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初期の組立の大切さがわかる話(オーバーホールにて)■2023年06月28日更新

広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。

偶然立ち寄ったオモチャ屋に飾られていたスポーツカーのプラモデルの完成度の高さに感動した『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
みんなが同じキットを買って組み立てるのに、こうも仕上がりに差が出るとは…。
自転車にも同じことが言えますね。

■今回の患『車』

まずはお預かり時点での状態から。

★ブランド★
【WILIER TRIESTINA】(ウィリエール・トリエスティーナ)
★車種★
GTR TEAM
★年式★
2021(と思われる)

競技志向のユーザーさんで、しっかり練習しているようです。
全体的にガリ傷や汚れが目立ちます。
BB付近から異音が鳴るのと、リアのシフトインナーワイヤーが切れてしまったのが現状でわかる問題点とのことです。
フレームのダメージ、もしかしたらクラックが入っているかもしれません。
ただし、外から見える部分だけでは判断できないため、分解チェックを兼ねてオーバーホールをすることになりました。
受付時点で交換確定している部品は各種ワイヤー類とバーテープですね。

■作業のダイジェスト

分解ついでにボトルケージ用のダボ(雌ネジ)の精度上げもやっちゃいます。

ケーブルエントランスパーツを固定するボルトは錆びていました。
できる範囲でサビを除去してみました。
(アフター写真撮り忘れたのでユーザーさんに実車でご説明)

やっかいな箇所でシフトインナーケーブルが切れたようです。

レバーを分解してワイヤーの糸屑みたいなものも取り除きます。

部品の寿命は年月だけでは決まりません。
使用頻度や仕様環境によっても異なります。
変速操作の回数が多いと、ワイヤーもそれだけ寿命は短くなるわけです。

分解できるだけ分解してみました。
打音検査の範囲内ではフレームに深刻なダメージは無いと思われます。
もちろん、専門的な検査やカーボンの補修は当店でも受け付けているので、他店様にてお買い上げの自転車でもお気軽にご相談下さい。

↑バラしてみて気になった部分。
おそらく製造段階によるものだと思われますが、グリスの付き方に違和感しかありません。
何故か金属バリまで付いています。
実は新車で購入した車体でも、こんな状態のものは本当に多いです。

↑グリスが欲しいのはネジ部分です。
いちいちこんな細かい所までチェックして組立をするショップが減ってきているんでしょうか。
安さを追求しすぎると、仕事の品質も確保できないのかもしれませんね。

当店のいつもの分解と少し違いがあります。
一体型ではないのにディレイラーハンガーが付きっぱなし…。
実はこのディレイラーハンガー、2本のボルトで固定されていますが、1本は頭が死んでいて六角レンチが使えなくなっていました。
製造段階からなのか、それとも販売店での組立の後かはわかりませんが、当店では現状、ウィリエールの取り扱いが無く、補修部品も手に入らないので深追いはできませんでした。

ユーザーさんからのご要望でフレーム単体での重量チェック。
ライナー管や必要なスモールパーツ込みで1265gでした。

フロントフォークはカット済み&プレッシャーアンカー込みで440g。

チェーンステーの傷は大きいですね。

シートチューブやトップチューブ、

ヘッドチューブにも

大小様々な傷が入っています。

ダウンチューブもそうですね。
路面の小石等を跳ね上げるので、特に傷が入りやすくなります。

なので防犯登録のシールをダウンチューブに貼るのは、当店ではオススメしません。

ブランドロゴにも傷が入っています。

異音の原因のひとつとして考えられるBBシェル。
汚れを除去しておきました。

後々ケーブル類を組み込むため、ライナー管を通しておきます。

意外と見落としがちな車輪固定部分も掃除しています。

フロントフォークにも傷が入っています。

汚れはできるだけ落としてみましょう

砂を噛み込んでいたBBも掃除し、グリスを再充填しています。

全体的にしっかり洗浄した後、ユーザーさんとの話し合いでバリアスコートを施工することになりました。
フレームに付いていたガリ傷はできるだけ目立たないように工夫もしています。

