にんげんになり損ねたので

 薬を増やしたのだけれど、やっぱりうつが重い気がする。それか副作用だろうか。上手く体が動かない。

 それでも学校には行く。やらないといけないこともあるし、何より普通にやりたいことを頑張りたいから。だから動けるようになったら家を出る。
 学校に着いたら抑うつ気分が綺麗さっぱりなくなっているなんてことはなくて、僕は無表情でPCを開く。でも誰かに話しかけられると、体調なんて少しも悪くないよって顔で、声で、返事をしてしまう。
 それがとても辛い。考える時間なんて全くない反射的な行動なのに、こんなにもいつも通りの声が出せるのか、こんなにいつも通りの表情が出来るのか。じゃあ僕の今の状態はなに?やっぱり病気じゃない?
 でもこの状態でしばらくひとと話すと、一人になった後にどっと疲れるということも分かっている。だから本当は、今日体調悪いんだよね、って言いたいし、大丈夫?って聞いてもらえる程度には疲れていそうな顔と声になりたい。
 せっかく何人かには病気のことを話せたのに、結局元気な自分しか見せることが出来ない。それを意識的にではなく無意識にやっているのがかなりショックだ。まだこころは何かに縛り付けられているのだ、と突きつけられる。

 結局、にんげんに擬態してしまう自分が怖くなって、逃げるように学校から帰ってきてしまった。
 なんだかぼうっとして、またこころを感じられなくなってきて、辛さだけがぼんやりと僕の周りを漂っていて、ただひたすらからだが重い。また冬だ、また病気が悪くなって、動けなくなって、ひとが怖くなって、そんな冬になってしまうのかな。いやだな。はやく病気が治らないかな。


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