【青森の味わい】珍味フジツボ 養殖へ着々
青森県栽培漁業振興協会と地元研究者らが、珍味・ミネフジツボの養殖技術開発に取り組んでいる。最大の障壁だった種苗生産が実用化レベルに達し、関係者は「漁師の収入増、食資源を通した新たな観光誘客につながる」と期待を寄せる。
8月中旬、同県階上町にある協会施設の水槽内で、ホタテの貝殻に付着した稚ミネフジツボが元気に育っていた。「2013年に研究が始まり、ここまで10年かかった」。協会の松橋聡専門員(64)は感慨深げに話した。
ミネフジツボは同じ甲殻類のカニに似た濃厚な味わいが特徴。県内では高級食材として取引されるが、養殖には多くのハードルがあった。まず餌となるプランクトンの選定。松橋さんは餌に関する膨大なデータを収集し、カニ養殖に関する記事からヒントを得て22年度、「タラシオシラ」が最適と突き止めた。
フジツボが養殖板に密集して張り付く習性に対しては、八戸学院大(八戸市)の研究者や漁業資材会社が、板にシリコンを塗布して防ぐ対策を開発した。今後、県内で養殖の実証実験を行う。松橋さんは「フジツボ養殖が普及すれば漁師の所得を補う存在になる。安定生産により、多くの人に味わってもらえる」と将来を描く。(東奥日報社)