息をすること、試すこと

 結局お医者さんに自傷行為のことや希死念慮のことを話した。意外とあっさりと受け止められて、そういうこともあるよね、自傷行為で受け流せるならそれはそれでいいよと言われた。もっと深刻になるのかと思っていたけれど、むしろそんなことはなくて、自分でも意外なくらいほっとした。
 本当は、入院しようかとかそんな風に心配されたかった。僕はもっと酷い病気なんだと思って欲しかった。それなのに、お医者さんのあっさりとした返事に、別にいっか、と思った。
 色んなことにストレスを感じて頑張って生きているのを分かってくれたから安心したのかな。それとも口に出して死にたいんですと言えたことに安心したのかな。どちらもある気がする。
 別に病気が悪くなって欲しいんじゃなくて、気持ちを受け止めてほしかっただけだ。そうしてくれたから、ほんのすこし楽に息ができるようになった。


 それで受け止めてくれるひとが増えたら良いのかなと思って、最近は友達に実はメンタルがちょっとね、みたいなことを仄めかしたりしている。そして反応を見て、話しても大丈夫かなって値踏みして、大抵大丈夫じゃなさそうだからそのまま誤魔化す。ただ相手を試しているだけの、物凄く失礼な行為だと気がついた。だからもうやらない。きっと信頼ってそんなものじゃないと思うから。
 それに誤魔化しながら病気のことを仄めかすのは自分も傷つく。結局分かってくれないのね、なんて自己憐憫に浸ってしまうから。みんなが別の世界の住人に見える。誰かと遊びに行くのも嫌になってきてしまった。ひとりでも楽しいことは十分にたくさんあるのだ。

 どうしよう。また色んな感情が交錯して、人と話したくて、人は大嫌いで、人に救われて、人に傷つけられる。翻弄されるのは嫌いだ。変化は嫌い。だからずうっと眠っていたいのかもしれない。

 『気持ち悪い』

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