「女性スペースを守る会」はヘイト団体ではない。女性差別に反対する人権団体である。ヘイト概念は人権概念(生存権、財産権、自由権)と切り離して使用してはならないこと。
2021.11.15
著者 月光藤島+登川琢人
「女性スペースをまもる会」の「防波堤」役の滝本太郎弁護士がさる「一市民」から懲戒請求をかけられた。
以下「女性スペースを守る会」のnoteから引用する。
「偏見助長、差別扇動」とは英語ではヘイトスピーチの事である。
また、元「レイシストをしばき隊」の神原元弁護士も「女性スペースを守る会」をヘイター呼ばわりしてきた。
いわゆる、TRA(Transgender Rights Activist)も「女性スペースを守る会」や滝本弁護士、女性差別に反対する私達のような人間を同様に攻撃して来たし、今も攻撃している。
※注
以下、女性は男性に対しては「原理的に」ヘイトスピーチはできないし、差別もできないこと、したがって「女性スペースを守る会」はヘイト団体ではないことを論証する。
●ヘイト概念の法律化
師岡康子氏の「ヘイト・スピーチとは何か」(岩波新書 2013.12.20)によればヘイト概念が法律化されたのは1990年のアメリカ連邦下院議院で可決された「ヘイト・クライム統計法案」である。
同法ではヘイト・クライムは「人種、宗教、性的指向、国籍、民族を理由とする偏見に基づく犯罪」と定義された。
(この時点では性自認は入っていないが2020年には入っている。)
●ヘイト概念が誕生した経緯
ヘイト概念はアメリカ発祥の概念である。
アメリカでは1865年の奴隷制の終了後も、1960年代まで人種隔離政策や法的差別が維持され、アフリカ系の人々へのリンチ殺人や暴力、暴言が横行してきた。
1950〜1960年代の公民権運動により公的差別は禁止された。
しかし、差別は根強く、80年代前半ニューヨークを中心にアフリカ系、性的マイノリティに対する差別に基づく暴力事件が頻発した。
ユダヤ系の「名誉毀損防止同盟」(ADL)などが活発な取り組みを行い、ヘイトクライムの調査を国に義務つける「ヘイトクライム統計法案」が成立した。
ポリティカル・コレクトネス(political
correctness)も同じ潮流である。
1980年代、大学での非白人および女性の進出に反発する差別事件が頻発した。
当事者、大学研究者を中心に差別的表現の是正・禁止など言語を中心とする文化面での差別撤廃がPCである。
PCの一貫として多くの大学がヘイト・スピーチを含むハラスメント行為全般を規制する規則を採用した。
しかし、アメリカは憲法で「表現の自由権を尊重」するために、規制の合憲性の論争が社会問題化し、「ヘイトスピーチ」という概念が広まった。
(師岡、38ページより。一部改変。以下同様。)
●批判的人種的理論(Critical Race Theory)
ヘイトスピーチ、ヘイトクライムの研究の中心となったのは、公民権運動の流れを継承する被差別当事者を含む批判的人種理論(CRT)の活動家、研究者である。
法の上での差別がなくなった以後も差別がなくならない現実に、法学、社会学、心理学など多様な分野の研究者が取り組んだ。
彼ら彼女らは、
を明らかにしたとされる。
ここまでで神原弁護士、茶谷さやかさんらTRA(トランス権利活動家)が女性ヘイターであることがわかると思う。
なぜなら「自分を女性と考える男性」(いわゆるトランス女性)は男性なので、歴史的に形成されてきた女性差別構造においては差別する側だからである。
女性達は歴史的な女性差別を跳ね返し、「女性スペース」を勝ち取ってきた。
「女性スペース」を守る行為は女性の生存権の主張であり行動である。
ヴァージニア・ウルフの「自分だけの部屋」をみてもわかるし、ルイス・ベイダー・ギンズバーグの映画では1950年代、ハーバードロースクールに女性トイレがなかった事がわかる。
日本の国会にも女性トイレは1950年代までなかった。
