the Cause of my Death : Movie…?

 映画は好きだ。でも映画を観るのは苦手だ。

 もともとそれほど映画を観る習慣はなかった。映画館で観るのは年に二、三本程度くらい。しかし数年前色々な影響を受けて、映画館に行く回数が二桁に跳ね上がったり、配信で何本も映画を見ていた時期があった。

 それでも面白そうだと思っている映画でも観るために踏ん切りがつかないことが何度もあった。単純に、映像だけを観てじっとしていられないからだと思っていた。けれど見始めたらすっとその世界に引き込まれるし、あっという間に時間が経つ。
 それじゃあつまらなかったら嫌だから?それもある。でもつまらない映画のことはあっという間に忘れられる。お金を払っているなら後悔はあるかもしれないけれど、サブスクなら別に気にならない。どうせスマホを見ているだけの時間だったわけだし。
 なら怖い映画に当たりたくないから?まあそうかも。音がうるさいシーンとか、心が痛むようなシーンはうっ、としんどくなる。でもそれで結局観なきゃよかったと思った映画は今のところない。アクションは好きな方だし、名作と言われるものはやはりそれなりの理由もあって、観た後は良い映画だった、と思えるのだ。


 結局、映画を観るのに大きな決心が必要なのは何故なのか。

 それは気分が高揚したあとの希死念慮だ、と思う。抑鬱が気になりだしてから、映画館で良い映画を観て良い気分で帰ると、帰り道でだんだん死にたくなる。あるいは帰ってから死のうかと思う。理由は分からない。感情が揺さぶられすぎるからかもしれない。
 家でひたすら自傷行為に走ったこともあるし、帰り道の歩道橋から飛び降りてみようかと下を覗いてみたこともある。そういえば某映画の応援上映に行った次の日から、ベッドを出られなくなって不登校が始まったのだった。
 映画自体にトラウマを刺激されたとか、そういう訳ではない。いつもの希死念慮と違って、このままどこまでも飛んでいけそうだ、という感覚で死まで飛んでいきたくなる。

 その理由の不明確さと制御不可能性のおかげで、映画館で映画を観ることがすっかり怖くなってしまった。
 たぶん実行に移さないと思う。でも、もしうっかり向こう側へ行ってしまったらと思う。普段から死にたさはあるのだけれど、なんだかこれは違うのだ。連れ去られるような気がするのだ。

 もしうっかり映画館のあるビルの屋上から飛び降りちゃったら、死因は映画になるのだろうか。そう考えたら悪くない響きにも思えるけれど、いやそんな訳ない、事故か自殺で片付けられるだろう。

 映画の持つ強大な力に惹かれる。だから好きで、もっとたくさん観たいと思う。しかしその力に殺されそうになる。だから映画は、特に映画館で観る映画は苦手だ。

 もしかしたら、僕の死神だったりして。

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