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予期せぬ成功を認める度量があるか
前回、イノベーションの第一歩が「予期せぬ成功」を見逃さないことだと書きました。
ドラッカーは『イノベーションと企業家精神』の冒頭でこう言っています。
予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない。これほどリスクが小さく苦労の少ないイノベーションはない。しかるに予期せぬ成功はほとんど無視される。困ったことには存在さえ否定される
そう、部下が予想もしなかった成功をおさめると、困ったことに認めたがらないマネージャーがいたりします。
かつて、こんなことを経験したことがあります。
私が勤めていたメーカーでは、創業以来の中核製品が苦戦していたのに対して、私が担当した新規事業の製品が売れ始めた頃です。
創業製品に愛着と思い入れのあるマネージャーから、「新規製品に力を入れるから、創業製品の売り上げが減少するのだ。新規製品よりも創業製品第一で営業しろ」と会議で言われたことがありました。
マネジメントにとって、予期せぬ成功を認めることは容易ではない。(中略)人間誰しも、長く続いてきたものが正常であって、永久に続くべきものと考えるからである。自然の法則のように受け入れてきたものに反するものは、すべて異常、不健全、不健康として拒否してしまう
多分私は、異常で不健全で不健康な奴だとして拒否されていたのだと思います(笑)。
創業品から見ると新規品はまるで「敵」のように映ってしまい、本来、自分たちにとっての最善のチャンスなのに、それを敵の中に見出すには相当なエネルギーと勇気が必要なのでしょう。
しかも予期せぬ成功は腹が立つ。(中略)(新規品が)市場を席巻し主力製品で目論んでいた売り上げを食う。当然、不愉快に思い、庇を貸して母屋をとられたとこぼす
わからないでもないですよね。
みなさんに身の回りにも似たようなことがあったかもしれません。
でもドラッカーは、マネジメントに対してこう言い切っています。
マネジメントは、自らの過誤を認め受け入れる能力に対しても報酬を支払われている。(中略)だがこのことを理解している者は稀である
ということは、イノベーションの第1歩たる「予期せぬ成功」を見逃さないためには、そうしたマネージャーたちの個々人の判断にゆだねるのではなく、体系的に探究できる仕組みづくりが必要だということになります。
次回はその仕組みについてお伝えします。