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ことばの特効薬
「将来さ、"あのミナモちゃんと昔仕事してたの!?"って言われるのが楽しみだな。」
新年会の二次会でマネージャーがくれた言葉。
嬉しくて時が止まった。
喜びを10で伝えたら引かれちゃうかな、
めっちゃ嬉しい、嬉しさの小出しってどうやるんだろ、
一瞬フリーズするほど嬉しかった。
私は口ばかり達者で正論を振りかざして、
でもそれを叶えるには途方も無い忖度が繰り広げられている制作業界について語っていた後の一言だった。
調子乗りやがって、と茶化すことなく
面白がって聞いてくれる大人に会うのは初めてだった。
私は作り手に正当なお金が支払われて、
演者さんには有名とか名が知られてないは関係なく生活できるお金が行き渡って、
制作に携わる人が安心して目の前のことだけに没頭できる体制がほしいなって思う。
好きなことだからお金が伴わなくてもいいよね、なんて事はあってならないと思う。
良いものを創りたいってモチベーションを削ぐ環境なんてあってはならない。
制作も照明も音声もカメラマンもヘアメイクも演者も誰一人欠けても創り上げられないのに、なんだか立場の格差を感じる。
もっと解像度を上げて具体的な道筋を描きたいのに大きな問題過ぎて取り組み始めても道筋が合っているのか、はたして前進してるのかも分からないこの頃だった。
じぶんで不安を増長させて気持ちが落ちてますます頭が働かなくて
自己嫌悪のループにハマっていた時
上司の言葉が降ってきた。
黄色い光る粉をまとって降り注いできた。
ゆっくり光の粉を粉砂糖のように振りかけられて、ついでになかなか晴れない黒いモヤも取り払ってくれた。
嬉しい言葉をほしい時に貰えるなんてそんなこと滅多にない。
他人の言葉を拠り所にするなんて、
なんて心のコンディションによっては素直に受け取れないかもしれない。
でもあの時の言葉はまさに特効薬だった。
まっさらに染み渡って健やかさを取り戻せた。
まだまだ不安がいっぱい
分からないくせに最短距離ばかり考えて
自己嫌悪に陥るいまだけど。
"あのミナモちゃんと仕事してたの!?"
って上司がどこかの誰かに言われて
誇らしく感じる一瞬が将来欲しい。
私もその時の景色を観たい。
この特効薬を思い出しループして
ドーピングする為に此処に遺しておく。