豚モツ業者が検証する『ベトナム人の豚盗難事件』 その7 アカモノを部位ごとに分ける
ベトナム人豚泥棒たちは豚を解体して肉を売ったわけだが、もちろんその内臓も売りさばいただろう。とりわけアカモノの各部位は人気だったにちがいない。ぼくも業者時代、タンやレバーは人気商品だった。
屠場の作業では、シロモノと分けられたアカモノは一段低い作業場に流され、そこを担当する作業員に各部位ごと分けられる。
アカモノのかたまりは、身体の上部から中央部に付いている臓器で構成されている。まずタン(舌)があり、そこから続いてのどナンコツが付く。のどナンコツは気道の固い管に、食道のやわらかい管が張り付いている。気道の管は白く、食道の管は赤い。ナンコツの終いの部分にハツ(心臓)が付く。そこにレバー(肝臓)がつながっていて、レバーには卵ほどの大きさの胆のうが付いている。
レバーはハツの根元から、横隔膜の膜の切れ端でつながっている。まずはそこをチョンと切って、レバーを分離する。レバーが付いていると重くて作業しにくいのだ。そしてタンの付け根の食道の入り口に、先が玉になっているナイフを入れてスッと進める。
先の尖っていないナイフはつっかえることなく進み、食道を裂いていく。
なぜ裂くのかというと、食道の中は内容物と分泌液が残っていて、そのままにしておくと傷みが早いからだ。裂いて洗っておけば、傷みを遅らせられる。
そして気道の方の固い筒は、血の塊が付いていることが多いので、それを取る。商品を汚さないためだ。
ハツ(心臓)の中にも血の塊が残っているので、それも取り除く。
このアカモノの処理で最も難しいのが、レバーから胆のうを取る作業だ。これは慣れている者でも気を使う。破裂させてしまうと、中の苦い胆汁がレバーに付いてしまうからだ。黄色い色も、こびりついてしまう。そうなると商品価値が下がってしまう。
この胆のうを取れば、アカモノの処理はだいたい終わりだ。屠場では、ここで業者に渡される。
ベトナム人豚泥棒は、胆のうを破裂させることなく取り除いたのだろうか!? 気になるところだ。
(つづく)