に詠われていくことを願う。その逆もまた。
いいね賞 受賞者
・もちゅ୨୧⑅*.(@IUwa51)

今月の選者の総評
実のところ、佳作として発表したい作品は毎回十首以上あります。直接聞いていませんが、奇数月の選者たちも同じことを思ってきたでしょう。今回もそうでした。岡本浩士さんの「胡瓜のジェット機・茄子の軽バン」、械冬弱虫さんの「ざりざり」、ステッセル寅太郎さんの心の持ち方、チロさんの「百日紅のパッション」、めるりさんの好きの本質を突くようなところ、井口さんのさよならの代わりに得たもの…。心を掴んでくる歌に、あちこちを引っ張られながら読んでいた感覚です。
ほかにも海、花火、高校野球、夏は鮮やかな歌材が多く、読んでいて楽しい印象でした。
五行歌は短い詩形なので、一首のなかにあまり多くの素材を使い過ぎると器からあふれている感じがしてしまいます。そういった意味では、恵遊さんの「光も風も蝉も蝶も」は成功している作りだと思いました。
今回受賞された方のお歌は、月刊『五行歌』10月号でも受賞発表されます。
雑誌を購入して読みたいという方は下記URLからご購入をお申込み下さい。
次回・9月募集について
次回、9月の募集は9月1日の0:00にツイートされます。
募集要項は以下です。