ドロドロに汚れていたホイールやタイヤも洗浄するため、一旦分解します。

リアディレイラーも洗浄するため分解した上、プレートの歪みもできるだけ直しました。
『中古部品あるある』ですが、動作不良を起こしている状態のものって多いんですよね。
可能な限り正常に近づける努力はしますが、部品自体の不良でどうにもならないこともあります。
このあたりも分解チェック、組付チェックをしていないとわかりません。
まずは完成状態での点検がいかに大切なことか、つくづく思い知らされます。

BBシェルには音鳴り防止も兼ねて粘度の高いグリスを塗布しています。

【SHIMANO】のロゴがいい感じに見えるように圧入済み。

リムブレーキ車はブレーキシューの状態確認をこまめにしておいた方がいいでしょう。

小石や金属片、ガラス片等、異物を噛み込んでいます。

前後左右、異物だらけです。

このまま使い続けるとホイールのリム(正確にはブレーキエリア)の寿命がゴリゴリ縮んでしまいます。

可能な限り除去しています。

シートポストのパーツやボルトも錆びていました。

↑当店にてリフレッシュ済み。
ケーブルエントランスパーツのボルトも同様です。
※部品交換をしたわけではありません。

ブレーキアウターケーブルのエンドキャップに仕込みをしています。
少しでもパーツが長持ちするように、やっておくとメリットが多い作業の一つです。

ブレーキ本体も徹底洗浄&必要箇所に注油も済ませ、ブレーキ操作時のノイズとサヨナラできました。

各部品を適切に下処理して組み付け、バーテープを巻いて完成です。

車体重量(リアライトやベルが付いていない状態)で8420g。
ユーザーさんによると、まだまだ軽量化を目指すとのことです。

ボトルケージ用ダボのネジ精度を上げただけではなく、グリスも使っています。
ユーザーさんご自身でボトルケージを付ける時、ネジの入りの軽さにも驚かれるでしょう。

■完成ツ!

お預かり時点でリアライトやベルはユーザーさんが持ち帰ったので、『ほぼ完成状態』と言いましょうか。

ケーブル類の交換ついでにバーテープは新品になりました。
コックピット周りもトレーニングに必要なものをスッキリとまとめられています。

アウターケーブルはフレームカラーに合わせてチョイス。

ライトとの干渉具合や後々の整備性も考慮した長さになっています。

ブレーキはレッド、シフトはホワイトとなっています。

リアブレーキは特にアウターケーブルの長さでブレーキタッチに大きな差が出ます。

インナーワイヤーの末端処理は当店独自技術のMEF(マーブルエンドフィニッシュ)で仕上げています。
もちろん、ユーザーさんのご要望に合わせて選択可能です。

チェーンもプーリーも、そして写真は無いですが、スプロケットもチェーンリングも徹底的に洗浄しています。
チェーンオイルはユーザーさんの使用環境を考慮して選択しました。
当店ではチェーンルブを多数用意しており、ユーザーさんのご希望で選択可能です。

■シメ

使用頻度や環境により、消耗や劣化の具合は同じ車体で同じ時期に購入したとしても異なります。
また、初期の組立がどんなクオリティーだったかによる要素も無視できません。
100点満点中、70点の組立をするのか、100点を目指して組立をするのか。
いやいや、100点を遥かに超える組立をするのか。
これはショップの方針によって異なります。
価格重視か品質重視か。
バランスを取るのは極めて困難であり、現実的には両立できないと思います。
ただでさえ高額なお買い物である自転車。
本当に長く付き合うなら品質にも目を向けてみませんか?
当店では初期の組立を極限まで高品質にしているため、目先の安さ重視のユーザーさんには不向きです。
しかし、長い目で見たら不具合が生じにくく、結果として維持費の削減に繋がります。
新しい自転車のお求めも、オーバーホール等の重整備も、ぜひお気軽に当店へご相談下さい。

折れたり割れたりしたカーボンフレームの補修等も当店にて受付可能です。

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当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。

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