うたたねと金縛り、そして夜の街

 わたしはよく眠る。小さい頃からよく眠る。睡眠時間が8時間を切ると悲しくなってくるし、できれば10時間くらい寝たい。

 ついでに昼寝もしたい。ベッドでごろごろして、気づいたら眠っていて、そしてちょうどいい頃合いに起きる。

 けれど最近はそんなことも上手くいかない。夜眠るのが嫌になってきた。明日が来るのが怖いから。眠る前に嫌なことを考えそうだから。そして悪夢を見たくないから。

 そんなわけで眠れないと訴えて眠剤をもらった。最初のお薬は、すぐに眠れるけれど途中で何度も目が覚めてしまった。ついでに悪夢のおまけ付き。襲われたり、過去のトラウマが蘇ってきたり。これでは休んだ気がしないので、別のやつに変えてもらった。こっちは少し眠りに落ちるのが遅いけれど、夢も見ないし途中で起きたりもしない。でも必ず6時間くらいで目が覚める。

 6時間の睡眠はわたしにとって全然足りない。だからお昼寝をしたい。けれどお昼寝も上手くいかない。
 前みたいにすっと眠れなくなっている。疲れていて、眠気を感じているのに眠ること自体は難しいのだ。それに、眠れたとしても今度は起きる時が苦しい。ふと目が覚めたのに、眠りに引き摺り込まれるような感覚がする。時には金縛りのような感じになって、ぎゅ、ぎゅ、と全身を締め付けられて、息もできなくなった気がして、このまま意識はあるのに永遠に動けなくなるんじゃないかと怖くなる。そうしているうちにふたたび眠りに落ちるけれど、妙に気持ち悪かったり怖い夢を見て、5分後くらいに意識が浮上して、を4、5回くらい繰り返して、ようやく動けるようになる。

 だから眠るのが嫌いになってきてしまった。昔はあんなに上手だったことが、こんなに下手くそになってきてしまった。

 数年前にも同じことがあって、その頃は繁華街の近くに住んでいたから、深夜2時ごろに家を出て、ふらふらと歩いて夜の街を彷徨っていた。このまま姿を消せないかなあ、とか事件や事故に巻き込まれたら楽になるかなあ、とか思いながら、すこし暗くて、でもまだきらりと輝いている深夜の繁華街を歩いた。いろんな人がいた。工事現場で働くひと、きっと夜のお店で働いているんだなというひと、飲み会を楽しんでいるひと。そして何をしているかわからないひと。わたしも何をしているかわからないひとだった。自分でもわからなかったから。

 今は繁華街はとても遠くて、ただ大きな国道があるだけだ。それで歩くのは億劫になって、ベッドの上でひたすら音楽を聴きながら自己憐憫に浸っている。薬のおかげでその時間は減ってきているけれど。


 あしたが来なければ、夜も眠るのもまた大好きになれるのかな。

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