5.八方美人サイコパス
晩御飯の支度をしながら電話をしているのは
決まっていい話の時ではない。
人の愚痴を聞いているか、相談に乗っている時、
または自分が愚痴を言っている。
それくらい感情が溢れだしている時だ。
仲良くしてもらっていると思っていた。
考え方は全然違う人だったけれど、
人当たりもよくて、私にはない爽快感が漂う人だった。
そして何かあれば私を頼ってくれていると思っていた。
男っぽいのか、女っぽいのかわからない彼女は
友達のような人が多かった。
誰にでも好かれて、いろんな人から声がかかり、
鮮やかに人間関係をこなす。
でも私にだけ愚痴を言っている。
そう思っていた。思いたかったのかもしれない。
私はこの子にとって特別である。
いつものように電話が鳴った。
「お疲れ~!」と私。
携帯を耳と肩に挟みながら玉ねぎを切る。
「今日は、ちょっと話したいことがあってさ」
いつもとトーンの違う声が耳の骨を緩やかに振動させてきた。
何かがあったんだなとその声色を聞くだけでも十分に伝わる。
「もう、ちよちゃんのことを許せない」
「あの時の、あの言葉、毒があったよね?」
「傷ついた」
どれくらいの時間、どんだけの言葉を浴びせられたのか忘れた。
身に覚えのないことを攻められている。
あの言葉が、そういう解釈になるんだとがっかりしたけれど、
どう受け取るか、どう見えているかというのは
相手の問題であり自分の問題ではない。
その人の心の問題である。
友達と思っていた気持ちも、全く彼女に興味がなくなったのも
それから仕事で関わることがあったにも関わらず、
個人的感情を持ち出して業務を放棄したことから。
そして散々悪口を聞かされていた人とは仲良くしている姿をみて
もう、この手のタイプの人間とは付き合いたくない。
サイコパス。
2014年秋ごろの話だったと思う。
この現象は繰り返し起こっている。