子どもの権利はどこに行くんだろう
最近、子ども家庭庁の政策が世間を賑わせている。公共施設やスポーツ観戦などに子どもが優先的に入場できるようになる、というのが主だ。
子ども家庭庁の公式HPにも比較的見えやすい場所に載せられていた。
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-fast-track/
子どもファスト・トラックというもので、子どもが優先的に入場などができるよう、公共施設や商業施設が協力するというシステムのようだ。書き方からすると、企業にお金を払って協力してもらうような感じではなさそうである。
またここでも挙げられているが子どもの意見をとり入れる仕組みとしてこども若者★いけんぷらすというシステムがあるようだ。
完全に個人的な意見だけれど、発足から3か月で、なにか仕組みを作って動かす、となると確かにこのくらいが精一杯かもしれない。
予算も今年度分がついているだけのはずで、今後がやや不透明だから、維持費が高くなるシステムとなるともっと議論が行われ、予算獲得に奔走しなければならないと思う。
これまでの子ども家庭庁が行ったことについていくつか考えてみる。
まずはホームページがかなり子ども向けになっていること。子ども向けページに飛んでみると、子どもの権利について、子ども基本法、子どもの権利条約などを基に説明している。内容自体はわかりやすいと思う。しかし、それって結局自分に何の関係があるんだろう、と思う子どもは多そうだ。今のところ、意見を言える、ということで先ほどのこども若者★いけんぷらすに誘導している。今後は、具体的な虐待やいじめの内容を示し、このような扱いを受けないための法律だと説明し、助けを求める場に繋がるといいなと思った。よく考えるとまだ子ども家庭庁ができたばかりなのでそこに繋げられないのだろうも思うし、悪く考えると今でも児童相談所などがあるのになぜそこに繋げられるよう連携しないのか、とも言える。それはこれから行われるだろう、と今は考えているので、またホームページを覗いてみたいと思う。
次に、子どもの居場所づくりとしてNPOと連携するそうだ。こちらも、時間がない中急ぐとなればすでに活動を行っているNPOを支援するのが早いと思うが、ゆくゆくは国と自治体が運営すべき事柄だと思う。このあたりは虐めや不登校、虐待とも深く関わるだろう。
最初にも出た子ども優先入場について。美術館や博物館、スポーツ観戦については確かに子どもの教育にも大事なことだ。ミクロで見ると子どもの役には立つだろうが、そもそもこれがあるからと子供を連れて行く親がどのくらいいるだろう。その前に、近くに美術館や博物館なんてない、親が興味を持たないため行けない、という子どもだってたくさんいるはずだ。これは短い期間で何かやったとアピールしなければいけないから、その為のものかな、と思う。絶対悪いと言うことではないけれど、同様の施策が続けばかなり迷走していることになりそうだ。
わたし個人としては、子ども家庭庁に対しては子どもの視点に立った行政を行って欲しいと思っている。具体的には虐待の予防、発見、後遺症へのフォローや、学校での虐めや教師からの嫌がらせへの対策。これらの状況が重い子どもはその家庭や学校といった場所から適切に離れ、穏やかに過ごすことを保障する。まとめると子どもたちが「困った」「どうしたら良いんだろう」とまず思えるようになること(被虐待者は虐待されていると気づかないことも多い)、そして思った時に頼れる場所・ひと・お金やシステムがあること、を目指して欲しい。
これにはかなりの時間と人手とお金がかかる。専門的な訓練を受けていなければ、人を支援することは難しいからだ。
今のところ、子ども家庭庁の理念を信じれば、これらは実現されて行くだろうと考えられる。実際には理念は理念であるから、どこかは叶わない部分が出てくるだろう。それがどのくらいになるのかが、子どもたちの権利を守れるかにかかっている。
ところで、子ども家庭庁の施策に対しては保護者からの批判が多い。それについても考えたい。
この記事で書いた通り、子育て支援というのは個人的には「親向け」「子ども向け」で分けるのが良いと考えている。子ども家庭庁を批判する方々のうち、現金給付や減免税、学費の支援など金銭面での支援を求める声が多いと感じられる。全てを見ているわけではないので感覚だけれど。わたしの考えではこれは「親向け」の支援だ。確かに子どもの生活も良くなるかもしれないけれど、お金であるから親が使い込んでしまうこともできる。そもそも、お金が心配だ、というのは親の視点だ。親が心配だから子どもの為のお金を渡す、というのは「親向け」の支援だろう。
同じことをするにしても、子ども視点から考えれば、浮いたお金が塾代になって、あわや教育虐待となってしまえばむしろ悪い支援である。他にも、大学無償化にあたって所得制限などが設けられた場合、裕福だが親から不適切な養育を受けている子どもは助けてもらえない。だからやっぱり、「子どもの視点から見てどうか」と考えられた「子ども向け支援」が大事だと思う。少なくとも子ども家庭庁が行う支援は。なぜなら、そのように行政を執り行うと明記されているから。その点で、保護者たちの子ども家庭庁への批判の多くは的外れだと感じる。
基本理念を大事にし、子どもの権利が守られる社会を作ることを目指していって欲しい。大人たちは、子ども家庭庁はそのような官庁だとしっかり理解して、子どものためかどうかという視点で今後の施策を見ていくのが良いと思った。