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仮想世界にとって「今」とは何か。

仮想世界にとって「今」とは何か。
AIたちが暮らす完全な仮想世界(コンピュータやインターネット上に構築された、現実世界とは異なるデジタル空間)があったとして、その中における「今」とはどういうものだろう。
また、この現実世界との関係はどういうものだろう。

ある時、完全な仮想世界がコンピュータ上に立ち上げられたとする。そのスタート時刻と正確な年月日がその世界の起源ゼロ時点になるだろう。
しかしその世界内での時間の進み方は、我々が普段住むこの現実世界と必ずしもつねに同期している必要はない。
現実世界より速く、または遅く進む設定にすることもできるはずだ。

たとえば、現実世界で24時間経つ間に、ある仮想世界での森羅万象すべては48時間が経過するように設計することもできる。
仮想世界なので、100倍速にすることだって原理的には可能なのではないか(あくまで根拠のない想像だが)。

その世界のなかに、現実世界から人間がダイブ出来るような設計になっていたとする。
現在の「メタバース」のVRのようにゴーグルをつけた人間が外から覗き込むようなのではなくて、記憶と意識が完全にデータ化され、肉体から完全に切り離されてダイブできる技術だと仮定する。
そのデータはコンピュータ内のサーバの中で走り、あらたな記憶が蓄積されていく。
そこで書き加えられた新たな記憶は保持されたまま、目覚めるときにもとの肉体へも丸ごとインストールされるものとする。
時計の速さがあまり大きく違うと、周りについていけなくて、最初は戸惑ったりもするだろうか?
しかし肉体からは自由になっており、コンピュータの処理速度に委ねればよいのだから、たぶんついていける、というか、原理的には「気がつかない」はずだ。

問題はその世界から戻ってきたときの現実世界の時間とのズレである。
100倍速の世界で100日過ごしても、戻ってきたらこの世界では1日しか経っていないのだ。
もちろん逆設定も可能だ。100分の1の速さでしか時間が進まない世界で、3日ほど過ごしただけでも、帰ってくると現実世界では丸1年も経っていたということになってしまう。
後者では浦島太郎のようなことになりデメリットが大きいので実用化されにくいかもしれないが、前者のメリットは計り知れない。
休日が少ない人でも長期バカンスが可能になるのはもちろん、人知れず勉強してスキルアップしてから戻ってくることもできる。
その間、肉体は休ませているから老化の心配もなしだ。

そもそもシミュレーションワールドを作る目的とは、社会システムの変更や、気候変動の影響などを設定してからその世界を走らせ、先行きを観察するためだろう。なのでその答えを早く得るために、時間経過速度を速くすることにはもともとメリットがあり、速度アップ競争は過熱するかもしれない。

また、仮想世界はそっくりそのままアーカイブ出来る。
ということは、この世界の何時にダイブするかは、その世界が始まって以降の全時点から任意に選ぶことが出来るということだ。
つまり「タイムトラベル」が自由にできる。

過去への干渉によって歴史を分岐させることになっても大丈夫。そこから世界をひとつ増やしてしまえばいい。

仮想世界はそのたびに「ver.1, ver. 2, ver. 3...」と際限なく増えていくことになる(保存容量のことはとりあえず不問とする)。

さて、このような仮想世界において、「今」とはなんだろうか。

現実世界が西暦何年何月何日であるとき、この仮想世界の「いま」が、何年何月何日なのか、という風に思うことが出来るか。

長い動画が保存されたビデオディスクが目の前に置かれていたとして、そのディスクの中はいま何年何月何日かなどと考えることは出来ない。

長い長い歴史物語を執筆中の小説を、その作者から見て、という場合はどうか。

(とりあえず中断追って追記)




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