僕を信じて

 みんなは、というか僕にそれなりに深く関わっているひとたちは、僕を信じているのだろうか。

 僕はそうではない、と思う。なぜなら僕自身が周りのひとを信じていないから。
 助けを求めても助けてくれない。駄目だったことを認めてくれない。理由は言い訳だと切り捨てられる。自分を守るために休んでも、怠惰だと呆れられる。
 そんなふうに、僕はみんなを信じていない。
 だから最初から裏切られないように、僕は嘘をつき続ける。大丈夫?うん、大丈夫。どうして間違えたの?ごめんなさい、僕が悪かったの。僕ってサボり魔だよね、えへへ。そうやって何度も何度も誤魔化して嘘で上塗りをする。僕の心のほとんどは厚い嘘の層で塗り固められていて、本当の部分はもう自分にも見えなくなっている。

 それでも言い訳をしたい。僕がこうやって誰も信じなくなったのは、誰も助けてくれなかったからだ。正確には、大事な場面で助けてくれなかったと傷ついたことが何度もあったからだ。怒鳴る父親から誰も守ってくれなかった。大人のふりする僕に無理しないでなんて誰もいなかった。一生懸命家のための手伝いをする僕の心の中を考えてみてくれるひとなんて、ひとりもいなかったのだ。

 だから僕は誰も信じない。たぶんそれは周りのひとにも薄々伝わっているのだろう。だから何度も大丈夫?とか本当のこと言ってよ、とか何を考えているのか分からない、と言われるんだろう。そしてその度に僕は心を閉ざす。僕が言って欲しいのはそんな言葉じゃない。しんどそうに見えるけど、何かあったの?とか、頑張っているのは分かっているよ、とか、話したくなかったら話さなくていいよ、とか、そんなことを言って欲しい。でも伝わるわけない。だから黙っている。そしてまた同じことの繰り返し。永遠に、繰り返し。

 この負のループはいつか終わるのだろうか。自分から断ち切らないといけないのだろう。けれど幼い僕が叫ぶ。どうして僕がそんなことしないといけないの。僕が悪いんじゃないのに!周りの大人が助けてくれなかったのに!どうしていつまでも僕だけが頑張らなくちゃいけないの。

 ただ、頑張ったねって言って認めてくれるだけでいいのに。そんなひといない。魔法の絨毯に乗って迎えにきてくれよ。

Do you trust me?

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