知らない幸せと言わない優しさ
お昼はいつもみんなどうしてるの?
たまたまニックという台湾人と話しているとき、そんな話になった。
ぼくは最近、ここ1カ月ほどお昼は食べていない。抜いている。
理由は単純で5ECドルのランチも決しておいしいものではないからだ。以前は、5ECドルで買える大きなサンドイッチを買って食べていたけれど、パンが大きすぎてお腹が膨れすぎるし、糖質過多で午後眠くなる問題を解決できなかった。
それに、お昼でお腹ぱんぱんになるから夕食はもういいかという気分になる日も結構あった。なんなら食べたければ食べる、食べなくても問題ないという空腹感だった。
これ、そうすると食事の楽しみというのが朝だけになってしまう。昼は楽しくないし、なんというか習慣で何か食べなければと義務的に食事を胃に放り込んでいる感じだった。
だから、冒頭のように、他のアジア人はどうしてるんだろう。どこで何を食べているんだろう、それはおいしいのかなと疑問に思ったわけだ。
ー うーん、最近は食べない方が多いかな。思ってたものと違ってショックを受けることの方が多いから
あぁ、やはりそうか。この食事は結構つらいよなぁ。もう何度か述べているけれど、1週間くらいは目新しいから楽しめる。けれど、それ以上は決して嫌いではないが身体が無意識のうちに避けるようになってくる。
なぜなら、味が単調でバラエティーがないから。
こういうワンプレートランチが定番というか、これしかない。
米orパスタ、ヤムorバナナorパンノキ、蒸し野菜orサラダ、肉(チキン、ターキー、ポーク、ラム、ビーフ)
あるいはラザニアや魚、豆が入ってくることもある。
以上、これがこの国の食事の全てです!(あ、カラルースープとロティもあるか)
で、味はチキンだろうが、ポークだろうがラムだろうが全く同じ味。
気が狂いそうになるよ、まったく。
バラエティーがまったくないんだもの。ローテーションもなにもないんだよ。
もちろんパンもあるけれど、パンってただのパンだし、君らが想像するサンドウィッチなんてこの国にはない。ぼくが食べていたツナサンドもわけのわからない決して好きにはなれない不思議な味がする、仕方なく食べる類のやつだ。
けれど悲しいかな、この国の人たちは自分たちの食文化はバラエティー豊かで非常においしいと思っているんだ。
少し前にそうやってファンに教えてもらった。
ー だからな、Yuki、絶対に現地の人に食事の文句を言ってはいけないよ、大きなショックを受けてしまうから
そうだな、わざわざ世の中にはミートソース以外のピザやスパゲッティがあること、1つの都市でベトナム、タイ、イタリアン、フレンチ、スパニッシュ、中華、和食などなど多彩な料理が味わえる真のバラエティー豊かな食文化を享受しているところが山ほどあることなんて教える必要はないわな。
自分たちの文化に自信を持っているならそれは幸せなこと。
実際に比べる対象ができてしまうと不幸になってしまうかもしれない。
この国の華人が営む中華屋だって中華料理はひとつもないなんて言えない。
だって、俺アジアの料理好きなんだよって言いながら、その中華ではない何かを食べてるんだもの。
良いとか悪いとかではなくて、小さな世界で生きているなぁと思う。
こんなことを言うとマウント取っているようで上から目線感が半端ないけれど、彼らがそれで幸せならそれで良いじゃないかと思う。すべてを知った上での幸せってけっこう難しいし。
以前、カルデラのあるスフレ山に登ったとき地元の人が「すごい大きなクレーターだったろ」って自分たちのそれに誇りを持っているふうだった。
日本にもああいうのはあるのかい?ってさもないだろうという答えを期待している聞き方をされて、ぼくは答えに窮していたら他のJOCVのAさんが「あるよ、熊本ってところにもっと大きなのが。クレーターの中で人もたくさん住んでる」って見事にぶっこんでくれて、その地元の人は「そうなんだ…それは…」と、あからさまにテンションが下がっていた。
ぼくはその時に、ウソをつくのは良くないけれど、言わなくても良いことや知らなくても良いことはあるし、なにか上手い伝え方というのは必要だなぁと改めて感じた。
だって、知ったところで本人の努力でどうしようもないことなら、不幸にしかならないもんね。誇りをもっているところをあっさり否定されちゃったら、拠り所がなくなってしまうよ。
それは良いことには少なくとも今は思えないなぁ。
写真はこの国でいちばんおいしいベネズエランレストランのハンバーガー。きちんとハンバーガーの味がする数少ないレストラン。