したがって、「女性スペースを守る会」をヘイター呼ばわりする行為は、女性差別構造の強化を扇動するヘイトスピーチである。
彼ら彼女らは女性ヘイターなのである。
●憎悪のピラミッド
さて、批判的人種的理論のブライアン・レヴィンが提唱した「憎悪のピラミッド(PYRAMID OF HATE)」で差別を考えてみる。
しかし、レイシズム(人種的差別、民族差別)のヘイトのピラミッドであり、女性差別のヘイトのピラミッドはネットでも見当たらないようだ。
トランス女性差別は人種的差別のピラミッドに当て嵌めて考えられているようであり、その結果、女性差別が隠蔽されている、というのが、我々の考えだ。
神原弁護士はレイシストをしばき隊のメンバーだったし、茶谷さやかさんは反ネトウヨ、反歴史修正主義者の歴史学者であるからだ。
その他の過激なTRA(Transgender Rights Activist)の多くは、民族差別に反対する反差別カウンターである。
ピラミッドの下から上にゆくにつれて害悪のレベルが増す順に積み重ねられている。
下から3段目からが、いわゆる差別である。
最悪の形態が5段目の虐殺である。
人種的差別、民族差別の憎悪のピラミッドで考えると、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というヘイトスピーチを官憲が流した結果、関東大震災朝鮮人虐殺(ジェノサイド)にエスカレートしたと言える。
女性差別の憎悪のピラミッドでは、フェミサイドが2段目の「偏見に基づく暴力」に当たるだろう。
小田急フェミサイド事件は記憶に新しい。
日本では女性が幸せそう(偏見つまりヘイトである)だと殺されてしまう訳だ。
あくまでADLの定義だが、以下にdeepL翻訳した。
●「差別・権力・人権」の定義
神原弁護士らTRAの問題は女性差別構造を軽視し、「自分を女性と考える男性」(トランス女性)の差別構造を重視することである。
TRAが主張しているのは「女性スペース」にトランス女性を入れろという主張である。
「女性スペース」には女子スポーツ、女子大、国会議員、会社役員らの女性枠も入る。
TRAは「女性スペース」に「トランス女性」を入れるべきだと主張している。
ADLのピラミッドでは差別は以下のように記述されている。
様々な格差である。
差別(discrimination)とは属性間における権力の不当な「格差」の事である。
属性(propaties)は憲法14条(平等権)や国連の規定にもあるように、「人種、民族、性別、世系」などである。
何故、権力(power)の格差なのか?
権力は、ある主体が他者の権利を変更できる力である。
国会議員が男性ばかりだと女性の権利の主張は聞いてもらえないことになりがちである。
2021年10月31日の衆議院選挙では女性議員の比率は選挙前より低下し、9.7%と、1割を割り込んだ。
女性が権力を持っている割合が低い状況では女性の人権向上は厳しい。
権利(rights)はすなわち人権(human rights)である。
人権は生命、財産、自由の権利である。
国会議員は法律を作る権力(立法権)を持つ。
さらに、我々が住む資本主義社会下では、財産権、つまり資本は「権力」である。
そして、リベラルデモクラシー社会では、人権は生存権>財産権>自由権の優先順位で「公共の福祉」の概念で調整されることになる。
何故、生存権が一番なのかと言うと、生命が維持できないと自由の価値がなくなるからである。
更には財産権(就職差別、非正規低賃金など)が制限されると生命維持が困難になるため、我々は当面は自由権より財産権を優位におく。
自民党の麻生太郎などは
財産権>自由権>生存権の順番で社会を考えているように思える。
自民党と公明党は年々、生活保護の給付額を低下させているからである。
言うまでもなく生活保護は財産が少ない人のための生存権の権利であり、憲法25条(最低限度の生活保障)に基づく人権である。
