化物語の『人は一人で勝手に助かるだけ』の意味について考える
最近、Audibleという朗読サービスで化物語を聴いたので、その時にした考察を文字で残しておこうと思います!!
化物語はアニメ化もしている有名な作品です。未読の方は是非手に取ってみてくださいね。Audibleの30日間無料体験なら0円で化物語を読むことができます。以下、ネタバレを含みます。
・はじめに
化物語では『人は一人で勝手に助かるだけ』というセリフが頻繁に出てきます。
これは、怪異の専門家、忍野メメの言葉です。
忍野メメは、怪異に悩まされている人間に助けを求められると必ずと言っていいほどこのセリフを口にします。
私は、このセリフを初めて見た時、意味がわかりませんでした。なぜなら、私は人を助けたことがあるからです。というか、誰にでも人を助けた経験があると思います。
『人は一人で勝手に助かるだけ』とは、人を助けた経験を真っ向から否定するものであり、私は話半分に読み飛ばしていました。なんとなく思わせぶりなセリフなだけで、深い意味はないと考えていました。
しかし、真面目に意味を考えてみると含蓄のある深いセリフでした。
以下、私がセリフの意味を解釈するまでの分析も含めて書いていきます。
・分析と考察
まず、私が『人は一人で勝手に助かるだけ』の意味を考察するにあたって、物語の構造からアプローチしていくことにしました。繰り返し出てくる言葉なので、物語と深く関わっているかもしれないと考えたからです。
化物語は全5章あります。そしてそれぞれにヒロインが1人ずつ登場します。
このうち、2章と4章は構造が特殊で例として上げないほうが分かりやすいので、3人のヒロインを分析してみます。
1章 戦場ヶ原ひたぎ
3章 神原駿河
5章 羽川翼
次に、3人の抱える<怪異>と、それが引き起こす「問題」を挙げていきます。
戦場ヶ原ひたぎ <蟹>「体重がない」
神原駿河 <猿>「左手が猿の腕になり人を襲う」
羽川翼 <猫>「猫化して無差別に人を襲う」
そして彼女たちは、この問題を起こす怪異を退治してほしいと忍野メメに依頼し、『人は一人で勝手に助かるだけ』と一蹴されます。
受け入れにくかったこの言葉ですが、怪異が取り憑いた”理由“を考えればその意味がわかります。
戦場ヶ原ひたぎ “母親との思い出を消したい“ <蟹>「体重がない」
神原駿河 “意中の先輩に出来た恋人が憎い” <猿>「左手が猿の腕になり人を襲う」
羽川翼 ”意中の同級生に恋人が出来たことによるストレス“ <猫>「猫化して無差別に人を襲う」
ちゃんと表を作ればもっと見やすいと思うのですが、”理由“があって<怪異>が「問題」を起こしているということが伝わるでしょうか?
つまり『人は一人で勝手に助かるだけ』とは『(怪異を取り除くことは容易だが、その理由となった心の傷まで癒すことはできない)』という意味なのだと思います。
・おわりに
さて、この言葉は怪異が存在しない現実世界でも通用する言葉です。怪異は存在しなくとも、“理由“と「問題」は存在します。
例えば、重い物を持っている老人を介助したとして、「重い物を運ぶ」という問題は解決出来ても衰えた筋力という理由をどうにかすることはできません。
例えば、頭の悪い生徒に勉強を教えたとして、「勉強が出来ない」という問題は解決出来ても理解力が低いという理由をどうにかすることはできません。
結局“理由“の部分は、当事者が折り合いをつけていかなければいけないということです。
自分の力を過信して、人を助けることが出来ると思い上がらないようにするための『人は一人で勝手に助かるだけ』なのでしょう。案外忍野メメも若い頃は誰でも助けられると過信していて、足元を掬われたことがあるのかもしれませんね。
私が今回のことから得るべき教訓は
問題を解決することは出来ても個人の抱える理由までは解決できない
ということになるんだと思います。
もっとも私は、問題も理由も暴力で解決する影縫余弦さんが一番好きなんですけどね……んぴゅ……