言い訳をする必要がないほうが強いに決まってる
屋根のないスタジアムをホームとするサッカーチームのサポーターにとって天敵とも呼べる時季が近付いてきている。
そう、梅雨だ。
今年の鹿児島市の梅雨入りは少しばかり遅れている。
九州南部の平年日は5月30日だから、1週間ほど遅い。
実際、昨日まではわりかし穏やかな天気が続いていた。
それなのに、この日に限って雨だった。
梅雨入りと言われても不思議でないほどの降り方だった。
雨が降ると、観戦するのにカッパが煩わしいというだけではない。
どうも雨の日の鹿児島ユナイテッドFCの試合には悪い印象しかない。
今年のチームは去年ほどショートパスを多用するポゼッションにはこだわっていないから、大丈夫なんじゃないかと思うけれど、それでも不安が残る。
雨の中、スタジアムで観戦することを後悔するんじゃないかと、去年のホーム藤枝戦のことを思い出してしまう。
そんなわけでほぼ1カ月のホーム戦だったのに、楽しみと不安が半々のまま、白波スタジアムへと向かった。
スタグルと非日常への準備
上記のようにこの日は天気のせいで観客者数は少なかった。
スタグル待ちの列もほとんどなくて、それは快適といえば快適。
いつもは列で待っている間に、スタメンをチェックしたり、今日の試合はどんな試合になるんだろうとか考えたりしている。
野外ステージのパフォーマンスの音楽を聴くのも楽しみの一つだし、列に並んでる人のユニフォームの背番号を眺めて、久しぶりにベンチ入りしていた選手の番号だったら「良かったね」なんて心の中で声をかけることもある。
思えば、スタグルの列に並ぶというのは非日常の空間に身を置くための準備なのかもしれない。
だからそれがなかったことに、どこか物足りなさを覚えた。
とはいえ、腹ごしらえは重要なので、短い列に並んでスタグルを購入した。
この日選んだのは、やぶ金のうどん。
鹿児島県民にはおなじみの「桜島フェリーのうどん」である。
いつもは15分の運航の間に食べないといけないから焦って食べるけれど、スタジアムではそんなことはない。
出汁の最後の一滴までちゃんと飲み干して、先に席を取っておいたスタジアムへと向かった。
角度が違えば見えるものも聞こえるものも違う
天気予報を何度見ても雨が避けようがないことがわかったので、この日はいつものバックスタンドではなく、メインスタンドのチケットを準備していた。
白波スタジアムの屋根があるエリアは狭いので、それでもカッパは必須なのだけれど、バックスタンドよりかはましだった。
メインスタンドとバックスタンドからだと、見える景色が違う。
バックスタンドから見る前半は、右から左に攻めるけれど、メインスタンドから見るとその逆で左から右に攻める形になる。
前後半で攻める方向は変わるから大した違いじゃないはずなのに、前半は鹿児島ユナイテッドが右から攻める形が目立っていた分、試合にのめり込みやすかったような気がする。
もう一個、普段と違うのは音。
狭いとはいえ、屋根があるおかげで手拍子の音が反響した。
今シーズンの平均より1000人は観客数は少なかったけれど、大きく響く音も没入感を高めてくれた。
テレビで見ることと、スタジアムで観戦することの違いは、こういうところにあるんだと思う。
テレビ中継では、リプレーのせいでリスタートが見れないなんてのもストレスだけれど、もしそのリスタートから得点につながれば、またそのリプレーが流れるから問題ない。
もっと言えば、雨の日なんかは特にだけど、プレー自体はテレビを通して見たほうがよっぽ良く見える。
でも、没入感はテレビで見てるとなかなか得られない。
外からは生活の音が聞こえてくるし、テレビから目を逸らせばそこには見慣れた食卓がある。
スタジアムはそうじゃない。
午後1時キックオフで、前半のうちに照明が灯されるようなコンディションだったけれど、行ってよかった。
勝ったからそう思うのかもしれない。
でも結局は、日常から離れることに快感を覚えるから、雨が降ってもスタジアムに向かってしまうんだと思う。
苦手意識は染みみたいなものだと思う
試合は前半17分の有田選手のゴールを守り切って、鹿児島ユナイテッドの勝利で終わった。
早い時間の先制点で、しかも後半は特に攻め込まれる時間も多かったから、逃げ切れるのか心配だったけれど、まったくの杞憂だった。
雨だからとか、追加点が取れないからとか、そんな理由で去年は勝点を失った試合が多かったように思う。
いろんな理由や事情が積み重なって、苦手意識みたいなものができてしまうんだろう。
天気に関しては両チームとも同じ条件なのだから、厳しい言い方になるかもしれないけれど、言い訳と換言できるかもしれない。
今年はその「苦手」な雨でも最少得点で、クリーンシートで、勝ちきった。
もう言い訳はいらない。
こんなチームはきっと強い。
まだまだ勝てる。
首位を守るとか考える必要はない。
一個一個戦っていけば、目指す場所へと行ける。
その瞬間を見届けるために、またスタジアムに行こう。