女性を含む被差別者は「権力」の不当な格差を是正し、正当な「権利」を手にする必要がある。
だから、国会議員の女性枠(女性スペースである)をトランス女性が奪う事は女性への差別なのである。
権力を奪われてしまうので、女性トイレ、女湯問題より重要かもしれない。
●被差別集団と犯罪
師岡氏も紹介しているようにヘイトスピーチは差別構造の一部であるという認識が重要だ。
神原弁護士は
「特定のマイノリティ集団を犯罪に結びつけるデマを飛ばしてその排斥を叫ぶ論理」
を
「女性スペースを守る会」が使うのでヘイト団体だと主張している。
ひとまずは、女性を被差別集団と考えられないからだとは言える。
レイシズムでは神原弁護士の主張は概ねは正しい。
「憎悪のピラミッド」で説明した通りである。
更にデマでなければ特定の属性に結びつけても良い。
というか事実を統計データにする必要がある。
レイシズムの場合は、奴隷制、植民地支配の暴力が構造化され、植民地支配を行ってしまった国で差別が残存しているために、被差別民族は財産権から排除されている場合が多い。
在日コリアンは長らく公務員になれなかったし、弁護士にもなれなかった。
就職差別があることは言うまでもない。
その結果、犯罪が多くなったとしても生命を守るために犯罪が多くなった訳であるから、問題は差別構造であるのであって、差別構造を解体するために、属性の犯罪データを取ることはなんの問題もないのである。
●性犯罪の女性差別性
被差別者の犯罪は免除されると言っている訳ではない。
繰り返すが、被差別者集団は財産権を侵害されているからこそ貧困の問題に直結するため、窃盗など、命を維持する為に仕方なく行うであろう犯罪ならば罪は軽いと言っている。
例えば、ベトナム人技能実習生がパスポートを取り上げられ、最低賃金を下回る額で長時間労働させられ、近隣の畑から食物を盗んだ事件があった。
奴隷労働である。
財産権の侵害であり、生存権が危ういための窃盗であるから罪は薄い。
被害を受けた農家は政府、技能実習生管理団体、人権侵害を行った農家より賠償さればよい。
しかし、被差別属性であれ殺人や傷害は全く免除の理由にはならない。
では、性犯罪はどうなのか?
当然であるが、セックスをしないと命を維持できないわけではない。
犯罪の性質上、性差があり、生殖器の違いありきで行われる強者(男性身体)から弱者(女性身体及び児童)への圧倒的な加害と暴力で成立しているのが性犯罪である。
「自分を女性と考える男性」を含む男性は、性犯罪を犯さないと財産権、生存権が奪われる訳ではない。
つまり、犯罪の構造と統計から見て
性犯罪そのものが男から女へのヘイトクライムとして成立しているからこそ属性責任を男が負うのは当然だと言える。
短絡的に属性に犯罪を結びつける行為はヘイトであるため禁止しなければならない。
しかし、神原弁護士のいう「特定のマイノリティ集団」すなわち「自分を女性と考える男性(トランス女性)」は男性なのである。
自認はともあれ身体が男性であることが決定的である。
筋力、骨格、どこをとっても男性が強い。
男性が性犯罪の99%を犯すことは世界的な事実である。
したがって、「自分を女性と考える男性」も男性の身体を持つ訳で、男性属性の責任を免れない。
いくら頭で自分は女性だと考えても身体は男性である。
「自分を女性と考える男性」が性犯罪者だと言っているのではない。
男性が性犯罪者だとも言っていない。
女性差別構造がある以上、男性属性には性犯罪の属性責任はあると言っているのである。
トランス女性を男性としてカウントするのが当然である理由は、言うまでもなく身体が男であり、女性にとって「自分を女性と考える男性」が性暴力を仕掛けた時に男性と同じく、女性には太刀打ちできない脅威であるからだ。
トランス女性が性犯罪者といっているのではなく、女性にとってはシンプルに男からの暴力と同じ破壊力を持つ身体を持つからである。
