【本文公開】『バスケセンスが身につく88の発想』◆special issue
NBAで過去3シーズン連続で「年間トリプルダブル」を達成しているラッセル・ウエストブルックが、ヒューストン・ロケッツにトレードで移籍することが報道されました。part3で紹介したロケッツの顔、ジェームズ・ハーデンとは、以前オクラホマシティ・サンダーでチームメイトでした。再びコンビ復活。どのようなケミストリーを見せてくれるのか、今から新シーズンが楽しみです。
ということで、ご好評いただいている『バスケセンスが身につく88の発想』の本文公開、特別回として「ラッセル・ウエストブルック」の本文を公開いたします。
本書『バスケセンスが身につく88の発想』は、初心者を含めたすべてのバスケットボールプレーヤーやコーチ、保護者、そして観戦者(ファン)までを対象に、「制限」から解放された「自由」な発想をするためのヒントとして、世界のトップ選手が見せる“センスあふれるプレー”を解説。計88の思考&実践方法を紹介していきます。
読み終えたあと、読者の皆さんが「制限にとらわれることなく自由な発想をしたい」「制限にとらわれずに自由な発想をさせたい」と思ってもらえれば幸いです。
【イーブンナンバーを攻め切る】
——ラッセル・ウエストブルック
イーブンナンバーは待て
ファストブレイクにおいて、2on1や3on2などといったオフェンス側の人数がディフェンス側を上回っているアウトナンバーの状況が生じた場合、数的有利なまま攻めようと早くショットに持ち込もうとします。一方で、「イーブンナンバーは待て」という言葉を耳にすることがあります。トランジションの場面において2on2や3on3などのイーブンナンバーの状況は、攻撃を一旦止め、5on5の状況を作ってから再度攻撃を始めようというものです。
3on3を攻め切る
2012年に開催されたロンドン五輪のアメリカ代表とフランス代表の一戦。ディフェンスリバウンドをバックコートのハイポスト付近で獲得したウエストブルックは、フロントコートへとドリブルを開始し、左ウイングをケビン・デュラントが、右ウイングをデロン・ウィリアムスが駆け上がりました。ディフェンス側も3人のプレーヤーが戻り、3on3のイーブンナンバーになりました。そこでウエストブルックは5on5の状況になるのを待たず、左エルボーでデュラントに手渡しパス。ボールを獲得した勢いのままリングに向かったデュラントに対して、フランス代表のディフェンスはファウルをすることしかできませんでした。
オフェンスは少ない人数で攻め切ったほうが有利
2on2や3on3のイーブンナンバーの状態は、3on2や2on1のアウトナンバーの状態と比較して攻めにくいといえます。しかし5on5と比べれば、2on2や3on3の状態ではオフェンスのプレーヤーたちが使えるスペースが大きく存在します。逆にいえば、ディフェンス側が埋めなくてはならないスペースは広大ということです。5on5では、5人で協力してスペースを作り出さなくてはならなかったのが、3on3、ましてや2on2では自然とスペースが用意されています。ですから、2on2や3on3のイーブンナンバーとはいえ、オフェンス側にとっては攻めやすく、ディフェンス側にとっては守りにくいものといえるのです。もちろん、4人目、5人目とディフェンス側のチームのプレーヤーが戻ってくるので、短時間のあいだにショットまで持ち込む必要がありますが、スペースが用意されている分、複雑なオフェンスは必要なし。
ウエストブルックは3on3の有利な機会を逃さずに、スローダウンすることなくドリブルプッシュを継続し、デュラントがこれに呼応してショットまで持ち込んだのです。
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読んでいただき、ありがとうございました。次回の更新を楽しみにお待ちください。
88のプレーを解説する本書籍では、普段見過ごしがちなプレーや気にも留めないような仕草にも焦点を当て、掘り下げることで、その裏側に隠された意味や効果を解説しております。気になった方ぜひ、本書をお手に取っていただければと思います。
part1 【ジャンプ後のオプションを持つ】——マイケル・ジョーダン
part2 【ドリブルのリズムを変える】——比江島慎
part3 【テクニックの目的を新たに見いだす】——ジェームズ・ハーデン
part4 【パスコースを開通させる】——マジック・ジョンソン
special issue【イーブンナンバーを攻め切る】——ラッセル・ウエストブルック
part5【軽く楽に放てる感覚】——ステフィン・カリー
part6【得意なプレーを伸ばす】——ニック・ファジーカス
part7 【上半身を下半身で調整してショット】——コービー・ブライアント
part8 【新たなテクニックを創造する】——ジェイソン・ウィリアムス
最終回 【加速するスペースを作る】——レブロン・ジェームズ
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