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家計調査の消費支出は、せめて「除く住居等」を見よう

 昨日(8/6)、総務省統計局が発表した「家計調査」において、世帯人員2人以上の世帯の実質消費支出が前年同月に比べて2ヵ月連続で減少となりました。消費支出は1.9%増、物価変動の影響を除いた実質では1.4%減です。
 日経は2ヵ月前には14ヵ月ぶりに実質消費支出が前年同月比増加になったことを報じていましたが、以下の昨日の夕刊の記事が伝えるように「物価高を背景に節約志向から支出を絞る動きが残った」のでしょうか?
 本稿では、毎月の消費支出であわせて公表される「除く住居等」に注目します。


住居、自動車等購入、贈与金、仕送り金を除いた消費支出

 「除く住居等」は、家計調査の消費支出のうち、住居、自動車購入、贈与金、仕送り金を除いたものです。
 住居は「家賃・地代」と「設備修繕・維持」の合計額。後者は総務省統計局の資料によると

住宅,庭などの設備やその修繕に関するもの。ただし,居住面積が増えるようなものは「財産購入」とみなし,設備修繕・維持には含めない

とあります。増築のようなものは含まないようですが、いわゆるリフォーム代などが入りそうです。1回の支出金額が大きい一方で、そうそう頻繁に支出するものではないですね?
 自動車購入は、10大費目分類の「交通・通信」に含まれます。名前から推察できるように「自動車,オートバイなどの輸送機器の購入金額」です。これもそうそう頻繁に支出するものではないですね?
 このほか、贈与金は「一般社会の慣行による自発的現金支出。持参金など世帯への譲渡金も含む。ただし,仕送り金,慰謝料は除く」、仕送り金は「世帯票に記載のない者への生活費,下宿料,家賃,教育費などの全部又は一部を継続的に補助するための現金支出」と説明されています。

「除く住居等」でみると6月は16ヵ月ぶりの実質増加

 実は、「除く住居等」でみると家計調査の6月の消費支出は前年同月に比べて4.6%増、実質では1.3%増でした。実質でみると16ヵ月ぶりの増加です。消費支出全体が実質プラスになった2024年4月では、「除く住居等」は2.9%増、実質では0.0%とギリ増えてなかったのです。
 消費支出全体と除く住居ベースの消費支出の前年同月比増加率を描いたものが下のグラフです。2022年秋や2023年春のように、諸費支出全体と除く住居等の前年同月比がはっきりかい離することがわかります。
 2ヵ月前に下記のnoteで、私は家計調査の消費支出の前年同月比で、日本全体のマクロ消費の動向を語ることの危険性をお伝えしています。ただ、除く住居等で除かれている支出が、前述のようにあまり頻繁に行われていない消費であることを踏まえれば、家計調査の観察はせめて「除く住居等」ベースで行った方が良いのではないでしょうか?

6月の名目消費活動指数(旅行収支調整済み)は2.1%増

 ということで、最後に本日公表された日本銀行「消費活動指数」の結果を確認してみましょう。日本の家計の消費動向を捉えた「名目消費活動指数(旅行収支調整済み)」は前年同月比2.1%増加、2024年1月の0.7%増を底に、振れを伴いながら、緩やかに伸びを高めています。
 GDP成長率の先読み指標として注目度が高い4~6月期の実質消費活動指数(旅行収支調整済み)は前期比0.8%増。1~3月の0.8%減を取り返した形です。
 また、インバウンド・アウトバウンドを調整する前の4~6月の実質消費活動指数(日本人、外国人を問わず、日本国内での消費額)は前期比0.6%増(1~3月は0.3%減)。その内訳として観察可能な実質耐久財指数が4~6月期は7.6%増と増加した(1~3月の11.5%減の反動ともいえますが)ほかは、実質非耐久財指数が0.0%増、実質サービス指数が0.1%減とさえない結果となっています。
 これを見る限り、まだ個人消費は底這い状況と言えそうです。
 ※消費活動指数の詳しい説明は上記リンクのnoteをご覧いただければ幸いです。

#日経COMEMO #NIKKEI


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