したがって、神原弁護士の言う
「特定のマイノリティ集団を犯罪に結びつけるデマを飛ばしてその排斥を叫ぶ論理」
であるから
ヘイトである
という論理は以下の理由から過ちであることが導き出される。
1.男性身体を持つ者は性犯罪率が高い。
2.性犯罪率の高さからいって男性身体を持つものは女性スペースから排斥しなければならない。
3.女性差別をなくすために、女性の権力を男性身体を持つ者が奪うのは女性差別である。
したがって、「女性スペースを守る会」はヘイト団体などではない。
むしろ、神原弁護士をはじめとする女性ヘイターのヘイトと差別を跳ね返そうと闘う人権擁護団体なのである。
●ヘイト概念の問題点
ヘイト概念は差別をなくすためには有効な概念だが、歴史的な差別構造の一部であるという把握、人権概念(生存権、財産権、自由権)による犯罪の種類分けがないと、兇器になりうる概念である。
わかりやすい例を書く。
「自分を女性と認識し、いわゆる女装をする男」
はヘイトスピーチではない。
歴史的な女性差別構造を強化、扇動するわけではないからだし、そもそも女装者(トランスヴェスタイト)は国連のトランスジェンダーに入っている。
「陰経から尿のでる人」
もヘイトスピーチではない。
TRAが女性を「子宮がある人」と呼び、女性概念を抹消しようとする事への反差別カウンターだからだ。
在特会の桜井誠に「ヘイト豚、死ね」との横断幕を反差別カウンターは掲げたが、「ヘイト豚」はヘイトスピーチではないのと同じなのである。
結論としては、神原弁護士は滝本弁護士への懲戒請求を取り下げ、滝本弁護士と「女性スペースを守る会」に謝罪すべきである。
仲岡しゅん弁護士も同様である。
我々は、彼ら彼女らTRAに対抗して女性差別者への社会的包囲網をつくっていく必要がある。
●日本の差別禁止法の現状
「主要先進国」では差別禁止法が1960年〜1970年代に制定されている。
しかし、日本には差別禁止法はない。
粱英聖氏の「日本型ヘイトスピーチとは何か」(影書房 2016.12.19)では差別禁止法を「反レイシズム1.0」と呼称している。
冒頭で説明したようにヘイト概念は「反レイシズム1.0」があっても差別がなくならないためにつくられた概念なのである。
粱氏は「反レイシズム2.0」と呼称している。
日本では2016年6月3日に
ヘイトスピーチ解消法
(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)
が反差別活動家、学者、弁護士、在日コリアンの努力で制定された。
粱氏の規定では「反レイシズム1.0」がないのに「反レイシズム2.0」の法律を作らざるを得なかった歪な状況と言える。
嫌韓、在特会らのヘイトと差別が爆発したためである。
女性差別禁止法もない。
ないないだらけの酷い状況だと言える。
英国平等法は女性差別禁止規定、人種的差別禁止規定があるようだ。
英国では性自認至上主義が爆発したため差別禁止に「性自認」を入れようとしたが、実は入っておらず、トランスジェンダー活動家団体に政府がいいなりだったようだ。
英国では政府が徐々に性自認至上主義活動家から離反しつつある状況だ。
性自認至上主義が女性差別を強化してしまうことに民衆が気づきはじめている。
我々のなすべきことは、女性差別禁止を含む包括的差別禁止法の制定だろう。
しかしそれには、「性自認」概念を法律化すると女性差別を推進してしまう問題の社会的共通認識が必要となる。
女性が被差別者であるにも関わらすヘイター、差別者にされてしまうからである。
こんな不義不当なことはない。
LGBT新法は自民党案、野党共闘案、ともに絶対に成立させてはならない。
※注1
滝本弁護士より下記ツイートで事実関係の誤りの指摘があり修正しました。
ありがとうございました。
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