ボブ・ディランと「歯ブラシ」
こんにちは。
戸越銀座デンタルケアークリニック 院長の大澤広晃です。
第2回目の記事を書いていきたいと思います。
「光る歯ブラシ」の開発
私は歯科医として、日々患者さんの診療を行っています。
診療に来られる方は「歯が痛い」「歯茎がしみる」など、何かしらの症状が既に発生しています。
治療することはできますが、できれば症状が発生する前に予防できるのが良いと思っています。
きっかけは10年前くらい前から「知覚過敏」の患者さんが増えてきたことでした。
以前の記事でも書きましたが、その原因は「磨き過ぎ」にあると考え、歯みがき指導を行いました。
すると一定の割合で、改善する患者さんが出てきました。
しかし、歯みがきは毎日の習慣ですので「性格」が大きく影響します。
例えば真面目な性格の方は、毎日長時間ゴシゴシみがくことが習慣になっていると、それを変えるのは難しいです。性格ですから。
当然、歯科医には患者さんの「性格」を変えることはできませんので、それなら「歯ブラシ」の方を変えれば良いのではないかと考えました。
こうして誕生したのが「光る歯ブラシ」です。
この歯ブラシは、柄が光って磨き過ぎを教えてくれます。
この歯ブラシの構想は以前からあったのですが、なかなか業者さんと巡り会えず、そうこうしているうちに、新型コロナウイルスで世の中がそれどころではなくなってしまいました。
そして今年ようやく、完成品が届きました。
初めて手にしたとき、自身の想いが形になったんだなという気持ちで胸がいっぱいになりました。
歯みがき絵本の出版
2022年6月に幻冬舎より絵本『こどもがよろこぶナイショはみがき』を上梓しました。
この出版を決意したきっかけは「どうしたらお子さんにもっと楽しく歯みがきをしてもらうか」という問題意識からでした。
親御さんから最も多い相談はこれです。
「子どもが歯みがきを嫌がり困ってます」
お子さんが歯みがきを嫌がると、親御さんはなんとか歯みがきをさせようとしますが、その行動でお子さんが更に「歯みがき嫌い」になってしまうという負の連鎖が起きます。
これをなんとかしたいと想い、絵本であれば親子で一緒に読みながら歯みがきできるのではないかと考えました。
最適な歯みがき頻度・時間
これもよく質問を受けます。
結論からいうと、人それぞれ最適な頻度や時間は異なります。
なぜなら、個人によって歯の生え方や口腔内の常在菌も違いますし、生活のリズムや食事の内容・タイミングも様々です。あとは先程もお伝えした「性格」も違います。
もちろん、これらすべてを把握することはできません。
しかし、診療の際にはできる限り患者さんとコミュニケーションをとり、人となりを理解できるようにしています。
例えば、真面目な性格で毎回5分歯みがきされていて知覚過敏の場合は「まずは4分くらいを意識して見ませんか?」とお話しています。
逆に、5分歯みがきをしてみがき残しがある場合には、歯ブラシの持ち方やブラシの角度をアドバイスすることもあります。
最近は「歯がキレイで虫歯もないのに、しみる」という方が本当に多いので、基本的には磨き過ぎないことを意識していただけたらと思っています。
高級な歯ブラシはキレイに磨けるのか?
最近は歯ブラシも多種多様なものがあり、中には1本1万円以上するようなものまで登場しています。
性能についても、各メーカーがしのぎを削っており、ドラッグストアにいけば数十~数百種類の歯ブラシが並んでいます。
まず、私の考えとしては「歯ブラシは日用品であり、歯みがきの道具」なのです。
日用品という側面からは、ある程度安価なものでないと困ると思います。
道具という観点からは、「道具に人間が合わせるのではなく、人間に道具を合わせるべき」だと思っています。
極端な例ですが、5,000円のバットと10万円のバットがあったとして、私はどちらを使ってもホームランは打てません。しかし、大谷翔平選手はどちらであってもホームランを打てると思います。
要は「道具とは、使いこなせることが重要である」と言いたいのです。
色んな歯ブラシがあっていいと思いますし、そこに否定する気持ちはありません。
ただ歯ブラシは、日用品として人々にやさしく、モノよりも「使い方」を重視されるようになったらいいなと考えています。
これも個人的な考えですが「道具」を選ぶときは「気に入るかどうか」を大事にすべきだと思います。
お子さんであれば、好きなキャラクターの歯ブラシを使うことで、少しでも歯みがきが楽しくなってほしいです。
高級な歯ブラシで気分が上がるのであれば、それもいいんです。
道具は「気に入ったモノ」を長く使っていただけたらいいのではないでしょうか。
以前、スターバックスでMacBookを使っていると「意識が高い」とからかわれるように言われる風潮がありましたが、本人が気に入って使っているなら良いですよね。でも、なんとなく体裁を気にしてMacBookを持っていたとして、更に使いこなせていなかったら、誰も幸せにならないですよね。
最後に、人は歯みがきするために歯みがきをしているわけではありません。
歯みがきで健康を保ち、豊かな人生を歩むためです。
だからこそ、道具にあなたを合わせるのではなく、あなたに合わせた道具として歯ブラシを選ぶ。そういう選択をしていく人生もアリじゃないでしょうか。
この記事を読んでいただき、ありがとうございます。
さまざま矛盾を感じられる方もいらっしゃると思います。
ノーベル文学賞受賞のボブ・ディランは言いました。
「答えは風の中にある。風に吹かれちまっている。」 ※
※ミュージシャンとして異例のノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの1962年雑誌「シング・アウト!」のインタビューより
「この歌についちゃ、あまり言えることはないけど、ただ答えは風の中で吹かれているということだ。答えは本にも載ってないし、映画やテレビや討論会を見ても分からない。
ヒップな奴らは『ここに答えがある』だの何だの言ってるが、俺は信用しねえ。俺にとっちゃ風にのっていて、しかも紙切れみたいに、いつかは地上に降りてくる。でも、折角降りてきても、誰も拾って読もうとしないから、誰にも見られず理解されず、また飛んでいっちまう。世の中で一番の悪党は、間違っているものを見て、それが間違っていると頭でわかっていても、目を背けるやつだ。俺はまだ21歳だが、そういう大人が大勢いすぎることがわかっちまった。あんたら21歳以上の大人は、だいたい年長者だし、もっと頭がいいはずだろう。」
<おまけ四コママンガ>
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©戸越銀座デンタルケアークリニック
院長 大澤 広晃